黒字でも潰れる?―「黒字倒産」の実態とその背景にある構造リスク
「業績は黒字なのに、なぜ倒産するのか」。近年、財務上は利益を計上していながらも資金繰りに行き詰まり、倒産に至る“黒字倒産”が相次いでいる。帝国データバンクや東京商工リサーチの統計でも、こうした倒産形態は珍しいものではなく、むしろ中小企業を中心に増加傾向にある。
黒字倒産の最大の原因はキャッシュフローの不足にある。帳簿上は利益が出ていても、売掛金の回収遅れや仕入代金の先払いなどにより、手元資金が枯渇するケースが多い。特に、売上の急拡大に伴って運転資金が膨らむ「成長倒産」や、大手取引先の支払い遅延が引き金となる連鎖倒産は、その典型例といえる。
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加えて、金融機関の融資スタンスの変化も影を落とす。コロナ禍の緊急融資で“資金繰りモラトリアム”が一時的に敷かれたが、返済期の本格化と同時に再調達が難しくなった企業は多い。また、金利上昇や保証料負担の増加など、資金コストの重圧も中小企業にとっては無視できない。
さらに、経理や財務の弱体化も見逃せない。黒字倒産を防ぐには、会計上の利益ではなく、キャッシュフロー(現金の流れ)に基づいた経営判断が不可欠だが、特に地方の中小企業ではその管理体制が脆弱なままという例も少なくない。
「利益が出ているから安心」という認識は、もはや通用しない。黒字倒産は、利益よりも現金が企業を生かすという現実を突きつけている。企業には、PL(損益計算書)と同時に、BS(貸借対照表)とCF(キャッシュフロー計算書)を“見て動ける”財務リテラシーが求められている。
[ 2025年5月 2日 ]
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