アイコン 欧州の洋上発電 無風と生産コスト高に難儀続く


欧州の洋上風力発電業界は、サプライチェーン(供給網)の混乱、風力発電装置の設計上の問題、コストの上昇などが重なり、逆風にさらされている。
このため数十件の開発プロジェクトに支障が生じており、各国の気候変動目標の達成にも影響が及ぶ恐れがある。

化石燃料への依存度を引き下げる競争により、メーカーや部品サプライヤーには、よりクリーンなエネルギーの需要の高まりに応じるよう圧力が掛かっている。

しかし、昨年は温暖化で風が計画通り吹かず、発電量が少なく、補うため、石炭火力発電所を再稼動させたり、出力を最大化させたりして対応し、CO2問題に難題を突きつけた。天然ガス火力も露制裁でLNG系に変わり高騰、安価な石炭で代賛発電していた。
熱波はイギリス服務大西洋岸から、地中海沿岸で発生し続けており、欧州でも山林火災が頻発している。山林火災は自然火災として区別されるものではなく、電線設備の老朽化など人為的な部分もあり、山林火災が地球温暖化を進めてもいる。

山林火災は、カナダの西部に続く東部の山林火災、恒例のカルフォルニアル山林火災、アマゾン火災、オーストラリア火災、欧州地中海沿岸の山林火災など各地で発生している。

欧州連合(EU)は、2030年までにエネルギーの42.5%を再生可能エネルギーで賄うという法的拘束力を持つ目標を最終決定しており、露制裁エネルギー効率も問題もあり、プレッシャーが顕著となっている。

 

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火力発電も燃料高騰から天然ガスから石炭に、ポーランドでは一部で石炭からより安価な褐炭による発電に切り替えられている。

再生エネの業界団体のウインドヨーロッパによると、EUが再生可能エネルギーの比率を現在の32%から新たな目標の42.5%に引き上げるには、風力発電容量を今の205ギガワット(GW)から420GWへと2倍以上に引き上げ、洋上風力発電容量は17GWを103GWへと大幅に増やす必要があると指摘している。

しかし、今年に入って英国、オランダ、ノルウェーの洋上プロジェクトが、コスト高と供給網の制約のために延期または棚上げになっている。
また、英国では再生可能エネルギー向け補助金の入札で、洋上風力開発業者からの応札が皆無だった。

ジュピター・アセット・マネジメントの投資マネジャー、ジョン・ウォレス氏は「もし、これがプロジェクトの長期休止につながれば、2030年の再生可能エネルギー目標の多くは、達成が厳しくなるに違いない」と話す。

EUが今年、新たな再生可能エネルギー目標で合意する以前から、オルステッド、シェル、エクイノール、風力タービンメーカーのシーメンス・ガメサといった企業が、洋上風力産業の規模は気候変動目標の達成に不十分だと警告している。

新コロナパンデミックを発端とする供給網の混乱は、ウクライナ戦争で一段と深刻化。一方で、輸送コストや原材料費の高騰、金利の上昇、インフレで利益が圧迫されている風力発電事業者もある。

ドイツのエネルギー大手RWE のマルクス・クレッバー最高経営責任者(CEO)は、洋上風力発電産業は急速な拡大が予想されるタイミングでさまざまな問題が重なり、気候変動目標の達成が危うくなっているとの見方を示した。

<巨大化の罠>
洋上風力発電は過去20年間に急成長を遂げ、一部の国ではコストが化石燃料と同等か、それ以下になった。
だが、タービンをより大きく、より効率的にしようとする開発競争が性急すぎたのではないかといった指摘が、経営者やアナリストの中から出ている。

タービンの大きさは10年ごとにおよそ2倍になり、2021年と22年に稼働した最大級のタービンはブレードの長さが110メートル、出力が12~15メガワット(MW)もある。
しかし、大型化すればするほど故障しやすくなると、コンサルタント会社サンダー・サイド・エナジーのアナリスト、ロブ・ウェスト氏は指摘する。

ブレードは大きくなればなるほどたわみが大きくなり、より剛性の高い補強材が必要になるという。
シーメンス・ガメサは今年6月、最新の陸上風力タービン2基の品質問題への対処に16億ユーロ(17億ドル)の費用がかかると発表した。

再生可能エネルギー事業向け保険を扱うGキューブ・インシュアランスのフレイザー・マクラクランCEOによると、風力発電事業者からの保険金請求件数はこの1年で減少したが、請求額は大きく増え、深刻さの度合いも高まっている。

「洋上風力発電市場への参入は、保険会社だけでなく、メーカー、デベロッパー、サプライヤー企業にとってもリスキーなビジネスになっており、存続の危機に直面している企業もある」と話す。
シーメンス・ガメサのヨッヘン・アイクホルトCEOは、同社の洋上風力発電事業が生産拠点の建設遅れ、供給網の混乱、品質の高い部品の不足など、陸上風力発電とは異なる問題に直面していると述べた。

大手タービンメーカーのベスタスも受注残の解消に苦戦しており、供給網の混乱は年内いっぱい続くと見込んでいる。

一方で、各国政府は洋上風力発電のライセンス入札を強化している。
ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスによると、2024年末までに世界中で成立する洋上風力発電の契約とリース案件は、総規模が60GW余りに達する見込み。

だが、一部の風力発電事業者は入札で提示される電力価格について、コスト上昇という業界が抱える問題を考えると、新規プロジェクトに着手するには低すぎると訴えている。
英国は2030年までに洋上風力発電容量を3倍の50GWに増やすことを目標としている。

しかし、10月8日の入札では風力発電事業者からの応札がまだなく、見通しに暗雲が垂れ込めたとの声が専門家から聞かれた。
一部の入札では再生可能エネルギー事業者が、環境に優しい資産を求める大手石油・ガス会社に競り負けており、欧州委員会は今月、包括的な支援策を打ち出す方針を示した。

以上、ロイターの記事であるが、温暖化による風力の弱体化には触れていない。すでに一昨年は英国あたりまで高温となり、北海やバルト海も影響し、風が計画通り吹かなかった。また、地球温暖化は暴風雨・ゲリラ豪雨を各地にもたらしており、風力発電機器が予想外の風圧に耐えられるかも懸念されている。日本でも台風で風力発電装置が倒壊したり、ブレードが曲がったりする事故が多く発生している。

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[ 2023年10月 2日 ]

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