アイコン 現代自動車 EV工場の米進出 撤回も含み持たせる IRA法に揺さぶり


現代自動車は2025年生産開始予定で現在韓国人が多いジョージア州に、投資額55.4億ドルを投じEV工場の建設を10月開始している。
さらに現代モービスが9.2億ドルを投じ、EV用電力システムと現代が開発した統合充電システム(ICCU)の製造工場を建設することも発表している(短時間充電が可能な高出力用充電スタンド向け設備機器と見られる)。

現代自動車のロバート・フッド・ワシントン事務所政府業務担当副社長は15日、米シンクタンク・ウッドロウ・ウィルソンセンターが主催したセミナーで、「(米国内での電気自動車の)販売が伸
びなければ、(ジョージア州の)工場が経済的に妥当なのか質問が出始めるだろう」と述べた。

米法制処次官補出身のフード副社長は、「IRAのため、現代自動車がジョージア州の電気自動車工場への投資を取り消したり縮小したりする可能性があるか」という質問に対し、「当社が引き続き注視しなければならない経済的決定だ」とし、このように述べた。フード副社長は、「雇用および生産目標を達成できなければ、ジョージア州でペナルティを科されることになる」とし、「IRAにより現代自動車の成長に引き続き被害を受けるなら、私たちがどこに行くか真剣に判断せざるを得ないだろう」と述べた。それと共に、「メキシコは、人件費と生産費など、すべてのものがはるかに安い。会社の方でその可能性を再び検討するかどうかは、見守らなければならない」と話した。

 

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ただ、フード氏は、米市場は非常に重要であり、起亜自動車のジョージア工場と現代自動車のアラバマ工場は成功したとし、「現代自動車は米国を離れたくない。米国が望んでいた投資をするという理由で罰しないでほしい、というのが私たちの要請だ」と話した。(現代と起亜は米国でそれぞれ1ヶ所しか工場を持たず、韓国からの輸出に依存している。起亜はメキシコにも年産50万台の新しい工場を有し、現代車種も一部製造している)

現代自動車の本社では、フード副社長の発言と関連し、「米国市場はあまりにも重要であるため、公正な競争をさせてほしいと強調することから出たものだ」と拡大解釈を警戒する雰囲気。
現代自動車のジョージア州の電気自動車専用工場は、すでに2ヶ月前に着工式を行い、2025年の完成を目標に工事を開始している。

ジョージア州では中間選挙の上院の決選投票で民主党が勝利し、民主党は気を良くしており、IRA法のFTA条項を利用して、今回の現代自動車の脅迫に屈服するものと見られる(ただし、知事は共和党)。

ホワイトハウスは先日、米工場進出までする韓国のEVに対して早期に解決すると発表したが、それには時間がかかるとして、いつまでに韓国製EVを補助金対象として認めるかは、EU勢もおり検討時間が必要として時期を明確にしなかった。

IRA法は1月から執行され、7500ドル(約100万円相当/135円)の税控除という助成制度が設けられるが、対象は米国産EVに限るとしている。

そうしたこともあるのか、米メーカーが一斉にEV販売を開始していることからか、現代勢のEVは下半期に販売が急減している。
販売は原則、納車時点であり、IRA法にかかわらず全体ではEVが売れており、韓国勢EVがなぜ失速したのか不明な点も多い。
1月になればそうした問題に加え、IRA補助がなければ販売に大きなペナルティとなり、さらに売れなくなる可能性が高い。
今回のフード氏の発言は、早期にIRA法の適用を促すために、ホワイトハウスをけん制(=脅し)したものとみられる。

ジョージア州では12月8日、現代車グループとSKオンが新たにEV用バッテリー合弁工場を建設すると発表している。総投資額40~50億ドル、雇用効果3500人、2025年稼動を予定。現代のジョージア新工場のEVに対して納品する予定。
IRA法は厄介でEV用バッテリーの材料についても北米産などに限定している。現在の韓国勢のEV用バッテリーの材料の7割以上は中国産でもある。
IRA法は2016年の中国並みの国産EV保護法でもある。当時韓国勢3社は中国バッテリー市場からパージされた。

民主党はジョージア州の上院選挙で韓国系がどれほど民主党候補に投票したのかも精査しているものと見られる。ジョージア州ばかりへの投資は民主党政権にとって面白くないのかもしれない。米進出の韓国系の統一教会は共和党支持でもある。


米IRA法は、
7500ドルの補助金対象車について、EVバッテリー主材料のコバルトなどの鉱物を、米国または米国と自由貿易協定(FTA)を締結した国から少なくとも40%以上の調達を義務付け、それも2027年には80%まで規定が強化される。
韓国はインドネシアからニッケルを調達しようとしているが、インドネシアのニッケル鉱山はほとんど中国資本が携わっている。米国とインドネシアはFTAなど提携しておらず、中国は鉱石を中国へ輸出して精錬し、製品化している。そのため現行もニッケルの主輸入先は中国となっている。
陽極材のリチウムにしても、現行、中国はオーストラリアでリチウム鉱石を採掘し、中国へ移送して精錬して製品化したものを韓国勢は輸入して材料としている。ニッケルにしても主要鉱山の開発と生産は中国企業が行っている。

