アイコン 中国 ゴーストタウン再び急増中


2020年夏に施行された「共同富裕論」に基づく不動産開発会社に対する融資規制強化策は再び全国各地にゴーストタウンを増加させている。

習政権は2022年に3期目を目指すため、2020年に国民向けプロパガンダの「共同富裕論」を旗印としたが、新コロナ下でもあり、その影響の大きさに習政権は対応もできず、現在、中央政府系の不動産開発会社以外は、目も当たられない状況に至っている。

中国東北部の瀋陽市郊外では、建設工事が中断となった邸宅の数々が放置されたままとなっている。
壊れかけたベランダや草が茂ったアーチは、過剰供給で機能不全に陥った不動産市場の象徴だ。現在、建物と建物の間には柵が設けられ、そこでは家畜の牛が飼育されている。

不動産大手の緑地控股集団は2010年、人口900万人の工業都市である瀋陽市の丘陵地帯に、この開発プロジェクト「ステート・ゲスト・マンションズ(State Guest Mansions)」に着手した。
当時、リーマン・ショック後の大公共投資に、不動産部門は急成長を見せていた。だが、それから約2年後、地方政府来訪者向けの豪華な設備を備えた、欧州建築風の邸宅計260棟のハウジングプロジェクトは頓挫した。
富裕層や政府関係者のために庭園が整備される予定となっていた土地は、地元農家が畑として耕している。

 

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簡易なニワトリ小屋も設置され、各戸に完備された自動車2台分のガレージは農機具をしまっておく物置と化した。辺りには野犬もうろついている。
プロジェクトが頓挫した理由はいまだ明らかにされておらず、地元住民も何かしらの胡散臭さを感じている。

(当時、富裕層向けのタウンの購入者は反腐敗の批判を浴びる結果となっていた。2012年に登場した習近平国家主席、反腐敗を旗印に官僚や事業家など数多くを摘発し失脚させ続けた(反習派=江沢民派を一掃することが真の目的だった。1期目の2017年まで摘発は続いた)。それはマカオどころか韓国のカジノでさえ、中国の公安が監視する始末、韓国の中国人カジノ観光客は大幅に減少していた。THAAD減は2017年3月からであり、それ以前に発生していた)
中国の不動産セクターは、すぐ過熱化することから、幾度となく規制強化して過熱化を抑えてきた。しかし景気が下り坂に落ち込めば景気刺激策の一環で、規制を緩和して不動産価格は上昇して経緯がある。

しかし、習政権は禁断の3期目を目指し、国民向けのプロパガンダとして「共同富裕論」を打ち上げ、まず、巨万の個人資産を形成したITCの創業者らを槍玉に上げ、経営の第一線から退かせた。
また、不動産価格は高すぎるとして、融資の厳格化(金融機関の不動産開発会社に対する新規融資は自己資産が30%範囲内)の方針を打ち出し、金融機関の借入金に依存した不動産会社は新規の資金調達ができず、建築中の物件のゼネコンへの支払いもできなくなり、すでに多くの不動産開発会社が淘汰されてきている。

2020年の規制野前までの規制は、金融機関の預金準備率を引き上げ、金融機関の融資枠そのものを減らさせていた。
購入者に対しては、投機目的購入を排除するため、1家族に1つの住宅優遇購入制度の適用しか認めず、それ以外での購入は、優遇制度がなく、金利や税など悪条件での購入となった。そのため夫婦が偽装離婚して購入する家族も多々現れた。
また、当局が金融機関を引き締めても、シャドーバンキング(家計等から資金を集めた信託資金を高利回りで融資=投資や高利回り社債を購入して、不動産開発会社へ資金を供給し続ける結果となった)が、一方で資金を供給し続けた。
そうした資金調達コストが高くなれば、高く販売しなければならなくなる不動産会社のジレンマもあった。

2015年夏場に発生した中国の証券バブル崩壊、シャドーバング問題が大幅整理され、当局の監視下に置かれた。
当局は、こうした過熱化しないための方策を常に採用してきたものの、景気悪化では幾度となく、手綱を緩めてきたため、不動産価格は上昇し続けてきた。
そうしたことを知り尽くした国民の一定割合は、マンションなど不動産購入を投資対象にし、これまでにも多くの利益を得てきた。

しかし、2020年の不動産規制では、これまでとは異なり、当局は金融機関に対して不動産開発会社の自己資本率に基づき、流動性資金を急激に悪化させる融資規制を実施させた。
不動産会社は、建設代金も支払えなくなり建設中断、中国では建設中に購入代金のほとんどを支払う購入方式であり、多くの購入国民がマンションを取得できなくなり、被害者による金返せの集会が各地で開催され、社会問題に発展した。

政府はほとんど売却済みのマンションの建築に限り、金融機関に資金を供給させ、完成させたものの、販売済が半数未満の物件やこれからだった物件などは宙に浮く事態となっている。(未完成物件を同業者に売却させたりもしている)そうした物件がこんにちの幽霊団地・幽霊都市を新たに形成している。

22年の不動産会社の販売額のベスト10では、民間は3者しか入っておらず、中央政府系(国務院系)と地方政府系が7社を占めている。しかし、地方政府系でも急激に財務内容を悪化させているベスト10入り会社もある。
地方政府の財政は、不動産売却と税収および地方債に依存しているが、不動産売却は進まず、税収も不景気で低迷、新コロナ事態での財政支出により財政を悪化させており、傘下の不動産会社のメンドウを見れなくなってきている。
ベスト10入りした民間の3社のうち2社は現在危機に瀕している。

上海の公的研究グループの報告書によると、中国全土の住宅計画のうち、2022年時点で約4%弱が中断されたままとなっているという。
土地面積に換算すると、2億3100万平方メートル(東京ドーム4951個分)に相当するという。

こうした事態で、政策の修正を行えば、習政権は間違った政策を執行したとして批判されることから、決して間違いを認めず、執行し続けることになる。
すでに恒大が問題化して1年半を経過しており、小手先の対策で延命させたものの、問題は大手各社に拡大してきており、中国を取り巻く総じた景気も悪化しており、習政権は不動産開発者への融資規制を本格的に修正しない限り、取り返しが付かなくなる可能性が高くなってきている。

当然、中央常任政治局員の中国7奉行は習派一色となっており、批判する者などおらず、不動産政策のプロも当然いない。
習政権は禁断の3期目にして独裁政権に化かし、その弊害がすでに多くの場面で表明化してきている。

↓中国の富裕層向け邸宅・開発終盤で開発は凍結され幽霊団地になった
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不動産開発会社はマンションのほかオフィスビルなども建設しており、幽霊オフィスビル群も出現している。

↓雲南省昆明市では幽霊ビル群となっていた高層ビル15棟を2021年に爆破処理した。地方政府は収入増を図るため自ら不動産開発にあたってきた経緯があり、結果として、幽霊団地、幽霊マンション、幽霊オフィスビル群を開発してきた経緯がある。
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[ 2023年8月23日 ]

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