アイコン 2027年展望 EV用バッテリー生産基地 日本になし


自動車輸出世界一の日本にあって、自動車用鉛電池はあっても、EV用リチウムイオン二次電池の生産基地はない。
世界の政治と自動車業界の趨勢を見ようともしない日本は、長い間HVに固執、取り付かれ、政治も見向きもせず、方向性を見失い、その基盤となる産業を放棄さえしてきた。
失われた20年・30年は歴代の政治家トップや経団連加盟の会長・社長らの脳味噌ではなかったのだろうか。

日産もEVの時代が花開いた時、これまで蓄えた力を発揮することなく、今だルノーに翻弄され、戯れたまま今日に至っている。

先見の明はあったゴーンでさえ末期は、ルノー会長に君臨し、日産の配当に依存し切り、自らの地位安泰のため、EV電池メーカーを中国企業にたたき売り、利益を出させる始末(すでに中国ではEV革命が始まっていた)。(ゴーン逮捕は2018年10月/)

★日産は2018年にEV用バッテリーを生産していたAESC(オートモーティブエナジーサプライ/NECとの合弁会社))を中国風力大手のエンビジョンに叩き売り、ゴーン後、日産は英国工場近くにエンビジョンAESC社(日産持株20%)の工場誘致、すでにエンビジョンAESCは、中国ばかりか、英国・スペイン、フランスに工場を持ち、米国では3ヶ所目のEV用バッテリー工場の建設に当たっている(一部はBMWとの合弁工場)、 ハンガリー工場も建設計画を進めている(日本には現在小さな茨城工場を有している)。

 

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日産リーフ時代の開発力および安全性の高い技術力がそのまま生かされ、欧州大手メーカーの採用が続いている。
AESCは中国企業のエンビジョン傘下となったが、日本では座間にそのまま本社を置いており、米国進出にも制約が少なかったと見られる。
エンビジョンAESCは、茨城県にギガファクトリー(20~30GWh)を新たに建設すると発表している。

★味噌が糞に見えるのは、
開花した花を見ようともせず、竦んでしまった日本の現在であろうか。
エンビジョンAESC社のバッテリーを搭載した日産「軽サクラ」はガソリンスタンドがなくなった過疎地でバカ売れているという。
ホンダもエンビジョンAESCと組み、軽EVを販売する計画を発表している。

★ホンダは鉛に封印されたレントゲン室のような企業であるGSユアサと共同して日本販売車両向けのEV用バッテリー工場を建設する前の段階の共同開発研究をスタートさせると発表している(5周遅れの感)。

ホンダは米国では韓国のLGエナジーと組み、総投資額5000億円あまりの工場建設に入っている(投資額は折半)。

★パナ社は、テスラと当初から組んでいるが、テスラのイーロン・マスクは元々サンヨー電機(充電池のニッケル水素電池とリチウムイオン電池を有していた)と組みEV用電池開発にあたっていた経緯があり、サンヨーを引き継いだパナ社は、今ではテスラと合弁でネバダ州に巨大工場(30GWh)を有している。

パナ社は、現在EV用では最高出力の4680電池の生産工場を和歌山に工場建設するという。また、テスラ向けにもカンザス州で50GWhの巨大工場建設を昨年10月発表している。

時代の趨勢について行けず、自ら社長の座を降りた豊田社長のトヨタは、7300億円を投じて日米にバッテリー工場を建設すると発表している(パナ社との合弁会社プライムプラネットエナジー&ソリューションズ社が担当するのだろう)。

トヨタは2030年のEV世界販売目標をこれまでの200万台から300万台に引き上げ、必要容量を280万GWhに設定している。

<EV普及の4課題のうち3問題はクリア>
EV時代はインフラ整備が整わず、充電時間もかかり、普及には時間がかかるとしてEV開発に躊躇したまま固まった豊田社長(現会長)であったが・・・。
1、欧米各国は政府主導で継続して充電スタンドを普及させてきている。
かけ声だけで持続性のない1年会計の日本の政治とは異なる。

2、走行距離も4680電池(リチウムイオン二次電池)の改良型の開発ですでに中国CATLは1000キロを達成している(テスラ+パナ社=800キロ)。

3、充電時間も、リチウムイオン二次電池の充電時間は高圧電流により30分で80%の充電を可能としている(走行500キロタイプならば30分で400キロ走行できる計算)。
こうした高圧充電スタンドは日本にはほとんどなく、これから・・・。

4、残る問題はバッテリー価格、
百花繚乱状態のEV市場にあり、原材料が高騰していることから、量産に入れば安価になるとされたEV用バッテリーは下がるどころか高騰している。
(EVメーカーと電池メーカーの販売契約内容は、材料費は時価の契約になっており、電池メーカーは材料費高騰リスクを回避している)

