アイコン 半導体不足 全領域に拡大 IT機器製造業界へ浸透 価格も暴騰


韓国の防犯カメラ専門企業のW社は、マイクロ・コントローラー・ユニット(MCU)を確保できずパニック状況だという。半導体の品薄により流通市場で昨年1個当たり8ドルだったMCUが最近では50ドルと6倍以上に上昇したのに必要な量を確保できないという。
MCUはIT機器の頭脳の役割をするチップで、中小IT企業は海外半導体メーカーの代理店を通じて購入する。
W社関係者は「在庫が底をつき、価格を問わず注文を入れ続けているが確保できない」と話しているという。

自動車から始まったチップ不足がスマホを経てテレビ、生活家電、パソコン、小型電子機器などIT産業全般に広がっている。製品によっては価格が最大30倍以上上昇したが代金を上乗せしても確保は容易でないという。

購買力で押される中小IT企業が直撃弾を受けている。これら企業は購入量が多くなく、半導体メーカー本社ではなく中間代理店と取引するが、最近これらの代理店が価格上昇を狙って売り惜しみに出ているという。
ある医療機器企業関係者は「最近はMCU流通業者が優位な立場を利用している。STマイクロなどドイツ企業の本社に問い合わせしもリードタイム(注文から供給までの期間)が基本40週間、一部品目は2年まで延びたという」と話しているという。

大企業も同じ。サムスン電子やLGエレクトロニクスでさえディスプレー駆動チップ(DDI)、パワー半導体(PMIC)などを円滑に調達できず、テレビと家電製品を計画より10~20%以上少なく生産している。
米ヒューレット・パッカードも半導体不足により教育用コンピュータ需要に追いつけず、中国の生活家電企業ロバムはチップ不足のためオーブンの新製品発売を4ヶ月遅らせるなど世界のIT業界が苦労している。

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最近では米国の制裁を受けている中国IT企業が買い占めに出て仮需要まで加わり1個当たり1ドルで取引されていた特定半導体価格が32ドルに急騰するなど需給体系が完全に崩れている。
ある中堅半導体企業高位関係者は「チップの原材料であるウエハーまで供給不足状況に進んでいる。半導体大乱がいつ解消されるのか推測するのも難しい」と話しているという。

<10倍払って買い占める中国…「在庫ない」緊急出張>
サムスン電子テレビ事業を総括するハン・ジョンヒ映像ディスプレー事業部長(社長)は先週台湾行きの飛行機に乗り込んだ。テレビの核心部品であるディスプレー駆動チップ(DDI)の供給不足状況が深刻化し急遽決めた出張だった。
ハン社長はDDI納品企業メディアテックを訪問し「安定的供給」を求めたという。先月中旬にはサムスン電子のスマートフォン事業の責任を負うノ・テムン無線事業部長(社長)が米国出張に向かった。目的地はスマートフォン用半導体世界1位のクアルコム。ノ社長はクアルコムにアプリケーションプロセッサ(AP)の緊急納品を要請したという。

<価格不問…物量確保が最優先>
18日の産業界によると、半導体品薄現象が、自動車と携帯電話を超え全産業現場に影響を及ぼしている。世界の半導体市場で強力な購買力を持っているサムスン電子の完成品(セット)部門最高位経営陣が直接緊急出張に出るほど半導体の品薄現象は深刻。
大企業購買チーム関係者は「価格に関係なく半導体を確保する会社が勝者という話が出るほどだ」と述べている。

半導体は「呼び値が買い値」というのがIT企業関係者らの共通した話。防犯カメラや医療機器に使われるマイクロ・コントローラー(MCU)価格は昨年の1個当たり8ドルから最近では50ドル水準に急騰している。低価格汎用製品だが価格が6倍以上高騰するほど売り手市場に変わった。原価上昇を甘受して購入しようとしても「なくて買えない状況」というのがIT業界関係者らの共通した話だという。

半導体品薄現状の震源地に挙げられる自動車産業の状況は、悪化の一途。ボッシュ、コンチネンタル、現代モービスなど世界的自動車部品メーカーの購買チームはパニック状態。これら企業は中国や香港などのブラックマーケット(在庫取引市場)まであさって5~6倍の価格を払って半導体を買い集めているという。
業界関係者は「MCUメーカー本社には自動車部品メーカーの購買チームが陣を作っている」と伝えた。

