アイコン 「NewJeans」と「SMAP」 問題の共通点


ガールズグループ「NewJeans」のメンバーらが、「25日までに(所属するADORの)ミン・ヒジン前代表を(代表に)復帰させてほしい」と要求した11日のユーチューブでの緊急ライブ配信は激しい反応を呼んでいる。
12日のX(旧ツイッター)には、ミン前代表の復帰を要求するハッシュタグを添えた書き込みが28万件以上投稿された。

この日、HYBE(ハイブ)の株価は、一時は▲6%以上下落するなど揺れ動いた。
SM、YG、JYPのような大規模エンターテインメント企業の株価はこの日は上昇した状況だったため、NewJeansがHYBEを離れる危機感が反映された結果だとみられる。

音楽業界では事実上、NewJeansがHYBEを離れる宣言をしたとみている。
メンバーらは、ミン前代表の復帰期限を9月25日と強調し、
「HYBEの仕事の進め方は正直でなく、正しい方法ではない」、
「その人たち(HYBE)が属する社会に順応したり、同調したり、付いていきたくはない」
とする強い怒りの反応を示した。
「パン会長(パン・シヒョク議長)とHYBEには賢明な決定をしてほしい」として、パン議長に直接言及したりもした。音楽業界のある関係者は「発言の強さをみると、HYBEと一緒にやっていけないという意向を表明したようだ」として、「NewJeansがHYBEを信頼できないという意思表示をした」と受け止められている。

 

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メンバーらが直接乗り出したのは、最近、所属会社ADOR(アドア)とドルフィナーズ・フィルムのシン・ウソク監督の対立の過程で、ユーチューブチャンネル「パン・ヒス」が非公開になった事件に対する失望も作用したとみられる。

「パン・ヒス」は、シン監督が演出した「Ditto」のミュージックビデオの切り抜き動画を集めたチャンネルで、「NewJeans」とファンの間の架け橋の役割を果たしたコンテンツだった。
メンバーらは「『NewJeans』とバニーズ(ファンクラブの名前)の関係性を象徴する成果物まで失った。他のものまで失いたくない」と吐露した。

 この日のHYBEは、メンバーらによる配信に対して公式の立場を示さなかった。
この日の臨時株主総会でHYBEの新代表取締役に選任されたイ・ジェサン代表は、「原則どおり、落ち着いて対応していく」として、コメントを避けた。
「NewJeans」の最後通牒は受け入れがたいカードだという点から、簡単には決定を下せない雰囲気。
「NewJeans」の要求どおりにミン前代表を復帰させる場合は、不当に解任されたとして訴訟を継続中のミン前代表の主張を認めるかたちになる。

しかも1000億ウォン(約110億円)台と推定されるミン前代表のプットオプションの権利が含まれた株主間契約も復活することになる。
HYBEはミン前代表に対して株主間契約の解除を通知し、契約解除の有効性の確認を求める訴訟まで起こしている。

HYBEが25日までにミン前代表を復帰させない方向で結論を出す場合、
①「NewJeans」は、専属契約の効力停止の仮処分申立てなどの法的手続きに入るか
②数百億円とされる巨額の違約金を支払い契約を解除するか、
③そのままADORに残留するか
の3つの選択肢の前に立つことになる。

音楽業界では、法的手続きに入る可能性が高いとみている。
音楽業界のある関係者は「(メンバーの)ハニが、自身が無視されたと発言するなどの内容をみると、HYBE側との信頼関係が破綻したことを明らかにしたとみられる」として、「専属契約の無効を主張する訴訟では、会社側との信頼関係の有無は非常に重要な争点」だと述べた。

また、別の音楽業界関係者は「数千億ウォン(数百億円)に達すると予想される違約金を払って契約を解除する可能性は低い」とし、「今、韓国内でそれほどの投資をする投資家はいない」と述べた。たとえ投資を受け入れるとしても、これまでの「NewJeans」のIP(知的財産)をADORに置いていかなければならないため、リスク負担が大きいとしている。