<原価> 
車両原価に占めるバッテリー価格は25%~40%(走行距離により搭載量が異なる)。
バッテリー原価に占める材料代は75%前後、
うち陽極材に用いるリチウム代は40%、ほかコバルト、ニッケル・・・

そのため、中国CATLやBYDらは、コバルトフリーのリン酸鉄リチウム電池の改良型を開発、走行距離400キロを実現している。コバルトを用いる3元系より2~3割安価。

リン酸鉄リチウム電池は3元系より熱暴走(5秒で800度/衝突時などでの火災死の原因)しにくく、安全性にも優れているという。すでにベンツやBMWなどの日常車に採用されている。

トヨタ発の全固体電池開発、
パナ社や産総研も参画して、安価かつ量産かつ搭載用まで小型化することに執念を燃やしていたが、いまだ開発できていない。

国営の産総研は、今でも続く小泉の聖域なき削減により大昔のような開発力はまったくなく、その知見の底は限られ、トヨタが参加させたのは国の予算を取り込むためだったか、それとも政府のポーズだったかにすぎない。

米バイデン大統領が中国パージを叫び、IRA法で米国産EVに対してだけ補助金を支給するにしても、現実は、中国のバッテリー支配力は絶大。
EV用バッテリーの原材料のリチウム、コバルト、ニッケルの陽極材の材料から分離膜・陰極材(黒鉛)などバッテリー部材のほとんどを中国が生産している。
(現在の米国のEV用バッテリー主流は韓国勢3社分/韓国勢はバッテリー材料の80%あまりを中国から調達している//米GMはLG/米フォードはSK/ジープの米クライスラーのステランティスはサムスンSDIと合弁工場展開)。

リチウムは豪州のリチウム鉱石を中国企業がほとんどを買い取り、中国でリチウムを抽出、
コバルトはアフリカのコンゴ民主共和国(圧倒的産地)の鉱山を中国企業が独占開発して中国で抽出、
ニッケルは産地が分散されるも主産地のインドネシアでは中国企業が鉱山開発して中国で抽出(直近は鉱物輸出禁止措置、中国企業がインドネシア内で精錬して抽出)している。

ただ、リチウムは埋蔵量世界一の南米3ヶ国の産地(アルゼンチン+チリ+ボリビア)での生産も立ち上がってくることから、2019年当時から10倍に暴騰している価格は沈静化するものと見られる。但し、運搬手段や環境問題から生産は遅れている。

以前からこうした南米国へも中国が一帯一路世界覇権戦略から、借金の漬物国にして、借金の返済に資源開発を行っている。

中国は世界一の産炭国であるが、こうした鉱石を溶融してレアメタルを抽出するため、石炭を輸入してまで燃やし発電した電炉で抽出している。
それも殆どが中南海の空気を汚さないために西域の新彊ウイグル地区などで生産している。

皮肉にも米バイデン政権のEV政策により、中国では石炭をボンボン燃やし地球環境を急悪化させながらフル生産体制に入っている。

 総じてEVの普及拡大は2035年ころまで続き、その後はリサイクルのレアメタルの活用が進み、価格はだんだん落ち着いてくると見られている。
EVモーターに使用する銅もこれまでの3倍に達し、そんなこんなでそうした精錬により地球環境を早期に悪化させることになる。

地球環境に対して、票のために政治的に利用した猪突猛進型、白黒の欧米型政治、地球環境に対して計画性のない愚かな政策がまかりとおっている。


スクロール→

EV用バッテリーなどに用いられるレアメタル価格(先物相場・ドル価)

レアメタル等

19/12.

20/12.

21/12.

22/12.

2/1

アルミ・EV

1,807

2,003

2,818

2,378

2,616

マンガン・EV

31.50

31.25

31.25

31.25

32.35

銅・EV

2.796

3.549

4.393

3.805

4.172

ニッケル・EV

13,950

16,553

20,880

29,866

30,153

コバルト・EV

32,750

32,190

70,500

51,955

49,000

リチウム・EV

49,500

46,500

268,500

519,500

474,500

 

↓現在、自動車輸出台数世界一の日本にEVバッテリー工場はない。

ただ、2027年には日本にも巨大工場がいくつか完成していることだろう。

韓国勢は市場が小さい韓国では小さな生産工場しか持たない。

EV用バッテリー生産能力状況

ブルームバーグ報道

 27年予想

2022年

 

GWh

 

GWh

中国

6,197

中国

893

米国

908

ポーランド

73

ドイツ

503

米国

70

ハンガリー

194

ハンガリー

38

スウェーデン

135

ドイツ

31

ポーランド

112

 

 

カナダ

106

 

 

スペイン

112

 

 

メキシコ

80

 

 

 

[ 2023年2月 3日 ]

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