アイコン 香港の「国安法」により何が起こっているのか


CNNが現地の取材から次のとおり解説している。


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香港国家安全維持法の主な内容

2020630日施行

1

国家分裂罪、国家政権転覆罪、テロ活動罪、外国勢力との結託を通じた国家安全危害罪の最高刑は無期懲役。

(テロ罪は具体的な内容に言及せず、恣意的に広範囲に適用できる内容としている)

2

国家安全維持法の施行後の行為に適用

(施行翌日の7月1日に適用され、370人あまりが逮捕・拘束された)

3

香港の住民あるいは企業、いかなる場所の非居住者が対象

630日~71日までに香港の民主化団体のほとんどは解散を届出、著名代表らは国外へ脱出している)

4

テロ罪には交通網の「重大な破壊」が含まれる

5

外国勢力との結託には外国による制裁の主張も含まれる(米英豪政府などを指している)

6

政権転覆には香港行政機関の転覆とオフィスへの攻撃が含まれる

7

外国による介入、または他の「深刻な状況」に関連した「複雑な」案件は中国当局に起訴する権限

(中国政府当局が香港で直接逮捕・起訴する権限)

8

国家機密など「公開裁判に適さない」対象が絡む案件では非公開の裁判を許可

(中国本土への移送による極秘裁判が懸念されている)

9

(同法違反にならないよう)報道機関と外国の非政府組織(NGO)の「管理」強化を要求

 

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中国政府が「香港国家安全維持法(国安法)」を成立させる意向を表明してから40日が過ぎ、同法は6月30日に施行され、翌日の7月1日には、実際に効力を有するに至っている。香港の政治的自由にとてつもない影響を及ぼす可能性をはらんでいる。
国安法の草案は、ほとんどすべてが秘密裏にまとめられた。北京での非公開の協議には、香港の行政トップを務める林鄭月娥(キャリー・ラム)氏さえ加わることはなかった。

6月30日、全国人民代表大会(全人代、国会)による法案の可決が報じられてから数時間が経っても、なお、ごく少数の人たちを除くすべての香港人はその内容を全く把握していなかった。

同日夜、現地の立法府を介さずに公布された国安法は、「国家分裂や政権転覆、テロ活動、また外国勢力と結託して国の安全を脅かす行為」を犯罪と規定した。
当局は罰則について、当初中国国内よりも軽いものになると示唆していたが、蓋を開けてみれば上記の4つの罪には最高で終身刑が科せられることになっていた。

陪審裁判を受ける権利は、状況により停止される可能性があり、審理が非公開で行われる恐れもある。
また、香港に住む外国人に違法行為の疑いがかかれば、有罪か無罪かにかかわらず強制退去させることもできる。
香港の既存の法律との間で矛盾がある場合は、国安法を常に優先させる。

同法の施行により、中国政府の香港に対する直接的な統制力は格段に強化される。
安全保障に関する新たな委員会を立ち上げて、そこに中国政府が任命した顧問を加えるほか、中国政府直属の治安機関も設置し、広範な権限を与え、著しく重大な違法行為をはたらいたとみられる香港人の訴追に当たらせる。

香港と中国政府の当局者は、同法が必要かつ時宜に叶うものだとしたうえで、影響を受けるのはごく少数の香港人のみになると断言していた。あくまでも、香港に「安定と繁栄」を取り戻すための法律だとした。

香港のキャリー・ラム行政長官は今月1日、
「国安法が重要な一歩となり、過去2~3ヶ月の間に起きた混乱と暴力に終止符が打たれる」
「法律を導入する目的は香港の安全を守ること。法律自体は正当かつ合憲であり、理にかなったものだ」と強調した。

<萎縮効果>
施行される以前から、国安法の持つ萎縮効果は表面化し始めていた。多くの政党が解散し、商店主らは反政府デモを支持するポスターなどを撤去。人々はソーシャルメディアのアカウントや過去の投稿を削除した。
今後はこうした動きに拍車がかかる公算が大きい。
法律が定める違法行為は広範で多岐にわたり、具体的に何をすれば法に触れるとみなされるのかは、実際に訴追されるまでわからない。

