【農業】備蓄米放出の先にあるべき"攻め"の米政策とは
コメ価格の高騰が続く中、政府は異例の対応に踏み切った。農林水産省が主導する備蓄米の「随意契約」方式による市場放出だ。まずは30万トンを大手小売に供給し、必要があれば無制限に放出するという。参加が見込まれるのは、「イオン」や「ライフ」、「ドン・キホーテ」といった業界を牽引する企業群。これは単なる価格抑制策の域を超え、日本の米政策の転換点になり得る可能性を秘めている。
■ 価格安定策の“その先”に目を向けるべき
確かに、現在のコメ価格は、天候不順や作付面積の縮小といった供給要因に加え、買い占めや投機的な動きも交錯し、消費者にとっては深刻な打撃だ。今回の備蓄米放出は、そうした「異常値」に歯止めをかける役割を果たすだろう。
しかし、価格を「抑える」ことだけに終始しては、国内農業の未来は描けない。問われるべきは、“次の需要”をどう創り出すかである。
■ 米の消費促進は停滞している
日本人1人あたりのコメ消費量は、1960年代の年間約120kgから現在は約50kgにまで落ち込んでいる。多様化した食生活と高齢化に伴う食事量の減少が背景にあるが、対策は場当たり的にとどまっている。
今こそ、「米離れ」ではなく「米との新しい関係づくり」が求められる。たとえば、以下のような取り組みが考えられる。
・加工食品市場での利用促進(米粉パン、米パスタ、米スイーツなど)
・外食・中食産業との連携による新商品開発
・「健康食材」としての再ブランディング(低GI、グルテンフリーなどの特徴を活かす)
こうした仕掛けを伴わなければ、今回のように備蓄米を放出しても、根本的な需要の下支えにはならない。
■ 世界市場に目を向ける時が来た
もう一つの可能性は、「輸出」である。日本産米の輸出量は年々増加傾向にあるが、2023年時点で約3万トン程度。備蓄米の放出量に比べれば微々たる数字だ。
しかし、アジア圏の富裕層を中心に「高品質なジャポニカ米」へのニーズは確実に存在する。農水省が品質を確保した備蓄米を、海外市場への供給源と位置づけ直せば、「値崩れ回避」ではなく「ブランド確立」の起点にもなり得る。
さらに、農家にとっても「国内価格が安くなった分は輸出で補う」という選択肢が広がれば、持続可能な経営の糸口になる。
■ 「安く売る」から「価値を育てる」へ
価格を抑える施策は、即効性こそあるが、持続性には欠ける。むしろ、今求められるのは、「安く売る」ことではなく、“価値ある米を、価値ある形で届ける”ための仕組み作りである。
備蓄米放出をきっかけに、政府と流通業界、生産者が一体となって、新たな需要創出と海外展開に本腰を入れること。それが、米どころ日本の農業を「守る」だけでなく、「伸ばす」ための真の処方箋となる。

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