リチウムイオン二次電池=EV用バッテリー IRA法=インフレ抑制法 ニッケル等の価格推移
米国は貿易保護主義のIRA法=インフレ抑制法に基づくEVに対する補助金制度を1月からスタートさせる。
IRA法=インフレ抑制法で補助金(税額控除)の対象となる主な要件
(1)価格が5.5万ドル(バンやSUV、ピックアップトラックは8万ドル)下回ること
(2)車両の最終組立が北米(米国、カナダ、メキシコ)で行われていること
(3)電池材料の重要鉱物のうち、調達価格の40%が自由貿易協定(FTA)を結ぶ国で採掘あるいは精製されるか、北米でリサイクルされていること。2027年には80%。
(4)電池用部品の50%が北米で製造されていること。2029年に100%まで段階的に引き上げる。GMもFORDも移行期間が必要としている。テスラは達成すると見られている。
リチウムインオン二次電池では、
<3元系>
主流となっている韓国勢の3元系バッテリーはLiNixMnyCozO2 =リチウム.+ニッケル+.コバルト.+マンガンなどを使用している。
正極にコバルト酸リチウムなどのリチウム遷移金属酸化物、負極には銅箔に炭素を粉体皮膜させたものを使用している。
電解質には、炭酸エチレンや炭酸ジエチルなどの有機溶媒 + ヘキサフルオロリン酸リチウム (LiPF6) といったリチウム塩を使用している。
<リン酸鉄型>
高価なコバルトやニッケルを使用しない安価な「リン酸鉄リチウムイオン二次電池」を中国のCATL(世界一のバッテリーメーカー)が、これまで走行距離が200キロ程度と短かったものを、製造方法を変え400キロまで伸ばしたバッテリーを開発、中国勢以外にも日常使用車用にベンツなどがすでに採用されている。
これまでにEV用バッテリーは、充電中や駐車中の炎上問題があり、その後、多くが改善されてきている。
GMに搭載したLGバッテリーでの火災問題もそうした事故がほとんどだった。GMが精査した結果(品質にバラつきがあり、品質が低下した分で問題が生じていたという製造上の欠陥だと結論を出し、当該全車両14万台(GM-VOLT)をリコールした。その費用は1900億円あまりにのぼり、LG7対GM3の負担割合で処理している。(問題は生産会社のLGが問題を発見できなかったことだろうか)
現在、品質の安定性により安全性は向上したようだが、衝突ではまだ多くの問題を抱えている。
自動車の場合、強い衝撃などでリチウムイオン二次電池が破損した場合、5秒で800度まで急上昇し、一瞬にして車両全体を炎が覆い、逃げ遅れることになる。電池は車両下部に大きな面積で設置されており、1ヶ所破損して高熱を発すれば全体へ瞬く間に連鎖し、車両全体が炎上する。
衝突のショックやシートベルトの脱却などに時間を取られれば、命の保証はない。ショックに陥る暇はなく、即脱出するしかない。
最近でも、車両斜め角で衝突した物損事故2件で3人が亡くなっている。
<材料は中国が支配>
IRAの材料40%以上も難しい。コバルトは産出国が限られ、アフリカコンゴの鉱山は中国が開発に当たっている。
3元系リチウムイオン2次電池に使用する希少金属を中国抜きにどうやって手に入れるのかということになる。
米バイデンと米製ハゲタカが価格を吊り上げさせている。これまで中国がEVを普及させてきたが、これほどの上昇は見ていなかった。
<希少金属と環境問題>
中国の電力不足は、今年も生じた。中国は世界最大の石炭生産国であるが、昨年は生産量を通常状態より減らし、一部輸入していた。そうしたところに豪中貿易戦争が生じ、中国が豪州炭の輸入を禁止した。そのため、夏場は乗り切ったものの、電力閑散期であるはずの9月から不足し、電力不足に陥り、計画停電などで製造業に大きな損害を発生させた。中央政府は石炭を最大限採掘するように生産会社に命じ、石炭不足は11月ころには解消され、冬場も乗り切った。しかし、今年の9月も電力不足に陥り、豪政府に石炭輸入を解禁すると伝えたところ、豪政府は、農産物の輸入制裁解除が先決だと突っぱねていた。
IRAで材料について鉱石産出国も対象としたのは、オーストラリアやカナダを意識したものと見られる。過去、米国でさえレアアースは米国の含有鉱物を中国で精製していた。
石炭産出量は増加しているにもかかわらず、電力不足に陥るとは、それほど電力消費量が大きくなっているということを物語っている。
中国国家統計局によると、1~11月の累計石炭生産量は9.7%増、4.1億トン増の40.9億トン、輸入は▲10.1%減、0.2億トン減少の2.6億トン。
昨年より今年は生産+輸入量は3.8億トンあまり増加している。それでいて一時電力不足に陥っていた。今年は特に上海などの新コロナロックダウンも発生し、経済も低迷、電力需要は減っているはずだが、そうはなっていない。
それほど電力需要が大きくなっているのは揚子江上流の水不足による水力発電量の減少に加え、
1~11月までの総発電量は前年比2.1%増の4.6億kwhとなっている。
(石炭価格が高騰したままになっているのは、開発途上国などが原油価格など何でもかんでも高騰したことから、外貨不足に陥り、生活必需の電力を燃料油から高騰しても安価な石炭に切り替えていることにある。世界の発電燃料は石炭が6割、最近は7割まで高まっているものと思われる)。
電力による鉱物溶融・レアアースの抽出需要が増加したためと見られる。鉄精錬は1~11月では1.0%しか増加していない。
スクロール→
コバルト生産ランキング |
||||
|
国 |
トン |
ランク |
|
1 |
コンゴ民主共和国 |
85,856 |
68.0% |
|
2 |
ロシア |
5,700 |
5.0% |
|
3 |
オーストラリア |
5,632 |
5.0% |
|
4 |
キューバ |
5,500 |
4.0% |
|
5 |
カナダ |
