アイコン 米国の自動車25%関税 ブラジル30%関税失敗の先例


ブラジル政府は2011年、自国自動車市場の貿易障壁を引き上げた。国内生産を増進し、雇用の安定や自動車の品質向上などの効果を狙った措置だった。
しかし、その後、自動車メーカーは工場を新設しては閉鎖し、結果として雇用は減少し、生産も大幅に縮小した。
ブラジルの消費者は現在では、近隣諸国と比べて5割も高い価格で同モデルの自動車を購入することが常態化し、技術面でも世界市場に遅れをとっている。

米国の自動車業界がトランプ大統領による関税措置に直面する中、経営幹部やアナリストたちは、かつて世界第4位の自動車市場だったブラジルとの共通点に着目している。ブラジルは今や、保護主義の危険性を示す事例として注目されている。

2011年1月1日、ブラジル左派「労働者党」のルセフ女史が大統領(元で現のルーラ大統領(2003~2010年)の右腕・後継者/2011年1月~2016年8月/弾劾失職)に就任し、貿易保護政策を推進した。
独自動車大手メルセデス・ベンツの元ブラジル・ラテンアメリカ代表、フィリップ・シマー氏は、サンパウロに高級車工場を建設したものの、2020年に閉鎖、手痛い教訓を身をもって学んだ。
シマー氏は言う。「ブラジルは、保護主義政策がどのような影響を与えるかを評価する上で良い例となるだろう。保護された市場は、どうしても遅れがちになる」。

現在、同氏はアドバイザリー会社のMirow & Coに在籍し、関税によって引き起こされる非効率性について警鐘を鳴らしている。

 

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2011年、ブラジル経済はルーラ政権下、好調で通貨も安定していたため、自動車輸入が急増。自動車労組と長年の繋がりがある与党・労働者党は警戒感を募らせていた。

当時のルセフ大統領は、様々な輸入車に対して30%の増税を行い、国産車への課税を半分にした。
同時に、自動車業界に雇用削減の凍結を求めた。こうした政策と、12年に制定された「現地生産比率を定める法律」が重なり、ブラジルの自動車産業は1990年代の市場開放以来、最も保護主義的な方向へと舵を切った。

輸入は減少し、2013年には国内生産台数が一時371万台と過去最高を記録した。自動車メーカーは、市場シェアを譲るか、ブラジル国内に工場を新設するかの選択を迫られ、メルセデス・ベンツを含め、現地組立ラインを開設することを選んだ。

しかし、多くの企業は国外既存供給網のような効率的な体制を構築できず苦戦。インフレの進行と経済の冷え込みにより、国内需要は落ち込んだ。

そして、海外への輸出を拡大できるほどのコスト競争力を持った工場はほとんどなかった。

メルセデス・ベンツは早期に現地生産からの撤退を決定し、ブラジル唯一の工場を4年で閉鎖。その1年後には、1世紀にわたり操業してきた米大手フォードもブラジル最後の工場を閉鎖した。

ブラジルの自動車産業の昨年の生産台数は255万台にとどまり、ピークだった2013年と比較すると3分の1減少している。自動車部門の雇用も、同期間におよそ▲20%減少している。

<競争力不足>
アナリストは、ブラジルの自動車産業が苦境に陥っている原因は保護主義だけではないと指摘。資本、資材、労働にかかるコスト高が、ブラジルの競争力を低下させているという。

ブライト・コンサルティングのパートナーで業界アナリストの、カッシオ・パリアリーニ氏は「ブラジルのように資源が限られた国では、ある程度の保護貿易は必要だ」としている。しかし、輸入車に対する重い税負担は競争力をなくす要因の一つとなっている。

独立系自動車アナリスト、テレザ・フェルナンデス氏は、ブラジルではサプライチェーン全体でみれば、自動車価格の3分の1を税金が占めていると試算している。
ブラジルの自動車メーカー団体アンファベアが発表した2019年のPwCブラジルの調査によれば、メキシコで自動車を生産する方が、材料費と物流費の面でブラジルよりも18%コスト効率が良いことがわかった。
税金を考慮に入れると、車種によってはその差は44%にまで広がる。
当然の結果として、トヨタ・カローラのハイブリッド車の新車価格は、メキシコでは2万1000ドル(約315万円)相当から、ブラジルでは3万4000ドル相当からとなっている。
ハイブリッド車や電気自動車も、ブラジルでは最近まで入手困難だった。輸入車との競争が少ないため、電気自動車をはじめとする新しい技術のブラジル市場への普及の勢いは緩やか。

メルセデス・ベンツの元幹部、シマー氏は、「米国の関税に関する発表は、ブラジルの近年の歴史から誰もが同じ教訓を学んだわけではないことを示唆している」と指摘する。
「現在の保護主義的な風潮には懸念を抱いている。これから、厳しい時代が続くのではないか」と。
以上、
米国の場合、海外勢も米国内に多くの工場が進出していることから、競争の停滞はないだろう。ただ、キャパは限られており、輸出を考慮した場合、価格競争力はなく、設備投資等は後手後手になり、結果、新製品開発投資に限界が生じる可能性はある。新興国の経済成長で今後、車両販売台数は増加し続けると見られるが、米国産車両は価格競争力0で輸出は不可能。(そうした車両をトランプは日本に買えという。今後、高賃金・高コストで生産され高価になる米車を石破・赤澤氏以外誰が買うというのか。)

