アイコン 世界をマスクが制す ポリプロプレン不織布40倍に暴騰


日本では安倍首相が音頭を取った国民へ配布するアベノマスクさえ、実態が謎のような企業や伊藤忠や興和らに発注し、日本を代表する企業らは首相の顔に泥を塗った。江戸時代なら・・ものだが、今は令和の時代だ。
そうしたことから、配布もいまだ2割以下、すでに新コロナは収束過程に入っている。

新コロナ感染症の世界爆発により、顔を隠す文化がない欧米でも衛生必需品として急速に定着している。
韓国でも前政権時、大気汚染のソウルの大学にあり、講義中に日本人留学生がマスクをしていたところ、教授が「失礼だ」と激怒し、講義を中断してマスクを外させる事案もあった。これまでマスクを使用しているのは大気汚染国が深刻な中国と花粉症がある日本くらいだろうか。

しかし、新型コロナウイルス感染症がマスクを「グローバルスタンダード」に一変させてしまった。
国によってはマスクをしていなければ罰金を科す国まで現れている。
ロックダウンばかりしていては経済が破綻するとして、収束過程に入った多くの国々ではすでに緩和や解除に向かっている。

<経済再開するには検査拡大とマスクが必須>
緩和と経済再開の条件として、新型コロナの検査拡大およびソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の確保)とともにマスク着用を義務化する国が増加している。

ドイツでは4月29日に封鎖を緩和しながら、公共交通機関の利用と商店での買物時にはマスクの着用を義務化した。
地域別によっては、これに反すれば巨額の罰金を科すところもあるという。

オーストリアでは4月30日から買い物に出かける時のマスク着用を義務化しながら、クルツ首相が「不便だとは思うが、感染抑制に必要だ」と国民を説得した。

スポンサーリンク

フランスでは5月11日に全国移動制限令が解除されながら公共交通機関の乗客と運転者のマスク着用が義務化された。

スペインも5月4日から外部活動時はマスクの着用を義務化した。

終息過程にある中国では、各小学校の教諭がマスクをさせて走らせ、酸欠で3人がこれまでに死亡している。

今後封鎖の解除が進み経済活動の再開が活発化し、特に学校が始まれば、マスクの需要は爆発的に増えるほかない。

<欧米は、自国産マスク輸出から遮断>
マスク着用が拡大しながら、各国は物量確保が緊急事態となっている。
マスク不足はある面では政府や指導者の政治的力を評価するモノサシにもなっている。。このような状況下、欧米は自国生産マスクの輸出を禁止している。
欧州連合(EU)はすでに3月16日、マスクはもちろん保護手袋、保護メガネ、フェイスシールド、保護服など新型コロナ感染から身体を守る個人保護装備(PPE)をEU外に輸出できないように制限したとユーロニュースが報じていた。

フランスのマクロン大統領は今年末まで医療用マスク生産を4倍に増やして供給を外国に依存せず完全に独立すると公言している。
マクロン大統領はフランスの1週間あたりのマスク需要4000万枚のうち、自国内で供給できる物量が4分の1にも達しておらず、医療スタッフが危険にさらされているという指摘が出るとこのように約束した。
ドイツはマスクの海外輸出を一時制限した。EUから離脱した英国は海外からのマスク輸入拡大を試みているとBBCが伝えた。
ブルームバーグニュースによると、米国は第2次世界大戦当時に制定した国防生産法まで動員して高性能医療用マスクの輸出を制限している。

このように新型コロナの拡大で、マスク確保が各国の国家的課題として、その位置を確立している。国内で十分に正しく作ることができなければ外国から買ってくるしかない。

<マスク278億枚、中国輸出上昇をけん引>
このような状況に乗じ、新型コロナ危機からいち早く抜け出した中国は、まだ新コロナの疫病に苦しめられている国に対してマスクを大量に輸出してかなりの利益を上げている。  
中国は3~4月、全世界に278億枚のマスクと1億3000万枚の保護服を輸出したと中国の税関業務をつかさどる海関総署の発表を引用して朝日新聞が5月8日に報じた。 
中国のマスク・保護服などの個人保護用品(PPE)輸出は3~4月に712億人民元(約1兆円)に達している。
輸出ペースも速く、4月上旬は1日10億人民元から4月末には1日30億人民元以上に増加している。
マスクなど保護用品の輸出好調を追い風に中国の4月の全体輸出は1月以降初めて昨年同期に比べ3.5%上昇している。金額では2003億ドルを記録している。

読売新聞は、中国では需要の爆発でマスク製造業が好景気を迎えていると報じている。中国の調査会社によると、マスクを取り扱う現地企業が9000社近く増加。
中国では1月まで1日のマスク生産量が2000万枚程度だったが、最近では2億枚を超えている。
新コロナの世界的な拡大を利用して中国がマスク生産と輸出にどれくら力を入れていたかをよく物語っている。

<材料価格暴騰、不織布40倍、原料のポリプロピレン2倍>
マスク生産量の急増で材料である不織布と不織布の原料であるポリプロピレン(PP)の価格も天井知らず。

中国現地メディアのGlobal Timesはマスクの材料として使われている不織布価格が中国で1トン当たり70万人民元で、6ヶ月前と比べて約40倍値上がりしたと4月20日報じた。
グローバルタイムズは中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹紙「環球時報」の英字新聞。

この報道によると、不織布1トンから約2万枚のマスクを作ることができる。不織布の原料であるポリプロピレンも1トンあたり2万2000人民元でこの3日で2倍に値上がりしたと伝えた。

