「かつての強み」が命取りに──老舗燃料卸の破綻が映す、変化できない企業の限界
◇70年企業の幕引き
石油製品の卸売を手がけていた老舗企業・株式会社永和(兵庫県尼崎市)と、その関係会社である永和エナジー株式会社は、2024年6月18日までに神戸地裁尼崎支部へ自己破産を申請した。
2社の負債総額は約23億6000万円にのぼる。
永和は1950年に創業。タンクローリーによる現地給油サービス「パトロール給油(小口配送)」を強みに、建設業者や産業廃棄物処理工場などへ軽油を供給し、関西圏で地域密着型のサービスを展開してきた。2008年には年商32億円超を記録するなど、地域のインフラを支える存在だった。
◇転機となったリーマン・ショック
破綻のきっかけとなったのは、2008年のリーマン・ショックだ。主力顧客だった建設業者の倒産が相次ぎ、永和は多額の不良債権を抱えることになる。これにより資金繰りは急激に悪化し、2010年には債務超過に陥った。
その後も経営は好転せず、石油相場の乱高下や価格転嫁の難しさ、ドライバー不足、燃料費の高騰といった要因が重なり、事業の立て直しは困難を極めた。長年の「強み」であった自社配送体制も、時代の変化により「固定費の重荷」となり、経営を圧迫した。
◇再建への選択肢はなかったのか
永和に全く打つ手がなかったわけではない。たとえば、自社配送にこだわらず、他社と共同配送網を構築することで物流コストを抑える道は考えられた。また、小口配送のノウハウを生かし、家庭向けの燃料宅配や、防災対応型サービスなどに展開すれば、新たな収益源を生む可能性もあった。
さらに、M\&Aによる大手企業との連携や傘下入りといった選択肢を選び、経営基盤を再構築することも考えられたはずだ。こうした変化への舵取りを、あと数年早くできていれば、別の未来があったかもしれない。
◇時代に適応できなかった教訓
今回の破綻は、単なる老舗企業の倒産ではない。これは、成熟産業における「過去の成功モデル」が、変化に対応できなかった場合にどうなるかを示す象徴的な事例である。
今、日本企業に求められているのは、急成長よりも“縮小均衡”の中で持続可能な戦略を描く力である。無理に規模を保とうとするのではなく、時代に合わせて柔軟に姿を変え、小さくても強い企業体質をつくることが、これからの生き残りに不可欠だ。
永和の倒産は、「変わるべきときに変われなかった」企業の末路であり、多くの中小企業にとって他人事ではない重い教訓といえる。





