アイコン 上海ロックダウン 20日にも工場再開へ 3期目に立ちはだかる新コロナ


中国では16日発表された金曜日の感染者数は3,867人、うち3,590人は上海市だった。また、別途無発症者数は全土で20,813人、うち上海市は19,923人となっている。上海での基本的な封鎖は5月まで続くと見られるものの、物流は改善される方向にあるという。すでに上海市内の一部では規制が緩和されている。

上海ロックダウンの背景と今後
1、禁断の3期目を目指す習近平国家主席の「ゼロコロナ」政策死守

中国では上海などでオミクロン株の感染拡大が続き、先月末に開始されたロックダウン、当初2400万市民全員検査のため、数日とされたロックダウンが感染者増で長期化している。

ロックダウンしているにもかかわらず感染者が増加しているのはオミクロン株特有の無発症者や軽発症者が多く、上海市民全員を検査したところで、検体採取から検査結果が出るまでタイムラグがあり、同株は感染力が強く、その間に家族内感染など広がっていることにある。
また、人から人への感染だけではなく、モノに付着したウイルスから感染もあり、先にロックダウンした吉林省の例でも感染者が「ゼロ」になるまでの相当な期間を要している(吉林省ではその後、無発症感染者が多数発生している)。

 

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中国各地や上海だけでも数万人規模の臨時病院を新たに建設したり、施設を改修して設けている。これはゼロコロナ策=「動態清零」、市中に感染者がいなくなることで、濃厚接触者なども隔離施設に入れ、そこで実際感染しても許容するというもの。隔離施設内で感染が増加しても管理された中であり、市中での感染は減り、規制を緩和できるという「動態清零」の防疫システムを採用する。
上海市は、隔離区域外での感染拡大を20日までに封じ込める目標を設定した。
住民の不満が高まる中、封鎖を緩和し、市民生活の正常化につなげたい考え。
上海の共産党幹部の16日の演説によると、「目標達成には、検査や陽性者の隔離施設への移動を加速する」ことが必要になるという。
  こうした移動が行われた区域から、順次、工場などの再開が行われるものと見られる。しかし、物流の混乱があり、生産が軌道に乗るにはかなりの時間を要するものと見られる。

2、経済への影響
中国では輸入物についてもウイルス検査を実施、これにより入管手続きが大幅に遅滞し、内外資工場や倉庫への搬入が大幅に遅れている。通常の2日前後の通関が3倍の日数がかかっているという。
上海の各ターミナル港の荷役置場は100%の満杯状態、冷凍保管倉庫も満杯で冷凍コンテナの受け入れも中断されているという。

上海ではほとんどマヒ状態、港の検疫・荷役作業は作業員数も限られてもおり、大幅に遅滞している。通常2~3日かかる荷役が1週間以上かかっており、適時にモノの移動ができず、国内だけにとどまらず、輸出も2~3日での船舶への移動が10日以上かかっており、各国ではサプライチェーン問題も発生している。
中国で一部部品を生産している三菱自動車やマツダは部品入荷が遅れ、すでに工場の一時休業も生じている。

また、船舶の位置情報によると、東シナ海には大量の荷役を待つ船舶が滞留しており、すでに全海域に至っているほど。石油タンカーも通常の倍のタンカーが荷役待ちに港外に滞留しているという。

各地から上海市に入るトラックも厳重な検疫検査で制限されており、長蛇の列のトラックが道路沿いにとどまっている。
検疫を受け上海市内に入れても運転手はドアが封印され、車両から出ることもできず、荷役作業員により積み下ろしは行われ、また、上海から市外の工場などへ運んだトラックの運転手はその後2週間隔離されることから、今では上海行きを断る運転手も多発しているという。そのためトラック運賃も高騰している。
こうした中国内の物流事情も国際間のサプライチェーン問題が生じている大きな一因にもなっている。

上海市では感染者が少ない一部の区では規制が緩和されているというが、全体の2割程度にとどまるという。
また、上海市の南方、浙江省の寧波市でも感染者が発生、港湾およびトラック検疫強化策を取っている。

中国では感染者が出た場合14日間の隔離期間を設けていたが、最近、都市によって小売店舗、オフィスビル、集合住宅などを対象に10日間に短縮している。

<上海市の生産再開計画>
上海市経済・情報化委員会がソーシャルメディア微信に掲載した声明によると、「企業は従業員が働く現場を職住一体とし定期的に検査するクローズド型管理の計画を立てる」必要があるほか、「生産再開の承認を得るため地域および市レベルで新型コロナ管理当局に申請」しなければならない。ただ、生産再開の日程表は示していない。

