アイコン 露産液化天然ガス EU輸入40%増 天然ガスパイプライン減少の代賛か


欧州連合(EU)議長国を務めるスペインのリベラ・エネルギー相は、現時点でロシア産の液化天然ガス(LNG)の輸入を禁止する計画はないと述べた。価格高騰の懸念があるとしている。

ロシアはウクライナ侵攻に伴う経済制裁でエネルギー収入が減少しているが、LNGは依然として大きな収入源となっている。
2023年1~7月の欧州のロシア産LNG輸入は、ウクライナ侵攻前の2021年1~7月との比較で40%増加している。

EU加盟国は2027年までにロシア産化石燃料の使用を中止することを目指しており、ロシアからのパイプラインによる天然ガスの輸入も大幅に削減している。
そのため、高価な液化天然ガスを購入し、天然ガス化し、欧州に張り巡らしたパイプラインで供給している。

同相は、ロイター通信に対して「不足感、懸念がある」と昨年の欧州のエネルギー危機に言及している。
「ロシアとウクライナの状況が変わらなければ、遅かれ早かれ、そうした措置(禁止措置)が取られることになるだろう。ただ昨年、混乱した経緯があり、欧州委員会と加盟国は、当面はさらなる混乱を回避するため、事態が平和的な方法でどのように進展するかを見守りたいと考えている」と述べたとロイターが報じている。
以上、

 

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露制裁により、EUのロシアからのパイプラインによる安価な天然ガスの供給は以前より大幅に減少している。
しかし、禁輸している国、大幅減少させている国、購入している国(オーストリア・ハンガリー)など、国体によって異なっている。

一方で、EUは天然ガスより高価なLNG=液化天然ガスを、ロシア産だけでも1~7月(2021年比)までの累計で40%増加させている。
ロシア産LNGの58%が欧州へ販売されているという。うちスペインは18%(国として最大は20%の中国)を購入し、パイプラインを通じて大規模にドイツへ販売している。
これは、LNGを再ガス化させるターミナル施設が、ドイツには無かったことにあり、現在では2ヶ所に設け、ノルウェーからも天然ガスを購入している。

露産LNGは安価に供給されており、EU各国は新コロナ対策と米国発の物価高に直面、インフレ退治の金利高で経済は疲弊し、新コロナによる経済打撃もあり、消費も脆弱になっている。
経済悪化、失業問題も絡み、石油とLNGの燃料費高、EU各国の国民は生活苦から国家資本主義=極右政党を選択、極右政党がこれ以上勢力を伸ばして政権を担うようになれば、その国家主義によりEUは崩壊することになる。
すでにイタリーやオーストリア、ドイツ、スペイン、デンマーク、ベルギー、フランスなどでその勢力を大きく勢力を伸ばしている。

EU各国は、燃料である原油と天然ガスを世界一生産する米国とまったく異なり、その基盤をロシアに依存していた。
2022年2月のロシアのウクライナ侵攻、同年3月の露制裁、結果、原油・穀物価格が高騰、EUは露制裁で原油の輸入を禁止、天然ガスも禁止する動きにあった。

しかし、経済疲弊のなかで燃料費の高騰に国民の反発は大きく、原油は禁止に漕ぎ着けたものの、天然ガスはパイプライン以外ではLNG化する必要があり、液化費用+専用の運搬船での運搬費用+ターミナル輸入基地=LNGから高圧ガス化の費用が上乗せられ、高価なガスになり、国民は反発を強めている。

一方で、EUは現実の政策では2050年カーボンニュートラル(世界123ヶ国表明)など実現性は無いにもかかわらず、地球温暖化対策を放棄する動きはなく、足下では異常気象で北海の風力発電は風が吹かず発電不足、原油や天然ガスでの火力発電を急増させている。
露産天然ガスを拒否するポーランドなどでは、石油どころか石炭での火力発電を増加させ、それも最悪の褐炭で発電している発電所も存在する。

ドイツは風力発電を倍増させるとしているが、昨年は異常気象により、風力が足りず、石炭火力発電所を再稼動させた経緯もあり、安定性に欠け、今後、温暖化で北海・バルト海の風力が弱まれば、原発は無く、火力発電に依存し、カーボンニュートラルどころではなくなる。

うがった見方
2014年2月、米バイデン副大統領(当時)が深くかかわっていたウクライナの民主勢力、欧米支援の下、親ロシア大統領を追放したウクライナクーデター、ロシア・プーチンが動けないソチ冬季オリンピック開催期間中に実施された。
ロシアは五輪後激怒したプーチンが、ウクライナを急襲、ロシア人が多く住むクリミア半島およびウクライナ東部を占領、2015年ドイツ主導で現状のままで休戦協定締結、

2022年2月、ウクライナの元喜劇俳優のゼレンスキー大統領の挑発に、ロシア・プーチンはウクライナに侵攻、欧米は戦車や装甲車、300万~500万発の砲弾やミサイルを提供し、今ではウクライナ軍がロシアを占領地から後退させている。

2014年のクーデターの米国の真の狙いは、欧州のロシア産天然ガスにあった可能性もある。天然ガスの欧州市場を米国産に切り替えさせる機会を演出させたのかもしれない。そのためか2014年~15年の停戦交渉では、米国産かではまとまらず、米国を外し、独仏主導で停戦に合意、後追いで米国に合意内容を承認させた経緯がある。

