【農業】米高騰の裏で問われる農政の責任ー江藤農水相の「限界」
国内のコメ価格が異常な高騰を続けている。農林水産省が4月28日に発表したデータによれば、今月14日から20日にかけて全国のスーパーで販売されたコメ(5キロ)の平均価格は4220円と、16週連続で過去最高を更新。前年同時期の2倍以上という異常な水準だ。
これに対し、政府は備蓄米の市場放出で対応を図っているが、効果は限定的。第3回目となる入札でもほぼ全量が落札されたものの、市場価格の引き下げにはつながっていない。そんな中、江藤拓農水相は「放出した備蓄米がスムーズに流通するよう、できるだけ働き掛けていきたい」と語ったが、危機感や即応性は乏しい印象を受ける。
江藤氏は農政一筋の政治家である。父・江藤隆美元運輸相の地盤を継ぎ、2003年に初当選。以降、農林水産政務官、副大臣、大臣補佐官などを歴任し、2019年と2024年には農林水産大臣に就任している。典型的な農政族議員であり、JAや農業団体との関係性も深い。だがその政治スタイルは、あくまで調整型。現場との距離は近くとも、構造改革を進める胆力には乏しい。
今回の米価高騰は、長年続いてきた減反政策(生産調整)や、農業組織の硬直化による需給ミスマッチが直接の原因である。これまで「コメ余り」に依存してきた農政のツケが、異常気象や輸入飼料の高騰といった外部要因とともに一気に噴き出した。
こうした中で問われるべきは、江藤氏を含む農政官僚・族議員がこの危機を予見し、事前に備えていたかという点だ。実際には、備蓄米の入札・流通のスピード感は鈍く、価格への抑制効果は乏しい。にもかかわらず、江藤氏は明確なロードマップを示すことなく、「流通に働き掛ける」といった曖昧な表現にとどまっている。
今、農政に必要なのは「守る人」ではなく、「変える人」だ。デジタル技術を用いた需給のリアルタイム分析、流通経路の多様化、JAへの依存からの脱却など、抜本的な見直しを進めなければ、同様の危機は繰り返される。
江藤氏は長年の経験と業界との信頼関係を持つがゆえに、かえって改革の障害になっている側面もある。農政の“顔”である同氏の言葉と行動が、今後の米市場の行方を左右すると言っても過言ではない。今回の危機が、農政の抜本改革への転機となるか、それとも過去の延長戦で終わるのか。国民はその「覚悟」を見ている。