アイコン テスラ 中国から洗礼受ける


テスラは中国政府を説き伏せて2018年、外資自動車企業で唯一独自企業により上海進出を果たした。しかし、米中貿易戦争は、米政権がトランプからバイデンに変わったところで激しさを増すばかり・・・。

テスラはメディアによる一斉攻撃を浴び、規制当局から「お叱り」を受けている。
これは外国の大手ブランドにとって中国がいかにリスクの多い地にな得るか、そして国家の厳しい統制を受けたメディアが批判姿勢に転じた場合、たった1つの苦情案件処理の間違いがいかに大変な危機に転じ得るかを物語っている。

またテスラと言えば業界の慣習を顧みないことで知られ、その象徴的存在が創業者のイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)。
めったに誤りを認めない企業文化は米国でこそ、それなりのファンを獲得しているものの、中国では逆効果でしかない。

マスクCEOの名声ゆえに、中国政府は外国自動車メーカーとして初めてテスラに地元企業と合弁なしの事業進出を認めたのは確かだが、今やテスラはずっと長い歴史を持つライバルメーカーたちが何年も前に得た教訓を現在学びつつある。

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テスラが直面するトラブルは、これまでの米国における問題処理の手法に関係しているとはいえ、中国事業ではマスク氏や経営幹部らが認識してきた問題の大きさも浮き彫りにしている。

ネット販売ゆえに自社の整備網も限られ、ハードウエアに不具合が生じた場合に車両を修理する能力が、中国では昨年いきなり14万台も売れ、猛スピードで伸びる販売台数に圧倒されてしまった。
カークホーン最高財務責任者(CFO)は今年1月、投資家に対して「サービスの拡充がテスラの将来戦略にとって本当に大事になっている」と認めた。

今回、テスラはどんな事態に見舞われたのか。
発端は、上海国際モーターショーが始まった19日、ブレーキが効かないという苦情に対するテスラ側の対応に怒った1人の顧客女性がテスラの展示車両の屋根に上り、不満を叫んだことにはじまる。この動画はソーシャルメディアで拡散された。
騒動がさらに拡大したのは、テスラの対外関係担当バイスプレジデントのグレース・タオ氏(元国営中央テレビの総司会者出身)が、この女性が「やらせ」ではないかと疑問を呈した後だった。
タオ氏は地元メディアのインタビューで「事実は分からないが多分、彼女はかなりのプロで、(誰かが)背後にいるはずだと思う。われわれは妥協するつもりはない。これは新車開発のプロセスにすぎない」と発言していた。
その直後にテスラはあわてて火消しに走り、「報道の撤回を求めてきた」と取材したメディアが20日、メッセージアプリの微信(ウィーチャット)で明かした。

<テスラのいつもの強気が中国では次第に弱気に変化>
テスラのコメントは次第に「前非を悔いる」姿勢へと転じていく。
当初の「妥協せず」から20日は「謝罪と自主的な調査」の表明に変わり、そして21日夜には「規制当局と協力して調査」していると説明した。

国営新華社通信は、テスラの謝罪は「不誠実」だと述べた上で、「問題のある上級幹部」の更迭を要求した。
中国共産党の機関紙人民日報系の「環球時報」もタオ氏の発言を取り上げてテスラの「大失態」と呼び、中国に進出している外国企業にとって1つの教訓になると解説した。

調査会社シノ・オート・インサイツのアナリスト、テュー・リー氏は「中国ではテスラ車の品質とサービスに関する不平不満がソーシャルメディア上にずっと書き込まれている。そのほとんどを同社の地元チームは20日まで無視してきたようだ」と述べた。

中国で販売されるテスラ車は、同社の上海工場で生産されており人気が高い。
世界一の市場の大きさを持つ中国EV市場において、テスラの販売シェアは急速に増加している。
以上、中国紙、ロイター、韓国紙など参照。

テスラが2019年12月から生産開始した中国初の上海工場(生産能力50万台/順次引上げ)、2020年はいきなり「モデル3」の販売台数が139,925台、占有率11.0%を獲得して中国EV市場トップに躍り出た。

