【経済コラム】消費税を上げても、成長はできるのか?─北欧・欧州に学ぶ持続可能な財政設計
少子高齢化が進む日本にとって、社会保障費の拡大は不可避である。多くの国民は「また消費税を上げるのか」と眉をひそめるが、視野を広げれば、消費税(付加価値税)を引き上げつつ経済成長を実現した国々が存在する。
その代表格がスウェーデンである。スウェーデンの付加価値税(VAT)は実に25%。それでも同国は長年にわたり高福祉・高負担を両立させながら、GDP成長率は1~2%台を維持し、雇用率も欧州内でトップクラスを誇る。
背景には、税収を教育・育児・医療といった将来への投資に優先的に充てていることがある。さらに、消費税収は国民が納得できる形で再分配され、「自分に戻ってくる税」という感覚が定着している。
またドイツも一例だ。同国は2007年、消費税率を16%から19%に引き上げたが、そのタイミングで法人税率を下げ、企業の設備投資を後押しした。消費税増による一時的な個人消費の減退を、企業投資と輸出拡大で補い、リーマンショック前後の成長に繋げている。
日本にとっての示唆は明快だ。
「増税=景気後退」という固定観念を脱し、“信頼される使い道”と“成長の補助線”をセットで示す政治設計があれば、消費税増税も国民に受け入れられる。
経済成長と財政健全化の両立は、あくまで設計と運用の問題である。国民の将来不安を減らす形で社会保障に投資し、企業には規制緩和や研究開発支援といった成長の土壌を整える。消費税は「単なる負担」ではなく、成長と分配の循環を作るための“エンジン”になり得る──そう示すのが、先行事例のメッセージである。