<上海市の生産再開計画>によると、
「工場は部分ごとに場所を分ける」必要があり、
「全従業員が決められた場所で作業および生活」しなければならないほか、
「別分野で働く人との直接的な接触は可能な限り減らす」ことが求められ、
「訪問者も厳しく制限」される。
こうした計画書の申請による認可は4月20日にも行われる見通しと報道があるが、まだわからない。
すでに外資企業の出身国やサプライチェーンにしている国からの早期生産再開要請が続いている。

3、物価の今後の動向
中国ではインフレ率((2月⇒0.9%⇒3月1.5%))も食料インフレ率(2月-3.9%⇒3月-1.5%)も水面下であるが、新コロナによる各地でのロックダウンや不動産問題を抱えGDPは落ちてきており、輸入物価は高騰、生産者物価指数(113.4)と高止まり、食料等日常品が値上がりに転じれば、国民の不満が増幅される。政権は力で抑え込もうがその不満は水面下で、上層部や派閥の権力抗争に発展する可能性もある。

ワクチン問題
中国製ワクチンは米ファイザーやモデルナのようなmRNA型ではなく不活性化ワクチン、オミクロン株に対しては脆弱で免疫逃避率が高く、ワクチンの接種率が高くても感染が進む一因にもなっていると専門家は指摘している。

4、対露制裁問題
中国は、2014年の米国の露制裁以来、ロシアと緊密な関係を構築している。当時の露制裁ではロシア経済はどん底に落ち込んだが、中国がロシア産天然ガスをパイプラインで長期購入する契約を締結し、その後ロシア経済は回復を見ていた。

今回の制裁では、米制裁に加え欧州の対露強硬国が制裁をリードしており、中国に対して対露制裁に加わるように強くけん制している。
しかし、中国は侵攻には反対だが、露制裁にはこれまでの関係もあり消極的。欧州の対中批判が高まってきている。

(対露制裁では欧州=EUも東欧の対露強硬国がリード、エネルギーの対露依存度が高い国では制裁は限られているものの、米国の裏表からのけん制もあり、ドイツなどは今年中の段階的輸入停止を表明、これによりエネルギー価格、特に天然ガス価格は空前の高さを更新し続けている。原油価格もIEAの備蓄原油放出でいったん93ドル台まで下がったものの1週間も経たずして再び106ドル台まで上昇している。対露制裁では一時130ドルを突破したが、その後、上海ロックダウンにより調整されたものの、ロックダウンが解除された場合、再び120ドル以上まで上昇することも懸念されている)

こうした中国に対してEUが制裁を下す可能性もあり、対米関係が複雑化する中、欧州との関係を拗らせたくない中国が対露制裁を強化せずやり過ごせるかは、3期目を目指す習国家主席にとって大きなカケとなっている。

4月24日のフランス大統領選挙の決戦投票も注目されている。
EUと緻密な関係にあるNATOから脱退すると宣言している極右政党のルペン氏が物価高騰に怒る貧困層・移民層・労働者層などからも支持され、選挙結果の行方はわからなくなってきている。

中国は欧州との関係が悪化すれば、すでに米国とはトランプ政権時代から悪化しており、中国にとっても経済的に打撃になる。そうした中国制裁が行使されないようギリギリの欧州対策が行われているものと見られる。

以上の4点から習近平国家主席が3期目に安定して突入できるか、3期目が決定する秋まで、新コロナ・オミクロン株感染の鎮静化、物価高騰抑制、欧州からの制裁回避は必須条件となっているようだ。

追、
まだ10万人以上の新コロナ感染者が発生し続けている隣国では、ピークより感染者が大幅に減少したとして4月18日からほとんどの規制を撤廃する。現在飲食店の営業は24時までに規制されているが、撤廃の前祝で14日の金曜日の遊興街の夜はごった返し状態だったという。
これまで感染者が急増する中での数度にわたる規制緩和措置は日本から見ても異常、中国から見た場合どうだろうか。
当然、中国では隣国からの輸入品について入管のウイルス検疫を強化させているようだ。近距離船舶輸送の場合、中国当局は入管手続きを遅滞させることで、付着したウイルスの不活性化にもつながると見ているようだ。

[ 2022年4月18日 ]

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