テンセント、ゲーム覇者の影と限界─買収戦略の裏にある"不得意分野"
中国IT大手テンセントが韓国のゲーム企業ネクソンの買収を検討しているとの報道が、アジアのゲーム業界を揺らしている。買収の真偽はさておき、注目すべきはテンセントの世界戦略と、その裏にある"不得意分野"の存在だ。
ライブサービス型に強く、買い切り型に弱い構造的限界
テンセントは、中国を代表するネットサービス企業であり、オンラインゲーム分野における支配力は群を抜く。『王者栄耀』や『アラド戦記(DNF)』などの長期運営型タイトルを武器に、月間アクティブユーザー数と収益性で他社を圧倒してきた。
その戦略は明快だ。収益性の高い「運営型モデル」を世界に展開するため、米ライアットゲームズ、フィンランドのスーパーセル、ノルウェーのファンコムなど有力スタジオの買収を重ね、技術とIPのポートフォリオを強化している。
しかし、その華々しい戦略の裏には明確な弱点がある。それが、CS(家庭用ゲーム)やSteamに代表される「買い切り型タイトル」への適応力の低さだ。
“文化として売る”コンソール型ゲームとの非対称性
テンセントは、ゲームを「サービス」として提供することには長けている。一方で、1本のゲームソフトを完成品としてリリースし、ユーザーとの強い感情的結びつきを生む――この「作品性」や「文化性」を重視するコンシューマー市場では存在感が薄い。
『エルデンリング』のフロム・ソフトウェアや、『バイオハザード』のカプコンのように、買い切り型で世界中のファンを獲得しているスタジオは、テンセントとは異なる“ゲーム観”を持つ。
この非対称性が、テンセントの世界戦略における“見えない壁”となっている。つまり、テンセントは「長く課金させる力」は持っていても、「一度で心を掴む力」はまだ育っていない。
ネクソン買収の背景にある“補完戦略”
こうした構造的な課題を補う手段として、テンセントは自社と親和性の高いIPを持つ企業の買収を模索している。ネクソンはその典型だ。『メイプルストーリー』『アラド戦記』など、長期運営型に適したIPを持ち、すでにテンセントと強いビジネス関係がある。
テンセントにとって、ネクソンは「文化的チャレンジをせずとも、確実に成果が見込める投資先」なのだ。
だが、裏を返せばそれは、テンセントが依然としてコンシューマー型タイトルへの踏み込みをためらっている証左とも言える。世界のゲーム市場が「ライブサービス型」と「買い切り型」の二極化を深める中、テンセントが後者の領域にどう踏み出すかは、今後の最大の注目点となるだろう。
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