韓国と日本まったく同じく消費低迷 経済成長は輸出で・・・
韓国ではここ2年6ヶ月の間、名目賃金の上昇率低下で実質賃金の累積下落幅が1.6%に達したことが9月4明らかになったと韓国で報じられている。
今年上半期(1~6月)には実質国内総生産(GDP)の成長率が2.8%に達したにもかかわらず、実質賃金は逆に0.4%下がった。
成長の成果が等しく配分されるならば、実質賃金増加率は実質経済成長率に近い値でなければならないという点で、成長率を大きく下回る実質賃金上昇率は、いわゆる「トリクルダウン効果」が根拠のない主張であることを表わしているという指摘が出ている。
<トリクルダウン(trickle down)とは、浸透を意味する英語>落下傘効果。
トリクルダウン理論は、「富裕者がさらに富裕になると、経済活動が活発化することで低所得の貧困者にも富が浸透し、利益が再分配される」と主張する経済理論。
(非現実的理論、富裕層が20%だとしても残りの消費や所得を誘引するだけの力があるかだ。富裕層がいくらお金を使ってもタカが知れている。大金持ちにはさらにお金が集まるという論は納得できる。)
消費は上昇気流の中間層が増加し続けることにおいて最大化する。中間層は上位30%、下位30%で構成され、下位も上位も上昇拡大して経済は拡大する。現在は、上位は停滞から下位へ落ち人たちと、下位の人たちでさらに下位へ、貧困層の20%に吸収されようとしている。
韓国雇用労働部が8月30日に発表した「7月 事業体労働力調査」資料によれば、従事者1人以上の事業所の今年上半期の1人当り名目賃金は、消費者物価上昇率の2.8%を下回る2.4%の伸びにとどまり、実質賃金が0.4%下落したことが分かった。
実質賃金は2022年に対前年比▲0.2%下落、2023年も▲1.1%下落している。実質賃金の下落は1998年のアジア通貨危機=韓国金融危機時とリーマンシックの2008~2009年の時にも起きたが、下落傾向が3年連続で続くのは、1993年に事業体労働力調査が始まって以来初めて。
2年半にわたる実質賃金の累積下落幅は▲1.6%に達する。
300人未満の事業所では▲2.2%減少、300人以上の事業所では▲0.8%減少で、小規模な事業所での賃金損失のほうが大きかった。
実質賃金の下落は、名目賃金の増加率が消費者物価上昇率に追いつけない場合に起きうる。
新型コロナ直後には物価高が続き、実質賃金が下落した側面がある。
実際、2022年の場合、名目賃金上昇率が4.9%で高かったにもかかわらず、消費者物価が5.1%も上がり、実質賃金が0.2%下落した。
しかし、2023年と今年上半期には名目賃金の上昇率がそれぞれ2.5%、2.4%に留まった。2011~2021年の間の名目賃金の年平均上昇率は3.53%だった。物価上昇率が多少鈍化したにも関わらず実質賃金が下落した原因は、物価より名目賃金上昇率の低下にあるという意味。
韓国労働社会研究所のキム・ユソン理事長は「尹錫悦政権発足後、労使間の力関係が使用者側に傾き、最低賃金の引上げ率もきわめて低く、名目賃金上昇率が下がり、実質賃金の下落まで起きている」とし、「階層間の所得格差が拡大し、内需不振にともなう景気の悪循環を招く恐れがある」と見ている。
(貧富の差拡大/韓国の場合、はっきり見えてこない失業率の問題がある。分母を15~65歳の就労者+就労意欲者とするならば、就労者総数=66歳以上の高齢者の雇用の実数を分子から外す必要がある。そうしなければ実質が見えてこない)
家計所得の根幹を成す賃金水準の実質的下落は、民間消費の動力を弱める。今年に入って輸出は比較的速いスピードで回復しているが、内需の低迷は依然として続いている。
