米国債10年債利回り上昇と 円安
米国はインフレ退治に金利を上昇させ続けているが、その舵取りは非常に難しくなってきている。すでに多くの分野で金利上昇の影響を受けた経済指標が現れてきているが、肝心の雇用や賃金など労働係数が堅調なため購買力が強く、エネルギー関連を除けばインフレはまだ収まるどころか上昇が続いている。
米連邦準備理事会(FRB)が15日発表した8月の鉱工業生産指数は、製造業生産指数が前月比0.1%上昇した。前月は0.6%上昇、市場予想は変わらずだった。
自動車が低下した一方、機械やコンピューター、電子製品が堅調だった。
8月の前年同月比は3.3%上昇だった。
米国経済GDPの11.9%を占める製造業は、消費者の支出がモノからサービスに回帰するにつれ減速している。耐久財は横ばい。
経済は、原材料⇒加工⇒製品⇒流通とその工程で、輸入品にしても買付⇒物流⇒流通に、労働も製造-物量-流通サービスでタイムラグがあり、産業ごとにそれも異なり、金融政策で一挙にインフレ退治するには、リーマンショックのような処方を採らない限り不可能だろう。
米政権はインフレ退治に景気を大きく落ち込ませず、ソフトランディングさせ、雇用に大きな影響を与えない方策を採っているようだが、それは不可能。
米国は新コロナを受け入れたように、ある程度インフレを許容するしかないだろう。疲弊し続ける日本と異なり賃金も上昇しており程度の問題でもある。
CPI指数が高次元でもインフレが落ち着けば、金利も落ち着く。
ただ、そうして金利が落ち着けば、国家間の商品の価格差が拡大し、日本は急激に円高に進むおそれもある。マクドナルドのビッグマック指数を見ればそれは現在でも判然としている。
しかし、現在の日本の長期にわたる異常な金融政策は、企業利経営が良好にもかかわらず国債残を増加させ続けており、その判断は非常に難しく、信用不安と捉えるならば円はさらに暴落する(新コロナでさらに急増させている)。
貿易も輸出は円換算では増加しているが、円安を換算した場合伸びていない=ドル換算数値では伸びていない。
<米鉱工業生産指数▲0.2%低下>
機械、コンピューター、電子製品、航空宇宙、輸送用機器が少なくとも1.0%上昇となったが、木材や家具が▲1%超低下した。非耐久消費財は0.2%上昇した。
5ヶ月連続で上昇していた鉱業指数は横ばい。公益は▲2.3%低下した。
全体の鉱工業生産指数は前月比で▲0.2%低下。予想は横ばいだった。7月は0.5%上昇していた。
製造業の設備稼働率は79.6%で横ばい。長期平均を1.4%ポイント上回った。鉱工業全体では前月から▲0.2%ポイント低下して80.0%。1972年から2021年の平均を0.4%ポイント上回った。
<金利・円安の動向>
15日には2011年来の高値となった米国債10年もの利回りは、3.4590%になったが、16日は若干落ち3.4490%(米国では15日)となっている。
日本の10年もの国債の利回り金利は、日銀の買いオペにより0.25%以上にはしない政策を採り続けており、米国債と日本国債の利回り金利差の拡大が、円安の判断材料となり、金利差が開くほどに円安は拡大している。
米国ではまだインフレが進んでおり、その退治に来週開催される米FOMCでは、0.75%~近時の最高の1.0%の上げ幅がコンセンサスとなっている。
米金利は3月に0.25%に引き上げ0.5%にし、その後もインフレの上昇に対して引き上げ続け現行2.5%となっている。
現在の米国債10年もの利回りが、0.75%~1.00%の上昇を織り込み済みであるのか、実際蓋を開けにければわからない。
金利上昇、経済指数の悪化により米国の株式市場は低迷しており、商品先物相場も原油価格に見られるように大幅に下げ、仮想通過も国債利回り上昇し低迷、行き場のない投機資金が為替相場に一極集中しており、円安がどうなるのかは、日本の金融政策当局の動き次第となっている。
<アベノミクス金融政策にメスか>
それを率いる日本の鈴木財務大臣は、実際の物価上昇(8月の食料インフレ率は4.4%)、岸田政権の支持率低下にもうたまらんとアベノミクス下の大規模金融緩和以来放置していた金融政策を修正する動きに初めて言及した。
一方、金融政策の本家であるAB氏と仲良しだった日銀黒田丸は、2013年に2年でCPIを2%にすると公約して就任したものの、8年経っても至らず、2022年に国際商品価格の急上昇、米金利上昇の反動での円安によりやっと2%を越える異常さに、今になって、「企業は体質を変えよ」と財界を罵り始めている。
米国では昨年10月からインフレが急上昇、対応する金融政策は、それまでの大規模金融緩和をテーパーリング、そして今年3月になり金利を引き上げはじめた推移がある。
日本は黒田丸が日本国債と株式を市場から買い集めて市場に大金融緩をなしている。いまだそのままだ。
すべてはアベノミクス政権下、企業が空前の利益を出していたにもかかわらず、政策的に賃金を上げさせず、消費税増税・社会保険料などで国民から収奪し続け、国民の購買力が脆弱化し続けた結果であり、日銀の金融政策は政府の経済政策とは関係ないとは言えないAB蜜月時代の結果となっている。AB政権の労働政策は左端国化への総仕上げだったのだろうか。
↓ここ3ヶ月のインフレ率の推移
コアインフレはエネルギーと食料を除いたもの
スクロール→
直近3ヶ月の米国のインフレ率推移 |
|||
米国 |
8月 |
7月 |
6月 |
インフレ |
8.3 |
8.5 |
9.1 |
コアインフレ |
6.3 |
5.9 |
5.9 |
食料インフレ |
11.4 |
10.9 |
10.4 |
エネルギーインフレ |
23.8 |
32.9 |
41.6 |
家賃インフレ |
6.24 |
5.70 |
5.61 |
サービスインフレ |
6.81 |
6.25 |
6.22 |
期待インフレ |
5.7 |
6.2 |
6.8 |
消費者物価指数CPI |
296.1 |
296.2 |
296.3 |
賃金・時間 |
27.68 |
27.57 |
27.45 |
就業数/万人 |
15,873 |
15,829 |
|