トルコ大地震 全建物の半数が恩赦の違法建築物 最近の地震一覧
トルコは大昔から地震の多発地帯。
今回と同様の東アナトリア断層が動いたアンティオキア地震は、西暦115年と526年に発生、115年の地震ではM7.5で津波も発生し26万人が死亡、526年の地震も同様で25万人が死亡したと記録されている。その後もM6以上の地震が散発し続けてきた。
最近では、
1999年8月にはエーゲ海を抜けるダーダネルス海峡とイスンブールにあるボスポラス海峡、その間にあるマルマラ海、ダーダネル海峡近くのイズミット県で発生した「イズミット地震」、M7.6、津波も伴い1万7000人が死亡し、60万人以上が家屋をなくした。
この地震を教訓に建築基準法が制定され、それも2018年にさらに強化された。
しかし、・・・・
スクロール→
トルコ 1999年以降の地震 M=マグニチュード=地震規模 |
||||
発生 |
地震 |
M |
死者数 |
備考 |
1999年8月 |
イズミット地震 |
7.6 |
17,000 |
北西部地震とも |
1999年11月 |
デュズジェ地震 |
7.2 |
845 |
イズミットに近い |
2003年5月 |
ビンギョル地震 |
6.8 |
177 |
中南部 |
2011年10月 |
トルコ東部地震 |
7.2 |
600 |
|
2011年11月 |
トルコ東部地震 |
5.6 |
37 |
10月と別断層 |
2020年10月 |
エーゲ海地震 |
7.0 |
116 |
トルコ沖 |
2023年2月 |
トルコ大地震(今回) |
7.8 |
50,000 |
シリア含む |
北アナトリア断層で3回、東アナトリア断層で3回、エーゲ海プレート衝突地帯で1回
エルドアン大統領は、
2003年3月首相就任、~2014年8月からは大統領に就任している。
こうした地震を受け、エルドアン首相(当時)は、2007年に建築基準法を制定し、旧建物には耐震化工事を、新しい建物には新建築基準法を遵守させた。
ところが、一方で、エルドアン氏は、支持基盤の建設業者・開発業者との関係から、お金を支払えば、新建築基準法を守らなくても「安全証明書」を発行するという「恩赦」制度を設けた。
2018年には、さらに建築基準法が強化され、過去の建物についても地震の揺れを吸収する梁や筋がいを鉄骨で補強、その間隔まで義務付けた。
ところが、ここでも、エルドアン政権は、既存の不適格な建築物件について、お金を支払えば義務を免除する仕組みを導入=「恩赦」。
1000万人を超える人々が申請し、政府は「恩赦」の見返りの不動産税や登録費として30億ドル(約3900億円)以上を徴収していたとロイター通信が報じている。
建築基準法を政策の資金源にしたエルドアン大統領。当然、耐震化の新築物件はコスト増を招き、開発業者は挙って小金を支払い「恩赦」建造物を建設し続けた。
トルコにおける2012年以降の建設ブームはこうした「恩赦」建造物は、一方で経済を浮揚させ、エルドアン政権を磐石なものにしてきたのも事実。
2018年に環境都市化省は、トルコの1300万棟の全建物のうち半分が不正のままだと発表していた(ロイター/BBCの報道は全建物数2600万棟のうち半数が違法建築物)。
当然、中央でのこうした「恩赦・税収増」は、地方では賄賂となり、トルコでは不正が蔓延る原因にもなっている。ここ10年で腐敗指数は急悪化している。
今回の地震でクルム環境都市相は、「被災地で約17万戸を調査した結果、2万4921戸が倒壊もしくは半壊した」と発表している。
6月に大統領選挙を控えるエルドアン大統領
「被害にあった建物は1999年以前に建築された建物だ」と議会発言し、火の粉が自身に向かうのを避けるため、とんでもない発言。エルドアン氏は、1年以内に被災地域を再建させると宣言した。(ただ、それを実行できるリーダーシップは強権・独裁者のエルドアン氏しかないのがトルコの現実でもある)
これまでの野党に対する逮捕・弾圧の経過からして、6月の大統領選挙では不正してでも大統領を継続しようが、民心は離れ、政治が流動化する可能性も高い。
<指摘>
トルコの建築家組合は昨年8月、1999年のイズミット地震(トルコ北西部地震)から23年が経ち、「建築基準関連法案の適用免除発令に賛成票を投じる議員は、みな殺人に加担した責任を負う」と表明していた。(エルドアン氏は法で建築恩赦をさらに与える法案を提出させていた)
その指摘が現実のものとなった。
しかし、賢い政治家たちは、すばやく弱小の建設業者を大量に拘束、既にトカゲの尻尾切りを始めている。
トルコがあるアナトリアプレートは、
北部と東部でユーラシア大陸プレートと、
中東南部でアラビアプレートと、
中西南部地中海でアフリカプレートと、
東部でエーゲ海プレートと
衝突している。
中でも地震が多発しているユーラシア大陸プレートと接した北アナトリア断層と今回地震が発生したアラビアプレートと接した東アナトリア断層は、断層どうしがトルコ東部で衝突もしている。