中国でEV開発を積極化させるトヨタとホンダ トヨタ21年は11年生産から倍増
ホンダは新年早々、中国・湖北省武漢市に同社初の電気自動車(EV)専用工場を建設すると発表した。2024年に稼働を開始する。
中国では12月、EVは乗用車販売台数の2割を占めるまでに急成長している。
トヨタは1年半前に、天津市に着工した年20万台規模のEV工場を今年6月にも稼働させる。トヨタはこの工場で次世代EV「BZ」シリーズと中国BYD(比亜迪)と共同開発した中国専用のEVモデルを年内にほぼ同時期に投入する計画を持つ。
2012年9月、日本の尖閣諸島の国有化を巡る領有権争い、危機を経験した日本車メーカーは回復段階を超え、エコカー市場にまで戦線を拡大している。
中国政府は2035年に新車販売の50%を電気自動車(EV)とする新エネルギー車(NEV)とし、残りの50%を占めるガソリン車はすべてハイブリッド車(HV)にする方針を示している。
HVに強みを持つ日本車が中国で全盛期を迎えるとの見通しが示されている。
<尖閣問題に「より良い車投入」で対応>
尖閣問題の当時、中国では日本車に対する破壊行為や放火、運転者の暴行など反日デモが続き、販売台数は半減した。
その間に韓国勢やVW・GMが販売シェアを拡大させたものの、トヨタ、ホンダなどは車両被害金額の保険限度超過分を負担する「顧客ゼロ負担制」を導入し、迅速な修理を約束。品質面からも中古車価格が高く設定され、ディーラーの協力と日本車ファンの消費者により徐々に回復させてきた。
日本のメーカーは尖閣問題から、日本でのモデルをそのまま持ち込むのではなく、中国人が受け入れるモデルを月々に投入する努力もしてきた。
ホンダは2013年から3年間に、中国仕様車を10モデル投入、トヨタも年に3~5モデルの新型セダン、スポーツタイプ多目的車(SUV)を相次いで発売した。
日本車メーカーは部品の共用化、現地化を通じ、価格競争力も確保した。
ホンダは、徹底した部品現地化を通じ、コストを削減。コストパフォーマンスが高いSUV「CR-V」を投入した。
CR-Vは極寒地の走行でエンジンが止まる試練に陥りタタかれたが、ほかの車両が売れ、全体では前年並みの売上台数を確保、ユーザーの根強いホンダファンに支えられた。(改修したCR-Vモデルを投入して販売もその後回復させている)
トヨタは2015年、部品共用化率を高めたTNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)と呼ばれる新たな設計方式を構築し、コストを大幅に削減した。
日本メーカーは中国で、焦ったり一喜一憂したりせず、ブランドと技術に集中し、危機を克服した。
<技術開放>
中国にHV技術を開放し、急成長するエコカー市場を主導してきたことも日本車復活の鍵となった。
トヨタは技術流出懸念でHVは当初輸出に限定していたが、2005年にHV「プリウス」の中国現地生産を決断。2013年には江蘇省に完成したトヨタの研究開発センターを通じ、HV技術の現地化を推進した。
ホンダも2012年から提携パートナーにHVの重要技術を開放した。
トヨタは、中国のHV市場を育成するため、かなり前から取り組んだ。中国政府は広い大陸でEVだけではカーボンニュートラル(炭素中立)の達成は難しいとみて、HVを内燃機関車の代案と認識している。
トヨタは、中国では一時HVがエコカーから外されたこともあり、中国の石炭火力発電によるEV走行は逆にCO2を増加させると説明し続けた。HV製造工場に李克強首相が訪問し、さらにそれが受け入れられるものとなり、HVがエコカーとして再認識された。
トヨタは2014年に水素自動車の特許も開放している。
中国は、「中国2025」により「中国で生産する製品は中国で部品部材を作ろう」という国家構想を持つものの、まだ日本の素材・設備・部品を輸入しなければならず、米国との対立が激化するほどに、孤立を避けるために日本と技術提携を強化し、部品部材の日本メーカーも現地生産を推進し、日本車もその恩恵を受けている。
現在の日本自動車メーカーの躍進は、一長一短には訪れることなく、尖閣問題の危機をバネにして中国に溶け込んだことの成果がここにきて確実に現れてきているとえる。
なお、2021年は半導体不足もあり、
ホンダは、中国での生産は9年ぶりとなる前年割れ(▲4.1%減)の1,576,210台。
トヨタの生産台数は、前年比7.3%増の1,649,653台(2011年の倍数)となっている。これからもトヨタは中国に力を入れていることがわかる。
両社のレクサスとアキュラシリーズは日本などから輸出して中国で販売されており、上記の中国での生産台数と販売台数は異なる。
以上、