コロナ支援終了後に相次ぐ企業倒産/迫られる事業の選別
コロナ禍で政府や自治体が実施した各種の支援策が終了し、その反動として企業倒産が増加している。特に、中小企業や個人事業主は、ゼロゼロ融資(実質無利子・無担保融資)や各種助成金に頼ることでコロナ禍をしのいできたが、返済が本格化する中で資金繰りに行き詰まり、廃業や破産を選択せざるを得ない状況に追い込まれている。
東京商工リサーチや帝国データバンクの調査によると、2023年後半から倒産件数は増加に転じ、特に2024年に入ってからは、前年同月比で二桁増となる月が続いている。業種別では、飲食業や宿泊業、建設業の倒産が顕著だ。飲食・宿泊業はコロナ後の需要回復が見られる一方で、人手不足や原材料費の高騰、電気料金の値上がりといった要因が利益を圧迫。建設業界では、公共工事の発注減や資材高騰により、資金繰りが悪化している。
また、黒字倒産の事例も目立つ。売上が回復しているにもかかわらず、コロナ融資の返済が重くのしかかり、運転資金が確保できずに経営が行き詰まるケースだ。特に、長期にわたり低金利環境が続いた影響で、資金繰りを先送りしてきた企業ほど、その反動は大きい。
金融機関も対応に苦慮している。政府系金融機関や一部の地方銀行では、リスケジュール(返済条件の変更)に応じる動きがあるが、全ての企業を救うのは難しい。事業の将来性を見極めたうえで、成長が見込める企業には支援を継続し、厳しい企業には早期の事業整理を促すという選別が進んでいる。
コロナ支援の反動が本格化する中、企業側も変化に対応する力が試されている。政府の追加支援を期待する声もあるが、事業の持続可能性を見極め、収益構造の転換やM&A(企業の合併・買収)といった戦略的な動きが求められる。支援の終了は、単なる試練ではなく、新たな経営の分岐点とも言えるだろう。
迫られる経営判断——企業が生き残るための選択肢
ならば、支援の終了とともに経営環境が厳しくなる中、企業はどのような対策を講じるべきか。生き残るためには、単なるコスト削減ではなく、収益構造の転換や資金調達手段の見直しが必要不可欠となる。
①コスト構造の見直しと事業の選別
固定費の削減はもちろん、採算が取れない事業の整理・縮小を進めるべきだ。例えば、多店舗展開する飲食業では、不採算店舗の閉鎖や業態転換が急務となる。また、建設業界では、資材価格の高騰に対応するため、仕入れ先の見直しや省資源型の工法導入などが求められる。
②資金繰りの強化と金融機関との対話
ゼロゼロ融資の返済が本格化する中、金融機関との関係強化も重要だ。リスケジュール(返済条件の変更)や新規融資の可能性について、早めに相談し、資金繰りの改善を図る必要がある。加えて、ファクタリング(売掛金の早期資金化)やクラウドファンディングなど、新たな資金調達の選択肢を検討することも有効だ。
③DX(デジタルトランスフォーメーション)への投資
人手不足が深刻化する中、デジタル技術を活用した業務の効率化が競争力を左右する。小売・飲食業では、セルフレジやキャッシュレス決済を導入することで、人件費を抑えながら顧客の利便性を向上させることができる。製造業では、IoTやAIを活用し、生産ラインの効率化や品質管理の強化を進める動きが加速している。
④M&Aや事業承継の活用
事業の継続が難しい企業は、廃業や倒産を選択する前に、M&A(企業の合併・買収)や事業譲渡を検討するべきだ。近年、後継者不足を背景に、事業承継型のM&Aが増加しており、中小企業でも買い手がつく可能性は十分にある。特に、技術やブランド力のある企業は、大手企業や投資ファンドの関心を引きやすい。
⑤政府の追加支援策の活用
政府は、中小企業の倒産増加を抑えるため、新たな資金繰り支援や補助金制度を打ち出す可能性がある。経営者は、最新の政策動向を注視し、自社に活用できる支援策がないか確認することが重要だ。
転換期を乗り越え、持続的成長へ
コロナ禍の支援に頼ってきた企業にとって、現在は厳しい局面だ。しかし、適切な経営判断を下し、環境の変化に適応できる企業は、むしろ成長のチャンスを得ることができる。支援終了後の倒産増加は避けられないが、各企業が生き残るための策を講じ、新たな成長モデルを築けるかが問われている。