<中国テスラの問題経過>
<前哨>

2021年2月8日、中国中央テレビは、国家市場監督管理総局・国家インターネット情報弁公室・工業情報化部・交通運輸部・応急管理部消防救援局など5つの政府部署が、テスラ関係者を呼び、「バッテリーの発火」や「無線ソフトウェアアップデートOTA(Over-the-air)問題」などに関連し、中国法規の遵守と内部管理の強化、品質と安全責任の履行、消費者の権益保護などの要求事項を伝えたと報じた。
<中哨>
3月19日、中国国務院は、軍関係者に「テスラ車は、軍機密情報が漏れるおそれがあり乗るな」と通知した。すべてのテスラ車が撮影する経路や建物の画像が機密情報に触れ、そうした画像データが米国に保管されているからだとした。

3月20日、これに対しテスラのイーロン・マスクCEOは、「テスラが中国をはじめ、どこであろうとスパイ活動に使われるなら会社を閉鎖する」と発言した。

<今回>
4月19日、上海モーターショーで、一人の女性が「ブレーキ故障(殺車失霊)」という字とテスラのロゴ入りの白色Tシャツ姿で、テスラ車のルーフの上って抗議、「ブレーキ動作エラーで一家が死ぬところだった」と怒りをぶちまけた。
これについてテスラの対応は鈍く・まずく(テスラ側の担当者がプロのヤラセだろうと発言)、当局が同日、「テスラが不具合を放置した結果だ」と警告した。

20日になると、当局の怒りに驚いたのかテスラは、車の持主の問題を解決できなかったことに深い遺憾の意を表わし、「該当の車の持主のご不満を最大限補償するため専門チームを設け、誠実に解決方法を見いだして責任を取る」と明らかにした。

21日、中国SNSメディア「未来汽車Daily」は「テスラの謝罪はワニの涙(嘘泣き)なのか」と題する記事を掲載、上海モーターショー関係者の言葉を引用して「現在までテスラは補償措置を取らなかったし承諾したものもない。さらに連絡先も残さなかった」とし、「言葉と行動が違ってはいけない」と掲載した。

21日夜、中国国家市場監督管理総局は、河南省上海市市場監督管理部門が「責任を取り消費者の権益を保障する」と明らかにした。
声明では「企業は質量の安全を徹底し、履行する責任主体であるべきだ。消費者のために優れた品質と安全な製品とサービスを提供しなければならない」と強調した。

21日深夜、テスラは改めて謝罪文を微博に掲載した。
「鄭州市の市場監督管理局に事故前30分間の車両データを第三者鑑定機構と政府が指定した技術監督機関、消費者本人に提供した」とし、「テスラは検査にかかるすべての費用を支払い、どのような検査結果が出ても受け入れる」と明らかにした。

別途21日には、広州警察が4月17日午後10時ごろ増城区で車両衝突事故が発生し、テスラ車両が炎上して1人が亡くなる事故が発生したと発表した。

問題は、
1、米中貿易戦争にあり、ファーウェイなどの制裁やTikTok問題を含め、米制裁に対する反撃にテスラが利用されているようだ。

2、中国当局はテスラを誘致したものの、あまりの売れ行きに驚き、国内EV産業の保護の面から、テスラのスキを突き、当局がテスラの問題を露出させることで消費者離れを誘導しているとも。

3、テスラが車両事故で車両自体の原因とは認めず、それを事故関係者に説明もろくにせず、責任がないとしてユーザーを放置していることにある。

4、テスラは急激な販売台数にサービス網が希薄であり、問題に対する対処能力が限られている。

5、テスラには「郷に入れば郷に従え」という回路がなく、問題をややこしくしている。特に中国では、中央政府の機関がすべての権限を有しており、より多くの高官たちとお友達付き合いをしなければ、いろいろな局面で叱責され続ける。



 

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[ 2021年4月26日 ]

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