アイコン バイデン政権期待のEV販売増に黄色信号


EV販売に黄色信号が灯っている。車両価格に大きなウエイトを占める二次電池価格の材料=資源価格が、2021年のEV販売の急成長と、今般のロシア軍のウクライナ侵攻という地勢学的な問題が生じ、急騰から暴騰、EV販売価格をすでに大幅に値上げする動きとなっている。

現在中国以外主流を占めている三元系バッテリーに使用するリチウム、ニッケル、コバルトがいずれも暴騰している。
ニッケル価格は、新コロナ前の2019年12月の13,950ドルから今年3月11日には48,241ドルまで上昇、21年の年初からしても2.7倍も上昇している。
今年年初までは、EV(電気自動車)販売台数が急激に伸び、バッテリー需要が上昇したことに起因していた。ニッケルの含有量やバッテリーの搭載量を多くするほどEVの走行距離も伸びる。
しかし、ここにきて、今年2月24日、ロシア軍がウクライナに侵攻、これを受けロシアに対する欧米日等からの経済制裁が本格化、ニッケル価格はさらに大幅に上昇している。ロシアは全世界のニッケル供給量の約10%を占めている。
供給不足が深刻化するという見通しにより、ニッケルの今月1日の価格は24,606ドル、それが48,241ドルまで2倍の価格上昇となっている。

 

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ニッケル価格の高騰により、隣国で「第二の半導体産業」と期待されてきたバッテリー業界は直撃を受けている。
LGエネルギーソリューション(LG-ES)やSKオン、サムスンSDIの隣国のバッテリー3社はもとより、バッテリー素材を供給するメーカーに至るまで、全ての生産体系への衝撃が続いている。

市場調査会社のSNEリサーチは、バッテリー3社のニッケル需要を今年は9万1000トン、来年は13万4000トンと予想している。2030年には、今年の7倍を超える64万8000トンが必要になると予想している。

ニッケルを筆頭にさらに高価なコバルト価格も同じように急上昇している。元々コバルトのバッテリー原価に占めるコストは大きく、コバルトフリー製品が台頭してきているほど。
こうしたEVバッテリー原材料のいずれも価格が急騰している。

こうしたことを受け、隣国政府は、現在獄中の李明博大統領当時、世界の鉱物資源やエネルギー資源開発に大規模国家投資、しかし、隣国では失敗策として、こうした投資の清算を行ってきているが、ここにきて、隣国政府が権益を持つ海外のニッケル鉱山の売却方針を見直すことを決定している。

ロシア産ニッケルは市場の約10%、ニッケル市場そのものがEV向けなどで急拡大局面にあり、ロシア産が禁輸ともなれば、需給バランスがさらに崩れるとして、3月に入ってから暴騰相場。

このほかにもバッテリー関連の銅、アルミ、リチウム、コバルトなど主要原材料価格が一斉に暴騰、EVのモーターに欠かせない永久磁石のネオジウムも急騰している。
EV含め電子産業に影響を及ぼす半導体製造用のネオンなど原材料もロシアやウクライナ産が影響を及ぼすとされている。

電気自動車生産業界は、原油高を朗報だと捉えていた。
しかし、ここに来てEV販売価格の上昇は避けられなくなっており、エンジン車との価格差がさらに拡大、高額所得者向けの高級EVは別にしても、大衆向けEVの需要鈍化は必至とみられている。すでにテスラガ18%値上げするなど車両販売価格を大幅に引き上げてきている。

車両販売価格に占めるバッテリー比率は2/5~3/5程度(走行距離を伸ばすためのバッテリー搭載量により異なる)とされ、そのバッテリーコストに占める材料費の割合は70~80%とされている。主要原材料価格が上がればバッテリー価格も共に上昇する。
特に隣国勢のLG-ES)やSKオン、サムスンSDIが主生産している三元系(NCM/ニッケル、コバルト、マンガン)バッテリーの原材料価格の上昇が目立ち原価負担は大きくなっている。

自動車メーカーとの長期契約では、バッテリー納品価格は原材料価格に連動する内容となっており、EV車両の販売価格の上昇は避けられず、EV販売台数の鈍化、想定より需要減ともなれば、現在、隣国勢3社は世界のあちこちで新規工場建設計画を有しているものの、見直しを迫られる可能性もある。

EV用バッテリー
マンガン酸リチウム、
リン酸鉄リチウムLFP系(中国勢CATL/BYD)/コバルトフリー=安価
三元系=NMC系
三元系=NCM系(隣国3社)
ニッケル系=NCA系、
(二次バッテリーは自動車用だけではなく家庭用電化製品用・産業用充電器が急拡大している)

隣国勢は日本の3元系リチウムイオンバッテリーを進化させ、現在、欧米の自動車メーカーから引っ張りだこになっているが、SKはLGをパクリ、建設中の米国工場で生産できなくなることから米バイキン政権が仲介し2000億円あまりで和解(製造方法、独自開発するには5~10年必要との米ITC見解)、ここに来てCATLが製造方法を変え走行距離を伸ばした、高価なコバルトを使用しないリン酸鉄リチウム系バッテリーを開発、ベンツやテスラなど欧米メーカーが飛びつくと、韓国勢もすぐさま開発に乗り出している。
さらに、パナソニックが高出力の円筒形の4680電池を開発し、和歌山県に工場建設すると報じられると、すかさずLG-ESが4680電池の開発に乗り出すと報じられている。なんと忙しいことか、自ら開発する、さらに進化させる能力にはもう限界があるのだろうか。


スクロール→

車両用バッテリー・モーター永久磁石用などの資源の狂乱相場

 

相場

 

 

 

19/12.

21年初

22年初

3/11

21年初比

2.8177

2.7795

4.4215

4.6095

65.8%

亜鉛

2,275.50

2,829.00

3,604.00

3,869.00

36.8%

アルミ

1,780.50

2,040.30

2,839.00

3,472.00

70.2%

ニッケル

13,950.00

17,349.50

20,880.50

48,241.00

178.1%

リチウム

50,000

70,500

277,500

493,500

600.0%

コバルト

32,750

32,190

70,500

82,000

154.7%

マグネシウム

15,250

16,150

50,000

45,000

178.6%

ネオジウム

364,500

627,500

1,110,000

1,450,000

131.1%

パラジウム

1,941.50

2,448.30

1,825.30

2,934.00

19.8%

 

単位

USD/Lbs

亜鉛

USD/T

アルミ

USD/T

ニッケル

USD/T

リチウム

CNY/T

コバルト

USD/T

マグネシウム

CNY/T

ネオジウム

CNY/T

パラジウム

USD/t.oz

 

[ 2022年3月11日 ]

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