アイコン 米不足の陰にある「制度疲労」ー農業委員会は農地を守れているか


2025年春、日本の食卓に異変が起きている。スーパーの棚から一部の銘柄米が姿を消し、価格もじわじわと上昇。背景には、2024年の猛暑と水不足による不作、そしてコロナ禍以降の過剰な生産調整による影響がある。だが、こうした需給の歪みに対し、足元の農地管理は機能しているのか──改めて問われているのが、全国の市町村に設置されている「農業委員会」の役割である。

農業委員会は、戦後の農地改革を受けて発足した制度で、農地の売買・貸借・転用を審査し、農地の適正利用を図る役割を担う。だが、近年は耕作放棄地の増加や高齢化の加速、農地の流動化ニーズの高まりに対して、委員会が十分に機能していないとの指摘が多い。制度としての“疲労”が進んでいるのだ。

 

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今回の米不足は、需給のミスマッチという単なる市場現象では片づけられない。実は、作付けできる農地が地域にありながら、有効に活用されていないケースが散見される。にもかかわらず、農地の貸し借りを円滑に進めるはずの農業委員会が、形式的な審査や地域内の“なあなあ関係”に終始し、機能不全に陥っているケースがある。

加えて、委員選出のプロセスにも課題がある。地元農家からの推薦が主で、専門性や農業経営の知見に乏しい人材が選ばれることも少なくない。農業を地域の経済資源として捉え直す視点が、現場レベルで欠如している。

今後は、農業委員会の再編と機能強化が不可避となるだろう。例えば、都道府県単位での広域連携や、外部の専門人材を交えた審査体制の導入、さらにデジタル技術を活用した農地情報の見える化などが必要だ。農地は、ただ守るだけでは意味がない。作物が育ち、経済として循環する仕組みを支える制度であってこそ、社会的な意義を持つ。

今年の米不足は、「農地があるのに米が足りない」という皮肉を私たちに突きつけた。その背後にある制度のひずみを、今こそ直視すべき時に来ている。

田んぼ

 

[ 2025年5月 7日 ]

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