<在庫確保競争…価格急騰>
昨年末から本格化した半導体の供給不足が最近になり深刻化したのは在庫確保競争に火が付いたためだ。中国のIT企業は世界の流通市場で通常価格の最大20倍を払ってチップを買いあさっているという。米国の中国企業に対する半導体輸出規制も影響を及ぼした。

台湾のファウンドリー(半導体受託生産)企業TSMCのマーク・リウ代表は、「一部企業が在庫確保のため注文を2倍ほど増やしたことが最近の品薄現象の主要原因」と説明した。韓国のあるカメラ企業関係者は「MCUが市場に出てくるとすぐに中国企業が買い占めるという話がある。在庫がなくなれば生産そのものが不可能な状況がくるだろう」と話した。
<売り惜しみ>
半導体流通企業の売り惜しみも価格上昇をあおっているという。IT大企業は半導体メーカーと直接取引するが、購入量が少ない中堅・中小企業は代理店と取引する。
代理店がさらなる半導体価格上昇を見込んで意図的に市場に商品を出さずにいるというのが業界関係者らが説明している。

韓国のある中堅暖房機器メーカー関係者は「半導体代理店などが本社倉庫に在庫を貯め込んでいるという噂が広がった」と説明した。

米ニューヨーク・タイムズも4月15日に「20ドルのモデム価格が10倍の上昇したことがあった。流通企業の半導体買い占めのため価格が急騰したという指摘が出ている」と報道した。

<生産支障・販売価格引き上げ「連鎖波紋」>
防犯カメラやウェブカメラなど市場需要が相対的に少ない半導体は、最近生産が中断されている。車載用半導体の品薄が各国の最優先解決課題に浮上し、NXPやSTマイクロなどが家電用MCUの代わりに自動車用半導体生産に総力を挙げていることによるもの。

半導体を確保できず生産を中断した海外中小企業も出ている。ウェブカメラを生産する米国のスタートアップ、ワイズラボは半導体在庫がなく商品を販売できずにいる。
世界最大の家電メーカー、ワールプール中国法人のジェイソン・アイ社長は最近外信取材で「半導体チップが不足しており欧州と米国に送る量に支障が出ている。計画量の25%程度が不足する」と説明している。

<製品価格上昇>
製品価格上昇の懸念も大きくなっている。
MCUだけでなくDDIなどテレビなどに使われる半導体チップ価格も最近20~30%急騰し製品原価上昇の要因になっている。
外信によると日本のソニーと中国のシャオミは半導体不足を理由に最近テレビなど一部製品価格を引き上げたという。
韓国の家電業界の状況も似ている。あるIT大企業関係者は「半導体など原材料価格が上がれば顧客割引率や販売価格に影響を与えるほかない」と説明しているという。
以上、韓国経済新聞参照

昨年10月、車載用半導体を製造していた旭化成の半導体工場が全焼し、半導体の買い付け騒ぎが一気に始まった。どこもかしこも在庫しだし、需要に応じて必要な量だけしか作らなかった半導体メーカーは、いくら生産拡大しても生産拡大には限度があり、供給不足に陥った。
そこには、バイデン米大統領になっても、半導体戦争は終わるどころか激しさを増しており、中国勢が米制裁を恐れての在庫拡大も起因している。

2月には、テキサス州を襲った大寒波により同州は電力不足に陥り、半導体工場の操業停止を命じ、TIやサムスン電子のシステム半導体工場がストップして供給不足に輪をかけた。

さらに3月19日、ルネサスの自動車向けパワー半導体工場が火災、自動車工場の多くが操業停止、生産調整を行う事態に陥っている。

システム半導体の50%以上を生産する台湾のTSMCは、ルネサスや各国から生産増加要請を受けるも限度があり、各種半導体不足は自動車向けからIT機器製造会社を直撃している。
そのTSMCも4月に工場一棟の電源室で火災が発生、影響が心配されたが、幸い早期に解決している。

台湾勢は、半導体製造の必須アイテムの水不足に陥っており、今年、空梅雨にでもなれば、いよいよ半導体生産に支障をきたす水準にいたる。

ルネサスは火災のラインを4月17日までに修復させ、操業を開始しているが、火災前の水準に戻るためには数ヶ月を要するとされている。
どこの自動車メーカーもいまやトヨタ生産方式で必要なものを必要なだけ量だけ仕入れる方式、トヨタ自身が東日本大震災でサプライチェーンが寸断され、代替がきかないものはリスク回避のため在庫を抱える主義に大きく転換している。それでも日立子会社の地震被災での部材の供給一時ストップ、次にはルネサスの火災により大きく影響を受けている。

 

[ 2021年4月19日 ]

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