アイコン 備蓄米の放出で流通現場に混乱 精米・物流に負荷 農政の構造課題も


政府が物価高騰対策として進める備蓄米の放出をめぐり、流通現場で混乱が広がっている。小売業者への引き渡しが5月29日にも始まる予定だが、精米体制の確保や包装資材の調達、物流手配の遅れなど、各段階でボトルネックが生じている。

今回の放出では、購入を申請した小売業者が精米まで担う仕組みとなっているが、多くの小売事業者は自前の精米設備を持たず、コメ卸業者の工場などに依存している。精米現場ではすでに既存業務でフル稼働しているケースも多く、新たな需要に即応できない状況が顕在化している。

加えて、販売用の袋の確保や印刷の準備には時間を要し、6月初旬の店頭販売に間に合わせるのは困難との見方もある。備蓄米の輸送についても、出荷・運送に必要なトラックの手配が課題となっており、政府は関係省庁を通じて業界団体に協力を要請している。

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こうした流通面の混乱の背景には、コメ政策全体が抱える構造的な課題があるとされる。長年の減反政策や市場介入によって、農家の生産と販売の自由度が制限され、価格決定権の乏しいままコスト上昇にさらされる構図が続いてきた。

また、農業経営の不安定さは人材確保の困難にも直結しており、十分な収益が得られない状況では、設備投資や人材育成に充てる余力も乏しい。民間企業であれば当然とされる「戦略的投資」や「人材マーケティング」が、農業分野では未整備のまま置き去りにされている。

今回の備蓄米放出は、一時的な需給調整策として効果を見込める一方、供給体制の脆弱さや制度設計の歪みを露呈する結果となった。現場の混乱は、政策実行段階での不手際というよりも、生産・流通・価格形成における統制と市場原理の不整合という根本的な課題を映し出している。

農政の今後を見据える上では、価格や量を農業経営者自身が判断できる仕組みの再構築が不可欠となる。備蓄米放出による“対症療法”では限界があり、“構造治療”としての制度改革が急がれる。


田んぼ

 

[ 2025年5月29日 ]
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