米国が、中国がかかわる材料を暗に認めるかどうか、それによって米国に進出したEV用バッテリー韓国勢3社のバッテリーは、米IRA法に抵触することになる。
当基準を厳格に運用した場合、現行、違反しないEVはほとんどないものと見られる。

米国は、蓄電池、EVの開発や生産への補助金として600億ドル(約8.8兆円)以上を投資、さらに全米50州の7.5万マイル(約12万km)にわたる州間高速道路網に超急速充電器を整備し、EVでも従来の内燃機関車と同等以上の利便性を確保した上で、2030年に新車に占めるEVのシェアを50%以上まで引き上げることを目指している。

インフレ抑制法で補助金(税額控除)の対象となる主な要件
(1)価格が5.5万ドル(バンやSUV、ピックアップトラックは8万ドル)下回ること
(2)車両の最終組立が北米(米国、カナダ、メキシコ)で行われていること
(3)電池材料の重要鉱物のうち、調達価格の40%が自由貿易協定(FTA)を結ぶ国で採掘あるいは精製されるか、北米でリサイクルされていること。2027年には80%。
(4)電池用部品の50%が北米で製造されていること。2029年に100%まで段階的に引き上げる。GMもFORDも移行期間が必要としている。テスラは達成すると見られている。

以上はトランプ以上の経済保護主義のMade in USA条項となっている。米国産テスラ車にこれまで補助金を出してきたドイツが反発、シュルツ首相と仏マクロン大統領は猛反発している。
また、中国の新エネ車補助金制度、安全性をキーに三元系EV用バッテリーを排除するとともに外資メーカーを排除し、国産メーカーを保護したこととまったく同じ手法となっている。
(結果、中国は現在EV輸出を開始し、すでに50万台あまりを輸出、数年後には数百万台を輸出することになる。将来的には開発途上国に圧倒的ネットワーク(一帯一路世界覇権戦略)を持つ中国の優位性が、車両を先進国の繊維や家電と同じ運命をたどらせることになる。)

韓国は現在、電池材料を中国から調達しているが、ニッケルの最大の生産国であるインドネシアと関係が深く同国からニッケルを調達しようとしている。しかし、インドネシアの有力ニッケル鉱山は中国資本が支配しており、韓国とインドネシアは戦闘機開発を共同で行うなど関係が深く、そうしたことが奏功するか注目される。

インドネシア政府は中国寄りの闘争民主党のジョコ政権(党首:メガワティ元大統領)が安定しており、鉄鉱石や木材のようにいくら国内で付加価値(精錬)を付け材として輸出しようとしても、ニッケルについては、中国のレアアース戦略により、安定している現行政権下では行わないだろう。
ただ、インドネシアに進出した現代EV工場とLGエネソル工場向けは供給されようが、生産開始も2025年で先のこと。それもIRA法はFTA締結国で採掘もしくは精製されたものとしており条件を満たさない。

陽極材のリチウムについては、世界第2位の生産国オーストラリア(南オーストラリア州)では、現地企業がリチア輝石鉱山を採掘し、鉱石を中国へ輸出、中国で精錬・精製し、それを韓国は購入している。
世界最大の生産国のチリの炭酸リチウム塩湖をポスコが買収して開発に当たっているが、大量生産はまだ先の話。
オーストラリア企業の生産分は多くの他社との契約で調達できないだろう。オーストラリアの前労働党政権(2007~2013年/米国はオバマ時代)は、中国と賄賂癒着、中国の言いなりなり、豪ダーウィン港も99年間中国に租借している関係にもある。スリランカの問題だけではない。ダーウィン港に隣接して米空軍基地もある。

リチウムは、生産国がオーストラリアだけに問題ないと見られるが、精製は中国であり、米国が今後問題にする可能性はある。

<米国のFTA締結国>
イスラエル
NAFTA:構成国:米国、カナダ、メキシコ
コロンビア
パナマ
チリ
ペルー
Dominican Republic–Central America Free Trade Agreement:
構成国:米国、コスタリカ、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ニカラグア、ドミニカ共和国
オーストラリア
韓国
シンガポール
オマーン
モロッコ
バーレーン
ヨルダン
以上、

日本勢は日産のEVリーフが米国で生産されており、問題ないと見られている。ほかはトヨタも含め蚊帳の外、世界の趨勢を見、先を判断できるような経営者は日本にはどこを見てもいない。
政治家が省庁が、今頃になって、蓄電池がどうのこうの、いくら過去どうであろうと関係ないこと。政治が選挙で勝つことだけ脳味噌にはないことに尽きる。莫大な公共投資予算を垂れ流し続け、今に生きる勝てば官軍の裏に統一問題もある。

[ 2022年12月20日 ]

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