天然ガス=都市ガス 1年で2.39倍の7.000ドルに達する どこまで上昇するのか
ドイツはロシアから消費量の約4割をパイプラインで輸入している。それを今年中には0にするというロードマップを発表している。
ドイツは露分をカタールや米国から輸入するという。イタリアも同じ、欧州はLNGを多かれ少なかれロシアからのパイプラインに依存しており、すでに天然ガスの値上がりにパニック状態に陥っている国もある。
フランスでは大統領選挙が行われており、不人気だったマクロン大統領がロシア・ウクライナ外交で輝きを取り戻し人気回復、一方、対立候補は極右のルペン党首、急進左派の一部もルペン党首に投票すると見られている。それもこれもが燃料価格などが高騰し続けた結果、労働者層や貧困層の支持を得てルペン候補が決選投票に上り詰めたことにある。スリランカやパキスタン、ペルーなど燃料価格の高騰が一国の政治を動かすところまできている。
日本製鉄には追い風
ドイツでは天然ガスの備蓄タンクを建設するという。ほかの欧州国も追随している。それにより、ステンレス鋼管の需要が急拡大、当然、価格も押し上げている。
ただ、LNGや原油の最大の生産国の米国の生産者が、生産量を増加させるかどうかは不明なところも多い。
バイデン大統領が就任初日に、トランプ前大統領が認可したカナダからメキシコ湾岸までのパイプラインの敷設を取り消し、シェールオイル・ガス産業会社と犬猿の仲になってしまっているところに米国は大きな問題を抱えている。
カタールにしても、ガス田はホルムズ海峡北側の海底、それもイランのガス田と共用関係にあり、さらに産出量を増加させればイランとの問題も発生してくる。
イランは米制裁により、原油・ガス輸出が限られているが、バイデン政権になり、早期に核合意に動くと見られたが遅々として進んでいない。米議会のイスラエル派(米民主党のスポンサーもユダヤ系財閥)が圧力をかけているものと見られる。
ロシアとイラン・中国との関係は濃い。カタールはそうした関係でイランに対して強く出られず、サウジとUAEから国交を断絶させられていた。人口288万人のカタールにしてもLNG価格が暴騰すれば暴騰するほど巨額蓄財ができ無理することはしない。
日本製鉄の前身は新日鉄住金、そのもとは新日本製鉄と住友金属工業、住金はステンレスシームレスパイプのパイオニアとして世界に知られている存在。鉄鋼価格の世界相場は新コロナからの経済回復による需要増期待で大きく値上がり、しかも露制裁で露産鉄鋼や石炭の輸入を禁止した欧州国も多く、それによりさらに価格は高騰が予想されている。
鉄鉱石の価格が上がり、鉄鉱石を溶融させるコークス=石炭も値上がっている。
今回の資源エネルギー高は、露制裁も加わり、どこまで値上がるのか、検討がつかない状態に至っている。一方で、中国ではマンション価格高騰の見直し政策により不動産需要が急減、新コロナの感染拡大・ロックダウンもあり、旺盛な米需要に支えられてはいるものの景気は悪化している。
今秋、習近平国家主席が禁断の3期目に突入すれば、手綱は緩むものと見られるが、それまでは「共同富裕」政策が続き、景気回復は遅れるものと見られる。
中国は豪州と喧嘩して石炭輸入を禁止したが、電力の6割をまかなう石炭発電、中国が豪州以外から石炭を購入して石炭価格の高騰を演出、しかし、中国の電力会社は電力販売価格を政府により設定されており高価な石炭購入をあきらめ、電力パニックに陥ったのは昨年9月の話である。
世界最大の石炭生産国でもある中国、緊急に大増産させ、今日に至っているが、世界の発電所はCO2問題から、石炭発電から石油火力にさらにLNG火力に切り替えてきたものの、石油・LNGの高騰に、再度石炭火力に切り替え、石炭は需要旺盛が続いている。石炭火力に切り替えたのは米国の発電所も含まれる。そうした中での露産石炭の輸入禁止問題、石炭価格も暴騰している。
天然ガス備蓄基地構築
米国でLNGターミナルの建設が増えている。LNGターミナルのパイプラインは、液化天然ガス運搬船と陸上貯蔵タンクを結ぶ。昨年末までの世界の新規LNGプロジェクト24件のうち5件が米国で進められており、露制裁で急浮上した国家備蓄のLNGターミナルは含まれていない。そうしたことから、今後長期にわたり備蓄のプラント工事におけるステンレス鋼管(極低温の液化天然ガスパイプライン用)の需要は拡大するものと見られる。
日本製鉄は22/3月期過去最大の利益を出す予想となっているが、来年以降、中国も経済回復させ、天然ガス、原油や石油製品の備蓄基地建設は世界各国で増加するものと思われ、日本製鉄には追い風の台風が吹いている。ただ、また大分製鉄所では問題を起こしている。情けない。
日本の場合、家計負担の急増必至
日本で天然ガスは主に都市ガスと発電用に用いられている。
天然ガスの先物相場は昨年4月より現在は2.39倍も高騰している。
一方、日本の輸入価格は、円安により高くなるが、昨年4月より今年4月13日は15.22%円安になっており、総じて日本の天然ガス購入価格は計算上昨年4月より2.75倍高くなっている。
電気代にしても、石炭も石油もLNGも高くなっており、大幅にコスト増となっており、今後とも電気料金は天井知らずで上昇し続けることになる。
カタールやロシアからの天然ガス調達の長期購入契約内容は分からないが、現在の都市ガス代金は、このままでは、今後、現行価格の2.0~2.5倍になってもおかしくない水準となっている。
イタリアの普通家庭では、電気代や天然ガス代がすでに急騰して悲鳴を上げている。
世界は、喜劇王から悲劇王になり吹きまくるゼレン・・・。
スクロール→
天然ガス・LNG先物相場の推移 |
||
|
USD/MMBtu |
為替 |
17/12月 |
2.776 |
112.914 |