「NewJeans」が残留する方向を選んだとしても、正常な活動は容易ではないと思われる。
すでにHYBEとの感情的な溝が生じているうえ、メンバーらがミン前代表側につく意思が強いためだ。
 「NewJeans」がどのような選択をしたとしても、HYBEは打撃を避けられないとみられる。
「NewJeans」は今年のHYBEの全営業利益の14%の寄与をするとみる証券業界の見通しが出ている状況のもとで、活動に支障をきたす場合は、損害は結局はHYBEの負担になる可能性が高い。

「企業イメージ」の失墜も否定的なシグナルとなる。
大衆音楽専門家のソ・ジョン・ミンガプ氏は「音楽を作る会社は、音楽だけでなくイメージも同時に消費される。今回の事態でHYBEが、既存の大企業と変わらない権威的な会社に映る可能性もある」と述べた。
大衆社会専門家のチョン・ドクヒョン氏は「アーティストの声と経営的判断が衝突する対立の状況のもとで、HYBEの判断によっては、今後のエンターテイメント業界がアーティストより経営的判断が優位になるシステムに変わる可能性もある」と指摘した(裁判した場合、判決によってはその逆もある)。
以上、

米国の場合、持株会社の経営陣は、傘下の代表が子会社の経営上問題なく計画以上の業績を収めていれば、特に問題になることはない。
韓国の場合は、親会社の権威主義というより、子会社の業績に関係なく子会社を直接管理するオーナー志向が強い。子会社は単なる会計処理上の組織に過ぎない。

軍隊では上意下達が絶対案件であるが、韓国の財閥企業やオーナー経営者の経営も似通っている。会社組織は軍隊ではなく、利益の源泉である顧客や消費者目線が経営の必須条件であるのであるが。
持株会社組織ならば、子会社に優秀な経営者がいたら、親会社の経営スタッフに抜擢すべきだろうが、親と子が対立するとは、親の器量が疑われる。ただ、子も親から逸脱した経営や利得は社会通念上受け入れられない。

今回の「NewJeans」問題は、「HYBE」側はミン氏とが完全対立状態であり、「ADOR」代表への復帰は困難だろうが、代表権は剥奪されたものの、現在も取締役は維持されている。
「ただ、HYBEがADORが株主総会を開催すれば、いつでも取締役も解任できる。(取締役会では、代表権は失効させることができるが取締役は解任できない。解任できるのは株主総会)

ミン氏にしても自らの利益にしがみ付けば、うまくいかないだろう。
当然、プロデュース契約だけにし、「NewJeans」に関する売上高の○○%を支払う契約にすれば、双方痛み分けで決着する可能性もあり、そうなれば、元通りの「NewJeans」の活動に戻ろう。
ここでもプロデュースの契約料以外に内容が問題となる。
HYBEの今後の出方だろうが、キャスティングボードを握っているのは今やミン氏のようだ。

HYBEのオーナーでBTSの育ての親であるパン・シヒョク氏(52歳)とSMエンタで多くの著名アーティストのプロデュースに参加してきたミン・ヒジン氏(44歳)、年齢はミン氏が若いが業界で頭角を現し始めたのはミン氏が早く、パン氏が表舞台に立ったのはBTSの成功からでもある(2013年6月デビュー、世界進出は2017年から)。業界で活躍する同世代の2人でもある。

双方にライバル意識が強く作用している可能性もあるが、HYBE側に韓国特有の男尊女卑文化の考え方、オーナーとしての権威主義が底辺に横たわっているようだと指摘した外信もある。

日本の場合、似た案件で、
スマップ分裂の引き金となったジャニーズ事務所の内紛、スマップのチーフマネージャーを長年勤めた飯島三智氏が2015年1月、ジャニーズ事務所(実質経営者:妻のメリー喜多川氏)から追放された事件。
飯島氏とジュリー(藤島ジュリー景子/娘)との主導権争い、飯島氏は2015年にメリー氏から追放され、2016年1月にジャニーズ事務所を退任した。