例えば、
国家分裂の扇動や支援、教唆といった違法行為は、香港の独立に関連する意見表明のほとんどが該当し得る。
最近の抗議集会で、参加者らは定期的に独立を求める歌を歌ったり、分離主義を標榜する旗を振ったりできていた。しかし、現在こうした行為は罪となり、最も軽いものでも禁錮5年の刑が科されることになる。
CNNが警察から入手した情報によると、
6月30日に行われた警察幹部の会合では、
香港の独立を支持する旗を振ったり、
歌を歌ったりする者は誰であろうと逮捕するようにとの通告があった。
持ち物検査で独立の旗が見つかった場合も、やはり逮捕することになっているという。

政権転覆とテロ活動についても、相当幅広く定義されている。
後者には「危険な活動によって人々の健康、安全、安心を著しく脅かす」行為が含まれる。その目的は「人々を怯えさせて政治的課題を達成する」ことだとしている。
これを広範に適用すれば、昨年、香港で見られたような政府に対する抗議デモもテロ活動とみなされる。こうしたデモはしばしば暴力的なものにエスカレートし、参加者と警官隊の衝突や公共施設の破壊などが起こる。中国国営メディアは当時から、香港での抗議デモをまさしくテロ活動として報じていた。

とりわけ国安法は、交通手段の妨害や交通機関に関連する施設並びに電子制御システムに重大な影響を及ぼす妨害・破壊を犯罪と規定する。
地下鉄駅の破壊や道路の封鎖、バスの運行妨害といった行為はこれに含まれるとの解釈も可能になる。
重大なテロ活動に対する刑罰は最高で終身刑。最も軽いもので禁錮10年となっている。
そこまで重大ではないテロ活動にも最低で禁錮5年の刑が科される。

<外国人への脅威>
国安法の施行で最も打撃を被るのは香港人だが、そこに含まれる数多くの条項は外国企業、特にメディアと非政府組織(NGO)の香港での活動に影響を及ぼす恐れがある。

国安法では誰であれ「外国の国家、機関、組織もしくは個人から直接的あるいは間接的に指示や統制を受けたり、資金やその他の援助を得る者」について、特定の活動を遂行することで国家安全保障に敵対しているとみなされた場合、有罪となる可能性がある。
具体的には、
香港や中国の当局者に対する制裁をはたらきかけたり、香港の選挙に影響力を行使したり、香港における法律や政策の制定と施行に重大な妨害を加えたりといった行為を含む。

米政府は最近、まさにこの国安法をめぐって中国の当局者に対する制裁を科していた。違法なやり方で香港の住民を刺激し、中国政府への憎悪を引き起こすことも犯罪とされる。

中国の人々は「国家の秘密」を外国のメディアや政府、組織に漏らすと訴追されるが、香港の国安法でもこうした行為は犯罪になる。
これにより、今後外国のジャーナリストやNGOは香港市内での活動がはるかに困難になる恐れがある。

現時点で、香港はジャーナリストに対して寛容な査証(ビザ)政策をとっており、中国本土のような厳しい規制は行われていない。
NGOについても同様で、現在複数の人権団体、労働者団体、報道の自由に関連する団体は中国本土での活動が難しいことを理由に、香港に拠点を置いている。
香港の非永住者が国安法違反の容疑者となった場合は、有罪かどうかにかかわらず同市から強制退去させられる可能性がある。

<司法・裁判上の変化>
国安法の可決に当たって最も物議を醸した問題の一つが、新たな裁判官のグループを立ち上げて国家安全保障に関する裁判を担当させるというもの。このグループのメンバーは行政長官が直接任命する。
法律の専門家らは、この措置によって香港の司法の独立が損なわれかねないと警鐘を鳴らしていた。
行政側が、特定の問題に関して潜在的に考え方を同じくする裁判官を選ぶことができるようにしている。
国安法には、「いかなるやり方であれ、これまで国家安全保障を危険にさらす言動があった人物は、同じく国家安全保障を危険にさらす犯罪を担当する裁判官として指名されるべきではない」とある。