工場投資は最低3年かかり、その間に、来年には中間選挙もあり、様子見となるだろう。3年後の秋には大統領選挙、トランプは習近平国家主席のように一党独裁路線の強攻策を講じない限り、米憲法上、大統領選出馬はない。
トランプとバイデンに見られるように条約や認可の破棄合戦。国家の呈をなしていない。

中国勢のように価格競争力があり過ぎれば、輸入国は国内自動車産業を衰退させるしかなく、総量規制もしくは高関税の輸入障壁を設けるしかないだろう。欧州のように・・・。
今回の米国の保護貿易はムチヤ振り過ぎる。
①米国の崩壊したサプライチェーンの再構築は・・・高コスト

②米国労働者の高賃金による高コストの車両生産は、販売も自ずと高価格となり、輸入車に25%関税をかけた車両が安い可能性すら出てくる。

③一律10%の関税にしても、単純には輸入価格が10%上昇し、流通段階で上乗せられ末端販売価格は15%以上上昇することになる。
 製造業にしても、海外の関税された部品・材料を使用すれば、これまた最終製品価格は13%以上上昇する。そもそも高賃金の国では、よほど付加価値にある製品しか製造しない方がはるかに安く調達できる。
それが一律関税より高い相互関税率になれば・・・

④米国の商品価格は、高い関税、高賃金、高コストにより自ずと高くなり、海外での価格競争力はまったくなくなる。
価格競争力がないため、米経済規模の範囲内での生産となり、好不況により生産規模は左右され、新規投資は控えられ、経済悪化の悪循環に陥る。
すべての部品・材料も国内生産に移管し、関税コストをなくしたとしても高賃金の労働コストが、すべての部品・部材・製品価格を押し上げ続ける。
⑤米国は外国に対して軍事力で、米国製自動車をすべてベンツの高級車並みの価格で買えと強引殺法を炸裂させるしかない。
 
 ⑥労働集約型のバングラデシュの繊維産業をターゲットにしたような37%の相互関税、輸入国に関税をかけることだけを目的にした単純バカのトランプ+ラトニック+ナバロの相互関税率の設定のようだ。

追、
第2次世界大戦へ至った1929年10月24日の「暗黒の木曜日」(ウォール街の大暴落)、1930年の世界恐慌、同年に米国は「スムート・ホーリー関税法」という高率関税、輸入制限の保護貿易法を制定、各国が保護貿易に入り、排他的なブロック化が進み、ブロック間で対立激化、列強ブロックは新興ブロックへの物流を停滞させ、それも長期化、痺れを切らしたドイツ等新興ブロックは1939年9月の大戦へ突き進んだ。
日本は米欧によりエネルギー・原油調達ルートを遮断された。当時、東南アジア諸国はすべて欧米列強の植民地(仏・米・英・蘭)、日本はイランなどからの原油調達ルートであるマラッカ海峡を実質封鎖されていた。米国はそれを弄んだ結果、・・・ニイタカヤマノボレ・・・となった。
一度あることは反省なくば、2度あり・何度でもある。

トランプ米政権の関税政策は、単独主義、保護貿易主義、非市場主義、WTOのルール
を全面否定したアメリカ合衆国の力による政策。
格下国がトランプ政権の言いなりになることでWTOルールを自らも破壊することにもなる。
 
☆企業は永遠であり、一方、トランプの大統領としての命脈は4年もすでにない。ましてや来年には80歳、それでいてカッカするタイプ、突然カバァチョの高齢リスクもある。

↓製造業の平均賃金で対比すべきだろうが、適切な資料がないため、各国全労働者の平均賃金は次のとおり。


スクロール→

2023年 世界各国の平均賃金/OECD版 /米ドル

 

 

 

100

100

1

スイス

105,184

131.3

324.6

2

アイスランド

98,855

123.4

305.0

3

ルクセンブルク

87,488

109.2

269.9

4

米国

80,115

100.0

247.2

5

デンマーク

72,281

90.2

223.0

6

ノルウェー

65,244

81.4

201.3

7

オーストラリア

64,655

80.7

199.5

8

ベルギー

61,286

76.5

189.1

9

オランダ

60,056

75.0

185.3

10

カナダ

60,031

74.9

185.2

11

アイルランド

58,374

72.9

180.1

12

オーストリア

57,569

71.9

177.6

13

イスラエル

56,273

70.2

173.6

14

ニュージーランド

54,793

68.4

169.1

15

イギリス

53,538

66.8

165.2

16

ドイツ

52,226

65.2

161.1

17

フィンランド

52,196

65.2

161.1

18

スウェーデン

47,781

59.6

147.4

19

フランス

47,135

58.8

145.4

20

スロベニア

36,694

45.8

113.2

21

イタリア

35,088

43.8

108.3

22

韓国

35,063

43.8

108.2

23

スペイン

34,541

43.1

106.6

24

日本

32,409

40.5

100.0

25

リトアニア

28,891

36.1

89.1

26

エストニア

26,550

33.1

81.9

27

ラトビア

24,456

30.5

75.5

28

チェコ

24,152

30.1

74.5

29

ポルトガル

23,795

29.7

73.4

30

スロバキア

20,463

25.5

63.1

31

コスタリカ

20,441

25.5

63.1

32

ポーランド

19,623

24.5

60.5

33

ギリシャ

19,122

23.9

59.0

34

チリ

18,605

23.2

57.4

35

ハンガリー

17,424

21.7

53.8

36

メキシコ

12,439

15.5

38.4

37

トルコ

11,023

13.8

34.0

38

コロンビア

9,550

11.9

29.5

 

 

 

[ 2025年4月21日 ]

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