4,279 |
3.0% |
|
6 |
フィリピン |
3,600 |
2.9% |
|
7 |
パプア |
2,941 |
2.3% |
|
8 |
中国 |
2,500 |
2.0% |
|
9 |
モロッコ |
2,416 |
1.9% |
|
10 |
ニューカレドニア |
2,197 |
1.7% |
|
|
その他 |
5,379 |
4.3% |
|
|
生産量合計 |
126,000 |
|
|
コバルト埋蔵ランキング |
||||
|
国 |
千トン |
|
|
1 |
コンゴ民主共和国 |
3,500 |
46.1% |
|
2 |
オーストラリア |
1,400 |
18.4% |
|
3 |
インドネシア |
600 |
7.9% |
|
4 |
キューバ |
500 |
6.6% |
|
5 |
フィリピン |
260 |
3.4% |
|
6 |
ロシア |
250 |
3.3% |
|
7 |
カナダ |
220 |
2.9% |
|
8 |
マダガスカル |
100 |
1.3% |
|
9 |
中国 |
80 |
1.1% |
|
10 |
米国 |
69 |
1.9% |
|
|
その他 |
621 |
8.2% |
|
|
埋蔵量合計 |
7,600 |
|
|
出典:U.S. Geological Survey 2020年 |
|
|||
|
||||
(純)リチウム生産ランキング |
||||
|
国 |
トン |
シェア |
|
1 |
オーストラリア |
39,738 |
48.2% |
|
2 |
チリ |
21,481 |
26.0% |
|
3 |
中国 |
13,273 |
16.1% |
|
4 |
アルゼンチン |
5,847 |
7.1% |
|
5 |
ブラジル |
1,420 |
1.7% |
|
6 |
ジンバブエ |
417 |
0.5% |
|
7 |
ポルトガル |
348 |
0.4% |
|
その他 |
|
0 |
0.0% |
|
|
生産量合計 |
82,524 |
|
|
(純)リチウム埋蔵量ランキング |
||||
|
国 |
千トン |
シェア |
|
1 |
チリ |
9,200 |
41.8% |
|
2 |
オーストラリア |
5,700 |
25.9% |
|
3 |
アルゼンチン |
2,200 |
10.0% |
|
4 |
中国 |
1,500 |
6.8% |
|
5 |
米国 |
750 |
3.4% |
|
6 |
ジンバブエ |
220 |
1.0% |
|
7 |
ブラジル |
95 |
0.4% |
|
8 |
ポルトガル |
60 |
0.3% |
|
|
その他 |
2,275 |
10.3% |
|
|
埋蔵量合計 |
22,000 |
|
|
出典:U.S. Geological Survey 2020年 |
|
|||
|
||||
ニッケル生産ランキング |
||||
|
国 |
トン |
ランク |
|
1 |
インドネシア |
816,700 |
32.5% |
|
2 |
フィリピン |
328,372 |
13.1% |
|
3 |
ロシア |
237,300 |
9.5% |
|
4 |
ニューカレドニア |
199,485 |
7.9% |
|
5 |
オーストラリア |
169,344 |
6.7% |
|
6 |
カナダ |
167,243 |
6.6% |
|
7 |
中国 |
105,000 |
4.2% |
|
8 |
ブラジル |
77,100 |
3.1% |
|
9 |
グアテマラ |
68,363 |
2.7% |
|
10 |
キューバ |
50,000 |
2.0% |
|
|
その他 |
291,093 |
11.7% |
|
|
生産量合計 |
2,510,000 |
|
|
ニッケル埋蔵ランキング |
||||
|
国 |
千トン |
|
|
1 |
インドネシア |
21,000 |
22.1% |
|
2 |
オーストラリア |
21,000 |
22.1% |
|
3 |
ブラジル |
16,000 |
16.8% |
|
4 |
ロシア |
7,500 |
7.9% |
|
5 |
フィリピン |
4,800 |
5.1% |
|
6 |
中国 |
2,800 |
2.9% |
|
7 |
カナダ |
2,000 |
2.1% |
|
8 |
米国 |
340 |
0.4% |
|
|
その他 |
19,560 |
20.6% |
|
|
埋蔵量合計 |
95,000 |
|
|
出典:U.S. Geological Survey 2020年実績 |
||||
先物相場 |
コバルト |
リチウム |
ニッケル |
価格 |
USD/T |
CNY/T |
USD/T |
18/3. |
93,750 |
154,500 |
13,253 |
19/12. |
32,750 |
49,500 |
13,950 |
20/6. |
28,500 |
40,500 |
12,758 |
20/12. |
32,190 |
46,500 |
16,719 |
21/3. |
50,500 |
85,000 |
15,897 |
21/6. |
49,680 |
89,000 |
18,212 |
21/9. |
53,380 |
176,000 |
17,946 |
21/12. |
70,500 |
268,500 |
20,698 |
22/3. |
82,000 |
496,500 |
32,932 |
22/6. |
70,460 |
475,500 |
22,643 |
22/9. |
51,955 |
510,500 |
21,012 |
12月18日 |
51,955 |
562,500 |
28,132 |