また陪審裁判は必要とみなされれば停止されることもあるとしている。その場合、裁判は裁判官のグループが審理する。
これ以外にも、特定の犯罪に関しては、中国当局が直接担当する形での訴追が可能になる。中国政府の出先機関「国家安全維持公署」がこれを主導し、中国国内の法律や法的基準が適用される。
国安法の条文によれば、「公署が当該の犯罪の捜査を担当し、中国の最高人民検察院が検察機関を指定して検察権を行使する。そのうえで最高人民法院が裁判所を指定して裁判権を行使する」という。
この権限を行使するにあたり、公署のメンバーは「香港特別行政区の管轄を受けない」。また香港警察は公署の業務を支援し、いかなる者の妨害も阻止する義務を負うとしている。

こうした犯罪に関する手続きが中国本土に持ち込まれるのか、あるいは香港の中で中国の検察によって進められるのかは明らかになっていない。被疑者が中国本土に送致されるのではないかという懸念を引き金に、昨年は香港政府に抗議する大規模なデモが起きた。

中国は裁判での有罪判決率が高いことで知られる。とりわけ政府批判など国家安全保障にかかわる裁判ではその傾向が強く、政治目的の訴追だとする批判の声が絶えない。
こうした裁判の被告には、弁護士と面会する権利も認められていない。

<この先に何が?>
ここ数週間にわたり、香港の当局者と北京の中央政府は一般市民を安心させるべく、国安法についてあくまでも選択的に適用されるものであり、ごく少数の人々にしか影響を及ぼさないと訴えてきた。
6月30日の同法可決を受け、香港政府の報道官は「極めて少数の違反者を対象にした法律」だと改めて強調し、「生命や財産はもちろんのこと、圧倒的多数の市民が行使する各種の正当な基本的権利及び自由は今後も守られる」と述べた。
さらに「香港市民が、これらの正当な権利の行使について懸念を抱く必要は全くない」と付け加えた。
この言葉が事実なのかどうかは、現時点でわからない。数ヶ月たっても知ることができないかもしれない。
国安法の下で最初の訴追者が出て初めて、明らかになるのだろう。
しかし、萎縮効果はすでに今週から表れており、この先同法の持つ影響力が個別の犯罪の次元を超えて広く波及することをうかがわせる。

香港は長年「抗議行動の街」として知られている。そこでは政府に異議を唱える活動が盛んに行われ、報道の自由が保障され、公の場で活気ある議論が交わされる。
国安法はそのすべてを標的にしており、この街の姿を永遠に作り変えてしまうのかもしれない。
以上、CNN参照

中国は常に厳しく法制定し運用は緩やかなものも多い、しかし、何かが生じれば法運用を厳格化させ、厳しく取り締まる。外交上においてそれは顕著に行使される。南シナ会の領有権を主張する中国に対してフィリピン政府は国際司法裁判所に訴え、領有権無効の判決を経て勝利した。それに対して中国政府フィリピンに対して経済制裁、大量に輸出されていたフィリピンバナナを入管当局が検疫検査を厳格にするとして、全部腐れバナナにしてしまい、フィリピンから中国への実質的な輸出ができなくなった。
尖閣暴動度、中国入管当局は日本から中国関連会社への部品などの輸出に対し、入管検査を大幅に遅滞させた。
スパイ容疑でも、現地の日産社員が現地人の案内で禁止区域に入ったとして検挙されたりもしていた。その禁止区域には以前から何回も行っており、禁止区域かどうかも不明だった(その後、当時ゴーンが動いたのか拘束は解除されていたが・・・)。

このように、中国政府は、今回即、法により実力行使に出て恐怖心を煽らせた。今後の活動状況により、手綱を緩めたり、強化するものと見られる。
最悪、中国本土の軍隊もどきの警官を香港に投入するものと見られる。

香港のほとんどの中国派の投資家たちは、これで中国本土からの香港投資が増加すると大喜びしている。
しかし、米国次第では国際金融センターとしての香港の地位を剥奪する可能性が高くなっている。
トランプにしても、特に大統領がバイデンになった場合、民主党は中国の人権問題を第一義に取り上げてくることから、中国政府に対してウイグル問題と香港問題では厳しい対応を取ることが予想されている。
今までの香港ではなくなっている。
香港でもいつ何時、屁理屈を付けられ、日産社員のように拘束されるかもわからない。ボーリング会社の社員たちも拘束されたままだ。

[ 2020年7月 3日 ]

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