中央銀行である韓国銀行(韓銀)は、今年上半期の実質経済成長率を2.8%増(前年同期比)と集計し、民間消費の伸び率は1.0%増にとどまったと明らかにした。
経済成長率に大きく遅れを取っている実質賃金の伸び率は、家計所得に悪影響を及ぼし、内需回復の足かせになりかねない。
亜洲大学のキム・ヨンギ教授(元雇用委員会副委員長)は、「輸出の大手企業中心の韓国経済では、自然発生的なトリクルダウン効果はほとんど起こらない。財政を通じた再分配でトリクルダウン効果を起こさなければならない」と述べた。
しかし、政府は経常成長率4.5%を大きく下回る3.2%の総支出増加率で予算案を編成し、緊縮財政基調を続けている。
日本の場合、
こうした韓国の現状は、日本とまったく同じだが、日本はこうした事態を30年間続けている。工場は海外へ出て行ってしまい。国際収支は黒字でも貿易収支は赤字。新コロナ前の19年12月より円安は2024年の150円段階でも37%の超円安。しかし、輸出は新コロナ前より22~25%%しか増加していない。これは超円安にもかかわらず競争力を持つ製品が減少していることを意味し、超円安率も相乗効果で輸出額はそれ以上の伸び率になるのが理論。
ましてや、経営陣は、海外で稼いだ、内部蓄積の投資で稼いだとして従業員への還元など毛頭考えない日本沈没型の経団連の経営者たちばかりとなっている。
バブル時代の四季報にあった上場各企業の労働分配率、研究開発費、設備投資などの項目もなくなって久しいが、結果、GDPが30年間で14%(名目/円)しか増加しない沈没の日本を演出している(世界のインフレ率は毎年平均して6%前後上昇しており、インフレ率より日本のGDPはまったく伸びておらず、世界からすれば実質で沈没し続けている/ただし、日本だけで見た場合インフレ率は1%前後、それでも30年前より地盤沈下し続けている。)
韓国では「YONO(You Only Need One、これさえあればよい)族」の若者の台頭、「薄利多売」競争に火が付く。
韓国のコンビニのCUでは、今年1~8月の「1000ウォン以下の商品」の前年に対する売上の伸率は27.3%にのぼると明らかにした。
先月発売した「1000ウォン豆腐」が発売から半月で3万丁以上売れるなど、旋風的な人気を呼んだことで、売上も急速に伸びた。
CUの「1000ウォン以下の商品」の売上伸び率は、
2021年には前年比10.4%増、
2022年は23.3%増、
2023年は22%増、
2024年1~8月は27.3%増を記録している。
こうした現象はCUにとどまらず、セブンイレブン、化粧品のGS25にも及び、特に低価格基礎化粧品の売上高が大幅に伸ばしている。
韓国のNH農協銀行が発表した今年上半期のトレンド報告書によると、20~30代は飲み屋、飲食店、出前アプリなどの消費を減らし、同時にスーパーで購入する簡便な食べ物や酒類の消費を増やしているという。
日本では、物価高を背景に消費者の節約志向が続く中、コンビニやスーパーでは、顧客を呼び込むため低価格帯の商品を拡充する動きが出ている。
「セブン-イレブン・ジャパン」は、今年7月におにぎり2種類を値下げしたほか、今月には、3種類の弁当の価格を引き下げた。
「ミニストップ」は、今年7月から従来より価格を抑えたおにぎりやパンなどのシリーズを新たに設けている。
大手スーパーのほとんどで、PB商品の値下げを敢行している。
日本の第2四半期のGDPが速報値の3.1%の伸びから2.9%に修正された。これもGDPの半分以上を占める個人消費1%⇒0.9%、設備投資が0.9%⇒0.8%に、ともに0.1ポイント下押ししたためとなっている。物価高を考慮した場合、消費が1%増では実質マイナスではないだろうか。
以上、韓国紙参照と日本の報道機関参考