アイコン EV革命と自動車メーカーを襲うサプライチェーン問題 操業停止続く


日産がEV革命を叫んで2010年。そのEV革命は10年後の2020年に新コロナと共にやってきた。

しかし、車両に使用される半導体不足、新コロナ惨禍によるセットメーカーの大幅生産減、さらに中国のロックダウンによる生産・輸出遅滞による部品不足が世界の自動車メーカーを襲っている。

特に、EVにはより多くの半導体が用いられており、2010年10月旭化成半導体工場の火災から始まった半導体不足は、その後、各メーカーや商社が各種半導体の買いだめに走り、すでに1年半以上続いている。半導体の生産がある程度回復してもパッケージ化が必要、セットメーカーが新コロナでダウンするケースもあった。さらにEVが想定以上に販売されており、半導体不足に拍車をかけてもいる。
また、EVより部品点数が多い内燃機関車も部品一つでも不足すれば生産ができず、3月末からの中国上海市の新コロナロックダウンが長引き、大きな影響を受けている。やっとほとんど解除されたが一部の地区では再び外出規制が発令されたとのニュースも流れている。上海は中国最大の輸出入港でもあり、内陸部で生産された部品の輸出が滞っている。

 

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日本メーカーはこれまで東日本大震災など再々の国内でのサプライチェーン問題を抱え、トヨタ自身がジャストインタイム生産方式を一部放棄し、ストック方式に転じている。今回は世界規模で新コロナ事態が発生、サプライチェーンもグローバル化しており、特に日本の部品メーカーは海外生産や海外生産材を使う企業が多く、自動車メーカーは部品不足により操業停止を何回も繰り返してきている。

代表的例ではワイヤーハーネス(自動車内の電線を束ねたもの)は低賃金地での人海戦術により生産されている。これまで中国の地方やウクライナなど低賃金国で生産されている。今回、その両国で、生産・供給問題が発生、すでに世界中のメーカーに影響を与えている。

独部品メーカーのレオニ社は、こうした問題を受け、自動車メーカーと共同しワイヤーハーネスの自動生産方式を構築中だという。

EV革命は部品会社に至るまで、これまで100年かかって進化させてきた生産方法をまったく異なる次元で再構築されようとしている。
米ベンチャーのセルリンクはEV向けに、ワイヤーハーネスを大きく分類して中央演算方式によりモジュール化に成功、人海戦術ではなく完全自動生産方式で生産、車への搭載が簡単な「フレックスハーネス」を開発し、すでに生産している。
各種車両への切れ変えもそれぞれの車種の設計を組み込んだソフトへ変更することにより10分程度で可能だという。
新車に対応するにも2週間程度でソフトが作成され生産対応可、これまで平均26週間かかっていた生産までのリードタイムが画期的に短縮化されている。すでに多くのメーカーや投資ファンドから資金調達し新たな大工場を建設中だという。
同社は、すでに百万台あまりに供給しテスラも採用しているという、EV革命に伴いワイヤーハーネス革命も始まっている。

自動車生産はロボット化が進んでいるが、部品はまだまだローテク対応している分野も多い。それは単にロボットを投入する投資より、人海戦術がまだ安価だという理由もある。 
しかし、世界の新興国の賃金は上昇し続けており、世界の自動車メーカーに供給している日本のハーネスメーカー(かつて談合により世界の自動車生産国から処分された)は、それに甘んじてきており、早期に切り替えなければ大打撃を受けることになる。

経団連の大手製造業の考え方が生産効率ではなく、画一的に日本で賃金を上昇させるならば、日本の生産工場を中国や東南アジアの低賃金国へ工場移転するしかないという時代錯誤な考え方を継続させいることにある。
バブル崩壊後・リーマンショック後、ロボット化を進めず、生産効率を上げることをせず、中国や東南アジアへ工場を移転させた結果、EV部品革命により製品や生産システムの老体化が浮き彫りにされ、このままでは淘汰されることになる。

中国は賃金上昇が続き、不況ともなると大手製造業者は、生産効率を上げるため逆にロボット化を進めた。その恩恵は日本のロボット企業(ファナック・安川電機など)の売上高と利益に大きく貢献してきた。結果、こうした生産効率と品質に裏付けられ、米中貿易戦争に関係なく中国製品が米経済を支えている現実がある。
そうして米国からもたらされる中国への利益が、一帯一路覇権戦略に投じられ、新東西の政治的対立を生み出している元凶でもある。


日本は、小泉政権下、正規雇用を非正規雇用に置き換えたことにより、製造業は多くの利益を出したが、そうした利益は開発研究や自動化などの投資に向けられずバブル崩壊後の弱まった財務体質改善の内部留保にむけられた。また、アベノミクス下では空前の利益を出したにもかかわらず投資せず、賃金も上げず、内部蓄積・配当や株主還元策に利益を費消させ、蓋を開ければ大手製造業の多くが不正の山を築き上げている。
不正が介入できないデジタル化を要するところも進めず、捏造データは恣意どころか鉛筆での改ざんだらけになっている。
大手製造業の経営者は、自らファナックの最新工場を機会があれば見る必要があろう。

EVは眼下の燃料費高騰により、世界では2030年より早まり2028年には生産台数の過半を占めると予想されている。
研究開発に多くの時間がかかり、開発しても試験するにも多くの時間がかかり、老害の官庁のように、生産システムを構築するにも時間がかかり、それも石の橋をたたきながら渡り、すべてがかかりすぎる日本の開発システムそのものが老体化のままそうした時間に突入しようとしている。
短時間で開発し生産できるようにするためには、M&Aも含め膨大な投資費用がかかる。それを実践しているのが韓国の財閥企業であり、リスクもあり、在任期間中、何ごとなきよう、しないのが過去の遺産を喰いづぶし続ける日本のサラリーマン経営者たちだろうか。

[ 2022年6月 6日 ]

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