アイコン 超安価な次世代ナトリウムイオン電池 中国勢量産大始動/先行の日本のNAS電池


偏在し高価なリチウムやコバルトを使用しない、どこでも調達できるナトリウムを正極に用いたナトリウムイオン電池(Na-ion電池)。
日本では2002年に日本碍子がNAS電池を開発したが、産業蓄電池領域からこれまで進化はない。 
ただ、これまでナトリウムイオン電池(Na-ion電池)は、研究において、エネルギー密度とサイクル回数が課題となっていた。
中国勢がそれを克服して、これから大きく舵を切ろうとしている。
既に中国勢の研究開発力、技術力の高さは、3元系リチウムイオンバッテリーに比し、2~3割安価で、高価なコバルトを使用しないリン酸鉄イオンバッテリーの高性能化に成功し、1回充電で400キロ超を達成するなど実績を積み上げている。

それでもリン酸鉄イオンバッテリーは高価なリチウムを使用するが、さらにNa-ion電池はリチウムからも開放される。
中国では、すでに電動2輪車に搭載市販され、4輪車も試作車が発表されている。

 

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<Na-ion電池搭載の試作車発表>
安徽江淮汽車集団「思皓(SOL)」25KWh、航続距離252km、
充電15~20分(2輪車では10分で8割充電)。 
(リン酸鉄イオンバッテリーも2021年までは航続距離は200キロ程度であった)

<価格>
電池向け炭酸リチウム価格が現在の約半分となる1トン当たり15万元(約288万円/19.2円)まで下がっても、ナトリウムイオン電池の原材料コストはリチウムイオン電池より▲3~4割安価。

※リチウム価格はトン当たりピーク60万ドル(22年11月)だったが、インフレ退治の金利高による自動車ローン高騰によりEV普及は遅れると見込まれ、23年3月23日現在28万ドル(360万円/130円)まで急落している。
欧米では環境問題より生活のインフレ対策が最優先されている。

<安全性>
発熱・爆発リスクがリチウムイオン電池より大幅軽減、鉛電池より安全とされる。
(当然セルの製造不良など問題外)

<気温リスクからほぼ開放>
適正温度はマイナス20℃-60℃。
マイナス40℃で平穏時性能の7割維持、80度の高温でも使用可、
 リチウムイオン電池より安定度が広範囲な性能維持温度。

<中国での出荷量予想>
23年12GWh →25年に20GWh →30年に347GWh

<搭載車両予想>
当初、電動2輪・小型車 →研究開発持続による性能向上 →自動車全般へ

<蓄電市場が主ターゲットか>
最大の出荷先は蓄電設備になる見通し

<既生産会社>
現在唯一の量産会社は北京中科海ノウ科技で2GWh/年生産

<量産予定会社>
寧徳時代新能源科技(CATL/年内量産)→上海汽車集団の小型車「科莱威」に搭載予定
山西華陽集団新能
孚能科技

<試験生産段階>
上海・派能能源科技+江蘇・百川高科新材料
広州・鵬輝能源科技+同興環保科技+江蘇・伝芸科技

<研究開発段階>
国軒高科(リチウムイオン電池メーカー)
恵州億緯リ能(リチウムイオン電池メーカー)
欣旺達電子(リチウムイオン電池メーカー)
華宇新能源科技(2輪メーカー雅迪科技集団傘下)
以上、

車両ニーズは電池が安価に生産されれば対利用生産が可能となり、ESSの普及、大量輸送のバスや市電・ライトレールなどにも使用されることになる。
遅々として進まない日本の全固体電池、今では世界中の車両メーカー、電池専業メーカーなどが鎬を削って開発に当たっている。しかし、多くの問題があるのかなかなか量産化されていない。
全固体電池が安全で走行距離が長いとしても、高価格では商品価値はなくなる。
Na-ion電池がリン酸鉄イオン電池のように進化すればなおさらのことだ。

中国は政府主導で2015年までに日本の工専のような大学を全国各地に作っており、その後もAI研究の専門学校も全国主要都市に開校させている。計画的な政府上げての人材開発投資が中国の台頭を具現化させている。

日本は学術予算の増加はなく、増加させるどころか忖度獣医大など新たに作り、1校あたりの支給を減らし続けている。現政権も海外へODAで無償・有償をばら撒くほど日本の将来は安泰ではない。
聖域なき削減は国会議員や官僚たちの報酬や経費支出だけにして、選別的学術研究予算の倍増、10倍増が望まれる。国営の理化学研究所の研究者たちが非正規雇用で大量解雇にあっているのが現在の日本の学術界の現実だ。
日本では20年前の小泉の亡霊がいまだ徘徊し続けている。

<Na-ion蓄電池は日本が先行していた/NAS電池>
日本では2002年に日本碍子がナトリウムイオン電池であるNAS電池を産業用蓄電池として開発したが、2010年と2011年の火災により、水で消火できず、それ以降、政府はNAS電池の開発を支援もせず放ったらかし、そうした日本の経験を学習した上で中国勢が全面的な実用化に向け動き出している。
NAS電池の火災原因はセルの製造不良だった。
NAS電池は改良され、現在では太陽光発電や風力発電の蓄電池用としても採用されているが、日本では高価であり家庭用への普及には問題を残している。
日本碍子によると22年3月期においてはNAS電池の大口納品先は国内外でなかったそうだ。

政府系研究機関のバックアップや経済的支援による普及が政府に求められていたが知らんぷりが現実。大量生産すれば価格は本来下がるのであるが・・・、競争が限られれば利益最優先でほとんど価格を下げないのが目先経営の日本企業の体質でもある。

東京都は住宅にソーラー設置を義務付けた。
安価な中国勢のソーラーパネルとNa-ion蓄電池が東京市場を全部奪うものと見られる。

中国は国家政策で風力発電やソーラー発電所を大規模に増加させ続けている。
そうした分野の市場が途方もなく大きくあり、大量生産も可能にし、その利益により企業も更なる進化の研究開発を可能にしている。それも多くの蓄電池企業が熾烈な研究開発競争を繰り広げている。
大陸では将来計画と裏づけの長期政策、島国では打ち上げ花火の尻切れトンポ。それも政権が変わればコロコロ変わる。その結果、iPS研究所も理化学研究所も、研究を支えている研究者たちのほとんどが非正規雇用となっている。先般、理研では非正規雇用者の大量解雇も実施されている。国土強靭化政策には途方もない予算(国+地方)が2014年から執行され続けている相変わらずの土建国家が実態(全国津々浦々へのばら撒きが主体)。

[ 2023年3月24日 ]

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