18/6月 |
2.941 |
110.121 |
18/12月 |
3.911 |
112.148 |
19/6月 |
2.325 |
108.056 |
19/12月 |
2.292 |
109.099 |
20/6月 |
1.716 |
107.584 |
20/12月 |
2.433 |
103.390 |
21/4月 |
2.924 |
109.000 |
21/6月 |
3.663 |
110.952 |
21/12月 |
3.730 |
114.944 |
22/1月 |
4.874 |
114.880 |
22/2月 |
4.402 |
115.124 |
22/3月 |
5.642 |
122.540 |
22/4/13日 |
7.000 |
125.592 |
・為替は対ドル円 |
スクロール→
ロシア産の天然ガス購入国リスト |
|
2020年 |
億㎥ |
ドイツ |
382 |
イタリア |
293 |
フランス |
182 |
トルコ |
133 |
オランダ |
128 |
オーストリア |
119 |
英国 |
84 |
ハンガリー |
65 |
ポーランド |
97 |
欧州上記以外のOECD加盟国 |
240 |
ベラルーシ |
188 |
欧州上記以外のOECD非加盟国 |
116 |
カザフスタン |
111 |
中国 |
108 |
日本 |
85 |
その他アジア |
64 |
合計 |
2,395 |
・ロイター参照 |
スクロール→
天然ガス生産国 |
|||
Bcm |
2020年 |
2019年 |
前年比 |
960 |
959 |
0.0% |
|
ロシア |
705 |
751 |
-6.1% |
イラン |
195 |
232 |
-15.9% |
中国 |
172 |
178 |
-3.4% |
カナダ |
167 |
176 |
-5.1% |
カタール |
154 |
168 |
-8.3% |
オーストラリア |
116 |
142 |
-18.3% |
ノルウェー |
97 |
119 |
-18.5% |
サウジ |
84 |
97 |
-13.4% |
アルジェリア |
66 |
90 |
-26.7% |
UAE |
65 |
|
|
マレーシア |
65 |
71 |
-8.5% |
エジプト |
ランク外 |
69 |
|
・Enerdata版 |
スクロール→
ロシア産原油購入企業と停止企業 |
||
購入継続企業もしくは不明企業 |
||
企業名 |
国 |
現状ほか |
ネフトヒムブルガス |
ブルガリア |
精製継続、露ルクオイル所有会社 |
MiRo |
ドイツ |
精製継続、露ロスネフチが24%所有・独最大 |
PCKシュヴェット |
ドイツ |
パイプラインで精製継続、露ロスネフチが54%所有 |
プルタミナ |
インドネシア |
新設の国営精製所、ロシア原油購入検討 |
ロイナ |
ドイツ |
パイプラインで継続精製、トタルが過半数の株所有 |
ギリシャ石油 |
ギリシャ |
露産15%、サウジから追加購入 |
ISAB |
イタリア |
中止、スイス企業所有の伊最大の製油所 |
MOL |
ハンガリー |
パイプラインで精製継続、ハンガリーは制裁反対 |
クロアチア |
||
スロバキア |
||
ゼ-ラント |
オランダ |
ノーコメント、露ルクオイル45%所有会社 |
ロッテルダム製油 |
オランダ |
ノーコメント、エクソンモービル系 |
ヒンドゥスタン石油 |
インド |
購入継続 |
Indian Oil |
インド |
購入継続 |
購入停止企業 |
||
BP |
英国 |
ロスネフチへの出資放棄 |
Eneos |
日本 |
新規停止 |
ENI |
イタリア |
政府出資企業 |
バイエルノイル |
ドイツ |
EniとRosneftが出資/露産使用なし |
スタトイル |
ノルウェー |
国営企業、取引なし |
ギャルプ |
ボルトガル |
購入停止 |
ネステ |
フィンランド |
新規購入停止 |
PKNオーレン |
ポーランド |
長期契約分購入。新規停止 |
リトアニア |
||
チェコ |
||
Preem |
スウェーデン |
サウジ富豪所有、停止、スウェーデン最大 |
シェル |
英国 |
世界最大のトレーダー、段階的停止 |
トタル-E |
フランス |
今年末までに購入停止 |
ヴァロエナジー |
スイス |
独バイエルノイ過半所有 |
米国 |
|
露産原油、輸入禁止措置 |
スクロール→
米国の原油掘削リグ数の稼動推移/ベーカーヒューズ社 |
|||
末基準 |
稼動数 |
原油価格 |
|
2019/12月 |
677 |
59.80ドル |
|
2020/4月 |
378 |
16.71ドル |
新コロナショック |
2020/8月 |
172 |
42.42ドル |
新コロナ |
2020/12月 |
267 |
47.09ドル |
|
2021/6月 |
372 |
71.40ドル |
新コロナ経済回復 |
2021/12月 |
467 |
71.53ドル |
|
2022/1月 |
495 |
82.86ドル |
|
2/28日 |
522 |
92.05ドル |
ウクライナ問題 |
3/8日 |
519 |
124.66ドル/高値143.03ドル |
|
3/31日 |
531 |
100.28ドル |
IEA国家備蓄放出 |
4/11日 |
546 |
93.35ドル |
|
4/13日 |
546 |
101.00ドル |
|
・現在の掘削リグは効率の良いリグを稼動させており、原価は30ドル前後、概しても40ドル前後 |
↓米原油生産量・BBL/D/1K(US-EIA作成分)