アイコン サムスン電子 暗いニュースばかりが・・・ 負のスパイラル経営突入か


「サムスンこけたら、韓国こけた」と言われるほど、韓国経済にとってサムスン財閥、とりわけ中核企業であるサムスン電子の存在は大きい。

 そのサムスン電子に関して、このところ「暗いニュース」ばかりが相次いでいる。

「ファウンドリ(システム半導体の委託生産)部門からの撤退も視野に入れているのだろうか?」を思わすような記事もある。 

サムスン電子はテイラー(米テキサス工場)で荷造り 李在鎔の「ファウンドリ1位の夢」とりあえずストップ」との見出しの(韓国紙の)マネートゥデイが9月11日に特ダネ報道した。
サムスンの総帥である李在鎔氏が「2030年までにファウンドリを含むシステム半導体分野で確実に1位になる」と宣言して建設したのが、米テキサス州のテイラー工場だった。

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 ところが、見込んでいた米半導体大手「AMD」、同「エヌビディア」、同「クアルコム」、米IT大手「アップル」からの発注がなく、韓国から派遣した人員の過半数が既に荷物をまとめて帰国したという。
 米大手が発注しなかった理由は、例によって「歩留まりの悪さ」だという。米大手は、半導体受託製造の世界最大手「台湾積体電路製造(TSMC)」に発注した。

 マネートゥデイは、韓国の平沢工場も事情は同じとして、予定していたファウンドリラインをメモリ半導体に転換したと伝えている。
韓国の通信社ニューシスの9月13日の報道によると、米IT大手「グーグル」も次期スマホのモバイルアプリケーションプロセッサ(AP)をサムスン電子からTSMCに切り替える可能性が高まっているという。

<サムスン電子、テイラー工場の量産開始を2年間延期>
こうした状況にサムスンはテキサス州のテイラー工場の量産稼動を2年延長し2026年にすると発表している。
米EE Timesの2023年の取材では、「同工場では2024年末までに、AIチップ設計メーカーであるTenstorrent向けに4nmチップレットを製造する予定だ」と語っていた。
Tenstorrent社はAMDやアップル・テスラに在籍し、各チップの開発を主導したジム・ケラー氏が率いている。
上述の韓国紙はサムスン電子をタタキ過ぎだろう。

<システム半導体の製造設計に問題か>
サムスン電子のファンドリー部門は、クアルコムのスナップドラゴン、NVIDIAのGPUなど受託生産し、一時はシェア18%まで増加、TSMCを脅かすと韓国では大々的に報じられていた。しかし、2021年にスナップドラゴン(888)に発熱問題が発生し、急遽、生産委託先をTSMCに切りかえ、次の新製品からは最初からTSMCに生産委託した。NVIDIA製品も同じ脈絡だった。
それから3年が経過し、今年5月、NVIDIAのGPUとセットする自社開発のHBM(高帯域メモリ)の認証試験でNVIDIAから発熱・消費電力問題を指摘され認証を受けられなかった。今秋にも再試験が行われ、サムスンは認証を受けられるとしているが、SKハイニックスは同製品を昨年秋から認証を受け、NVIDIAのAI半導体の売上に応じて、高付加価値のHBMがセットされ、その需要によりSKハイニックスの業績は大化けしている。

<半導体生産業界を牽引するNVIDIA>
NVIDIAにしても需要の急拡大で、TSMC1社体制の見直しや、セットするHBMも1社体制の見直しを進めているが、なかなかそれがかなわないのが現実だ。HBMは米マイクロンも開発し、量産体制にあるものの生産規模が小さすぎるという難点がある。

<インテルもサムスンも同じ問題が・・・>
インテルの場合、政治が保護色を強めるならば、ファブレスメーカーに対して優先して発注するように政治決着もありそうだが・・・。
 インテルもシステム半導体の受託生産の大規模工場を建設している。しかし、高度なふぁブレスメーカーの要求をかなえなければ、サムスンのテイラー工場にように、量産開始を先送りする可能性も出てくる。

<TSMCの米工場が稼動へ>
ただ、そうした間に、米国では、2025年にTSMCのアリゾナ工場が量産開始することから、インテルやサムスンが狙ったファブレスメーカーの委託生産物を全部受けてしまう可能性もある。
アリゾナ工場はすでに第2工場の件津背に入っており、量産開始は2027年が予定されている。

発熱問題は、SKハイニックスはクリアでき、サムスン電子はクリアできないという致命的な問題を抱えている。ましてや受託生産の雄、TSMCはファブレスメーカーのニーズに応える製品を造り続けており、信頼性も厚い。

サムスン電子はまずは受託システム半導体の製造設計部門を強化するしかない。

やはり、生産設計部隊の優劣だろうか、TSMCは製造設計部門を多く抱え、試験ラインの専用工場も持ち、試験生産を繰り返し、ニーズに合致した製品造りをなし、歩留まり率もサムスンより大幅に高く、利益率を押し上げてもいる。ましてや、システム半導体はファブレスメーカーと生産量や価格を生産の前段階で決定して進め、利益は安定し、メモリ半導体のような好不況の波は少ない利点がある。

TSMCはシステム半導体のファブレス企業から受託して生産するファンドリー専業であり、サムスンはメモリ半導体の最大手、自社で自社製のシステム半導体も生産し、ファブレスメーカーから受託生産もしている。

その違いは、TSMCはシステム半導体メーカーには絶対ならないと宣言し、ファブレスメーカーの半導体技術に基づき製造設計して生産しているが、サムスンは2030年までに世界一のシステム半導体の生産会社になると宣言しており、ファブレスメーカーも自社のシステム半導体の設計図面を渡すことに躊躇する企業も当然ある。そのため、普及品をサムスンに生産委託し、新製品はTSMCに依頼するケースが多くなっているようだ。

生成AIのプログラムを動かすAI半導体は、超高速計算を実現させることから消費電力も元々高く、データーセンターでは大容量の電力消費と冷やすための大量の水・地下水が必要となっており、可能な限り、消費電力が少ない個々の製品が求められている。

サムスン電子は、発熱問題・消費電力問題、歩留まり問題をクリアしなければ、ファブレスメーカーもなかなか生産委託できないところまできているようだ。
サムスン電子のシステム半導体の岩盤のシェアはほとんどが自社製品ともされ、問題を解決しない限り、一時的に発注がかかっても先々ではTSMCに逃げられてしまう結果を招く。

半導体業界は、世界経済の先行き不透明な中、AI半導体だけが救世主になっている。セットするHBM(高帯域Dラム)や高性能SSD(NAND系)での出遅れは致命的打撃となる。
7月に既存の汎用メモリ半導体の価格はピークアウトしており、値戻しもあり大量販売で利益は出ようが、HBMや高性能SSDは付加価値のレベルが異なり、業績に大きく影響する。
 
サムスンは、スマホでも中国勢に追い立てられており、西欧ではプレミアム価格帯のフォルタブルフォン(折り畳みスマホ)市場で、honor(オナー/深セン至信)に抜かれ、サムスン最大のスマホ製造基地や家電製造基地があるベトナムでもスマホ販売台数でOPPOに抜かれている。
スマホの危機に対応してサムスンは世界で営業・管理部門を3割原因すると発表している。

個性なき経営者により、危機管理下でも陣頭指揮せずスタッフ任せ、3本の矢(半導体+スマホ+家電)の戦略がなっておらず、多くの市場で歯転びを生じさせ、新陳代謝のない高齢経営体質に陥り、負のスパイラル経営に陥っているようだ。


 

[ 2024年9月26日 ]

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