スマップは飯島氏と行動をともにしようとしたが、内部分裂、キムタク氏はジャニーズ事務所に残り、中居氏は態度保留のままジャニーズ事務所に残ったまま2016年12月にグループは解散した。
その中居氏も2020年に退所、個人事務所を設立している。
2017年9月に香取、草彅、稲垣の各氏は、ジャニーズ事務所から離脱、飯島氏が芸能事務所「CULEN=カレン」を設立し、3人は合流、移籍した。
しかし、その後、3人は歌番組には2024年になるまで一切、出演できなかった。当然、ジャニーズ事務所の圧力と放送局のジャニーズ事務所への忖度にあるが、TV出演さえできない事態に、公取委が「圧力かけるな」と注意勧告するほどだった。ジャニーズ事務所は3人を芸能界の表舞台から完全に干した。

ジャニーズ事務所では、ジャニー喜多川氏の練習生虐待セクハラ事件が、国内では裁判沙汰もあり、何回も取り上げられながら、事案は即マスメディアにより闇に葬り去られていた。
しかし、2023年3月、英国のBBC放送により世界に配信され、日本社会の問題となり(NHK2023年の紅白からの追放)、やっと本格的にメスが入った。

  そうしたこともあり、3人は音楽番組に7年間出演できず、2024年にやっと出演できた。当事者のジャニー喜多川氏は2019年7月亡くなり、女帝として君臨した姉のメリー 喜多川氏も2021年8月に死去し、問題の当事者2人が亡くなってから、それも日本のマスメディアではなく、英国放送局発で社会問題となり、遅きに失した。

メリー喜多川氏の娘でジャニー氏の姪に当たる藤島ジュリー景子氏(現在:58歳)は、2004年から代表取締役に任命されていたが、母のメリー氏と衝突し2008年に辞任、2014年に代表取締役に復帰したものの、メリー氏と衝突は繰り返され出社せず、ジャニー氏が亡くなり、メリー氏が高齢から急に衰えたため、2019年9月に代表取締役社長に就任した。メリー氏は強権経営で知られ、元SMAPの森且行氏、元男闘呼組の高橋和也氏などがメリー氏の逆鱗に触れ退団させられたとされている。

ジュリー氏はメリー氏死後、ジャニーズ事務所の全株式を継承所有(同事務所の後継会社でも全株保有、社長ではないが代表取締役でもある)。
こうした日本のマスメディアの問題は、権力者たちの圧力を容認するマスメディアにあり、自ら自主的に忖度する日本社会の仕組みこそが問われた問題でもあった。
マスメディアは今でも他人事・知らん顔したまま現在に至り、忖度は繰り返されている。芸能プロや電通、政党や議員の先生方に対する忖度はマスメディアの体質に完全に溶け込んでしまっている。

ジャニーズ事務所から脱退したスマップメンバーが音楽番組に出演できたのは、脱退後、今年に入ってからであり、メディア自身がNHKも含め7年間も日本の音楽シーンから、スマップ脱退3人組を音楽番組から放逐してきた。
こうしたスマップ×ジャニーズ事務所×電通+博報堂×NHK含む放送局の問題が、

<双方がそれぞれ妥協点を見出すための柔軟な姿勢がなければ決裂>
<被害者は「NewJeans」とファン+視聴者>

今回、韓国での「NewJeans」問題と酷似している。
幸いに主役の「NewJeans」はスマップと異なり、内部分裂しておらず、「NewJeans」にとって受け入れられる解決策により、「NewJeans」の活動が引き続き行われることが望まれよう。

米国では芸能会社や芸能プロより、芸人自身=ミュージシャン・俳優たちそれぞれが主役であり、弁護士体制も充実している。
米国の経営は、子会社の経営が問題なく順調に経営されていれば、何も問題は発生しないどころか、親会社の役員に抜擢されたり、トップに抜擢されたりする。経営と株主の利益が必ず一致するとは限らず、最終決定権は株主にある。しかし、韓国の多いオーナー企業や財閥企業は、親会社も子会社もいっしょくたりにする経営者が多く、企業モラルの点からも多くの問題を発生させている。

[ 2024年9月14日 ]

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