今回、米バイデン政権は、昨年6月の原油価格の暴騰時、サウジに原油増産を要請、サウジは応えず実質拒否した経緯がある。
その後、米バイデンは国内のシェールオイル軍団(メキシコ湾岸のメジャーには要請していたが、フル稼働状態として増産を断られていた)ではなく、突拍子もなく、制裁対象下のベネズエラに対して増産要請した。
真の目的はベネズエラが国有化した米石油メジャーのシェプロンの原油生産基地、改修費用がなく生産停止していた同基地をシェブロンの所有に戻し、シェブロンが自費で改修し、生産を再開させる内容だった。
ベネズエラは米国から経済制裁を受けており、その緩和条件に、またシェブロンの生産再開で国の権益分の収入も再開されるウィンウィンの契約となった。
ベネズエラには中国が深く関与し、原油生産施設の改修工事にあたり、その費用を原油の輸入で返済させていた。しかし、外貨なかでもドル不足と見られる中国は一部の生産基地の改修に終わっていた。

ベネズエラはOPEC加盟国、生産枠は150万バレル以上有しているが、生産施設の老朽化による改修工事難で生産量は70万バレル以下まで減っている。シェブロンのベネズエラの生産施設だけでも20万バレルあるという。
シェブロンはユダヤのロックフェラー財団の傘下企業、ベネズエラは世界最大の原油埋蔵量を誇り、広大なシェールオイル・天然ガス層も有している。・・・米バイデン氏の狙いはそこにあり、2期目の大統領選にあたり、ユダヤ・ロックフェラー財団の表裏のご支援が期待され、より当選確率は高くなる。

ドイツは今後ともLNGの再ガス化施設を各地に構築し、ロシア産LNGを含む天然ガスの直接間接での輸入を2035年までに完全停止し、米国やカタールなどからの輸入に切り替えるとしている。
カタールの天然ガス生産は海底、イランの海底とも共通しており、両国は以前から国交を有している。
これまで安価な露産天然ガスを享受してきた独産業は、高価なLNG系天然ガスや原油に切り替わり、長期経済危機まで懸念されている。
(サウジとロシアは結託して原油生産を減産し一時60ドルに下がった原油価格を現在85ドル台まで押し上げている/WTC価格)

欧州は偽ディーゼル車の開発に奔走し、EV化が遅れ、ドイツのモーターショーでは中国勢のEVが席巻している。EV用バッテリーも遅れており、韓国勢がドイツ、ハンガリー、ポーランドに工場を構え、中国CATLもドイツへの工場進出をすでに発表しており、独ベンツ-EVでは中国のCATL製バッテリーが搭載して販売している車両もある
こうした自動車業界の問題もあり、EUの旗手ドイツの基盤産業の将来は日本同様暗いものになっている。

米国やカタールは急遽、LNG化の巨大施設を建設中であるが、完成にはまだ日がかかる。そのためにカタールは大量にLNG専用船を韓国の造船会社に発注している。
ゆくゆくはこうしたカタール産や米国産のLNGが、露産天然ガスに取って代わることになろうが、国民の消費価格は大幅に高くなることから、よほど経済を良好に維持するか、国が補助するしかない。そうしなければ選挙で国民から反発を食らう。
補助するにも国家財政の問題があり、紙切れをいくらでも切る日本と異なり、財政規律問題から困難でもある。
欧州でも温暖化から異常気象が常態化、南欧は温暖化により高温化によりここ数年、森林火災が増加している。
それかといって高価なLNG=液化天然ガスでの発電では電力料金が現在でも高騰しており、さらに高騰することになる。石油火力発電ではすでに原油価格の高騰により、電力料金は上昇している。
(2019年12月ブレント(北海)原油は65ドル/2023年8月85ドル・・・22年6月一時121ドル。ただ、原油価格は露産も北海産も中東産も大きくは変わらず、欧州各国は一部国を除き、露制裁により輸入禁止に処した。現在、露産は露制裁により2割以上安価に売買されている。インドも新たに露産原油を大量に輸入し、灯油や揮発油に精製して、大量に安価に欧州へ輸出している)
燃料を国産する米国とノルウェー外燃料を持たない欧州とは、経済構造がまったく異なり、米国の言うとおりに動けば、極右化の火に油を注ぐことになる。

<国際エネルギー機関(IEA)のレポートでは>
欧州全体の2022年のLNG(液化天然ガス)輸入量は21年比で63%増の660億㎥増加したと報告した。
欧州へのロシア産天然ガス供給が激減したことから、代替調達としてLNGが多く輸入されたことによるもの。
増加分のうち約2/3にあたる430億㎥を米国が供給し、残りの主な増加分は、カタールの50億㎥、エジプトの50億㎥、ノルウェーの30億㎥、ロシアが20億㎥のLNGを供給したという。
世界の貿易量は5.5%増だったが、額は価格暴騰ほぼ倍額の4,500億ドルに達した。

世界のガス消費量は、2022年は前年比▲1.6%減の4兆420億㎥となったが、特に欧州では21年比で約▲14%減の5,220億㎥にまで低下したという。これは再生エネと仏の原発電力の拡大によるものとされている。それに加え、天然ガス価格が高騰し、消費者が使用を制約したことも減少原因となっている。


 

[ 2023年9月11日 ]

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