国連の2016年統計によると、不織布の原料であるポリプロピレンの生産は中国が2020万トン、中国以外のアジア地域が1870万トン、欧州が1100万トン、北米が860万トン、中東が760万トン、南米が310万トン、アフリカが130万トン、日本は21万トン、その他地域が309万トンをそれぞれ生産している。これに伴い、世界的にマスク確保競争が加速すれば、欧米中心にポリプロピレンと不織布の価格が上昇するか、材料不足が起きる可能性が高い。

<ホワイトハウス職員の陽性事態、マスクの関心高める>
先週末の9~10日、米国社会でマスク着用拡大の変曲点になるほどの大型事件が起きた。大統領と副大統領を近くで補佐するホワイトハウス職員がマスクをせずに仕事についていたところ、新型コロナの陽性判定を受けるという事件が発生した。マスクの需要を高める契機になりえる衝撃的な事件だ。

米CNNは9日、ペンス副大統領の報道官であるケイティ・ミラー氏が新型コロナの陽性判定を受けたと報じた。ミラー報道官は陽性が判明する前日、ペンス副大統領が出席した行事場所でマスクをつけないで取材陣と話をする様子がカメラに捉えられていた。そのうえ、ミラー報道官の夫はスティーブン・ミラー大統領上級顧問。
トランプ大統領を象徴する「超強硬移民政策」を立案した核心側近であるため、当然、トランプ大統領との接触も頻繁。

<米国では新コロナ防疫最高責任者が相次いで自宅隔離>
ニューヨーク・タイムズ(NYT)はミラー報道官が米国の最高公衆衛生専門家が出席する新型コロナ・タスクフォース(TF)会議に繰り返し出席していたと報じた。このためにTFに含まれていた疾病対策センター(CDC)のロバート・レッドフィールド局長、食品医薬局(FDA)のスティーブン・ハーン局長が新型コロナ感染者と接触した事実が確認されて週末から2週間の自宅隔離に入った。
ホワイトハウスTFを主導してきた米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長も緩やかな形の自宅隔離を始めた。
ファウチ所長は12日、上院で開かれる新型コロナ対応公聴会に出席し、コロナの未来に対して率直な意見を明らかにするものと予想されたが、自宅隔離のために不透明だった。
それだけではない。
トランプ大統領の長女であるイバンカ上級顧問の個人秘書も感染し、大統領を警護する秘密警護員のうち11人も集団感染。警護員は、初期はマスクをつけていなかったが、専門家の指摘を受けて一歩遅れて着用した。

最も大きな問題は、トランプ大統領とペンス副大統領、そしてミラー報道官やミラー上級顧問らホワイトハウスの高官が一様にマスクを着用していなかったというのが事実。

トランプ大統領は今月5日、アリゾナ州にあるハネウェル社の医療用N95マスク製造工場を訪問したが、マスクをつけた姿は見せなかったとCNNが報じた。
ペンス副大統領は先月28日に病院を訪問した場で、一人だけマスクを着用しなかった姿を見せて非難を受けたとAP通信が報じた。
ペンス副大統領はミネソタ州の大型病院メイヨー・クリニックを訪問して新型コロナ回復患者などに会って保健関係者と円卓会議を行う際、マスクをつけなかった。

トランプ大統領は、新コロナで危険領域の73歳、ペンス副大統領は爺様のようでまだ60歳、もしもトランプ大統領が感染した場合、英ジョンソン首相(55歳)のようにはICUからは生還できない可能性もある。

<米国までマスクが一般化すれば確保競争が加速>
このような状況で、マスクをせずに仕事をしていたホワイトハウス職員から陽性反応が出たことを受けて、数多くの接触者が自宅隔離に入った今回の事件は、米国社会に警戒心を植え付けてマスク着用を促進するものと期待される。巨大市場である米国でマスクが大量に消費されれば、マスクはもちろんその材料である不織布、その原料であるポリプロピレンの需要が急速に増加する。場合によっては「マスク武器化」や「材料と原料確保戦争」が起こるかもしれない。新型コロナ第2波に備えるためにもマスクとその材料・原料を十分に確保する必要がある。マスクは今や戦略物資になっている。
米3M社が中国で生産し、ドイツの警察へ空輸していたマスクが中継のタイ空港でハイジャックされた。ドイツ政府はカンカン、一方、米政権は知らんふりしていた。

ここ15年、プラスチックの生産量は中国と韓国が増加し、欧米・台湾は変わらず、日本は減少している。安価な東南アジア製などが流入しているため。2008年のリーマンショック後減り、2012年からは減ってはいないが増えてもいない。
日本の化学業界も中国や韓国産に依存する体質が染み付き、最近では東南アジアからの調達も多くなっている。当然、グローバル化の旗手である日本国には基礎材料の安保などの概念はなく、今回の新コロナでは日本企業が中国で生産しているマスクさえ中国の安保により日本へ輸入できない事態に陥った。

日本ポリプロ(株)は昨年のリリースで、国内で安価な海外産ニーズが強く、年産10.6トン生産施設の茨城工場を今年4月に閉鎖すると発表していた。

日本プラスチック工業会の生産資料
http://www.jpif.gr.jp/3toukei/conts/getsuji/2019/2019_seihin_c.htm
 

[ 2020年5月14日 ]

スポンサーリンク
 

 

 


HTML Comment Box is loading comments...



※記事の削除等は問合せにて。

スポンサーリンク
 

 

関連記事

 

 



PICK UP


破産・小口倒産一覧