トランプ関税爆弾 加と墨に25% 中は10%追加と、大統領就任まで50数日
トランプ次期米大統領は11月25日、就任初日にメキシコとカナダからの全ての輸入品に25%の関税を課し、中国からの輸入品に追加で10%の関税を課すと表明した。
不法移民や違法薬物取引を巡る懸念を理由に挙げている。
米国は中国に対して、現行7.5%~25%の追加関税を課しており、自動車については100%となっている。
市場関係者に見方を聞いた。
◎市場に不意打ち、額面通りには受け取らず
<岡三証券 チーフストラテジスト 松本史雄氏>
大統領就任まで動きはないとみられた中で、市場は不意を突かれた形となった。
日本株は前日までの上昇の反動もあって売りが先行した。ただ、トランプ氏のディールの一環であり、額面通りに受け止める必要はないだろう。
日経平均は方向感がなく、3万8000円が近づくと買いが入り、3万9000円が近づくと売りが出る流れが続いており、上下どちらに抜けるかがポイントとなる。
年内できっかけになりそうなのは、日銀会合や米連邦公開市場委員会(FOMC)で、日銀が利上げする場合や米国の利下げがない場合、株価は弱くなりやすい。
一方、織り込みは進んできている。下げたところでは企業による自社株買いも入ると見込まれ、過度な下押しはないのではないか。
◎ディールの着地不透明、方向感定まらず
<東京海上アセットマネジメント 株式運用部シニアファンドマネージャー 若山哲志氏>
トランプ氏はディール(取引)で米国に有利な条件を引き出すため、ボールをどんどん投げ込んでいるところだろう。
最終的な着地は見通しにくく、しばらく不透明な状態は続きそうだ。株式市場はいったん織り込みにかかり、弱く推移するかもしれない。
日本株は為替要因もあって振らされやすいが、過度に下がっているというより、不透明感がある中で方向感が定まらない印象だ。目線が定まってくれば、金融市場も安定してくるのではないか。
◎メキシコ・カナダと貿易協定再交渉前倒しも
<TDセキュリティーズのマクロストラテジスト、アレックス・ルー氏>
米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の再交渉は2026年の予定になっているが、トランプ氏は今日の関税表明により、早期にカナダとメキシコと見直し作業に着手しようとするだろう。
メキシコペソとカナダドルは反応して下げたが、北米時間外で流動性が薄いことがアジア時間午前の取引で大きな動きにつながったかもしれない。
◎実現するかは不透明
<ING(シンガポール)のリサーチ部門リージョン代表、ロブ・カーネル氏>
4年前のことを思い出す。毎朝起きると市場が最新のコメントによって振り回されていた頃だ。トランプ氏はまだ大統領ではないので、多少割り引いて考えたくなる。トランプ氏はこうやって物事を進める。様々なことを言って、多くの数字に言及し、市場がそれに反応する。実現するかもしれないし、しないかもしれない。
◎中国資産を圧迫、60%関税など注視
<ナティクシス(香港)のシニアエコノミスト、ゲーリー・エング氏>
市場にとって間違いなく衝撃で、中国資産、特に追加関税で業績が打撃を受ける輸出セクターが圧迫されている。
ただ、カナダとメキシコに対する関税に比べ、対中関税はさほど大きくないことから、投資家はこれに続く発表や、トランプ氏が表明してきた60%の関税が実際に課されるかどうかやその時期に注目するだろう。
◎理由に言及、関税は条件付きか
<ANZ(シンガポール)のアジア調査責任者、クーン・ゴー氏>
トランプ氏はあまり時間を無駄にしないようだ。問題はトランプ氏が大統領就任初日に実際にそれを実行し、関税が適用されるかどうかだ。
もう一つ興味深いのは、トランプ氏が関税を課す理由(移民や薬物に関する懸念)を明らかにしたことで、今回の関税はそれらを条件としているようだ。
これは最初の攻撃となるが、トランプ氏がよく知られているディールの始まりに過ぎないかもしれない。
◎通貨下落は短期的、市場の焦点はFOMCへ
<ITCマーケッツのシニア通貨アナリスト、ショーン・キャロウ氏>
トランプ氏が「辞書の中で最も美しい言葉は関税だ」と言ったのはつい最近(先月)なので、トランプ氏の意図に驚きはないはずだが、発言のタイミングだろう。
貿易に敏感な通貨の下落は当然で、静かな日程を考えると短期的に続く見込み。ただ、12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)が近づくにつれ、連邦準備理事会(FRB)の政策が再び焦点となる。
以上、ロイター参照
メキシコは前回から左派政権が続いている。
メキシコは中国から輸入した麻薬原薬を管理せず、マフィアにより精製され、米国へ大量密輸されている。それでいてメキシコは麻薬原料の輸入を抑制せず、また中国も米バイデン政権がフェンタニル(オピオイド系の1種)原薬のメキシコ輸出抑制の要請したにもかかわらず、正規に医薬品材料として輸出しているとして、量などまったく関係なく、輸出しまくっている。
米国ではオピオイド問題を当初トランプ氏が取り上げ、上場の医薬品メーカーの代表が逮捕されるなど社会問題となった。医薬品会社の代表は、米全国の医者に対して、オピオイド系の薬剤オキシコンチンを向精神薬として患者に大量投与させ、それまで赤字企業だった同社を高収益企業に変身させ、株価も急騰させていた。
バイデン政権はウクライナに塩漬け、フェンタニル死亡者数は2023年には、2016年(死者数4.6万人)当時より、過剰摂取などにより10万人超と倍増している。
オピオイド問題は、トランプ氏のフィールドワークであり、中国政府とメキシコ政府に対して徹底した追求と制裁を同時進行させるものと見られる。また、国境の壁の原質ともなっている。
オピオイド(Opioid)は、ケシから採取されるアルカロイド(天然由来の有機化合物)や、そこから合成された化合物、また、体内に存在する内因性の化合物を指す。
鎮痛、陶酔作用があり、また薬剤の高用量の摂取では昏睡、呼吸抑制を引き起こす。
医療においては手術や、がんの疼痛の管理のような強い痛みの管理に不可欠となっている。
こうした薬剤を向神製剤として医療機関が大量に配布したことに始まり、トランプ1政権が厳格運用を指示、当然、医療機関から麻薬組織に販売が移行し、メキシコの麻薬組織の膨大な資金源となっている。
中国政府は、オピオイドの一種であるフェンタニルの生成につながる化学物質の製造に直接補助金を交付している。中国はフェンタニルの類似体、前駆体、その他の合成麻薬を製造する企業に対し、国外に販売する場合に限って、付加価値税の還付という形で補助金を提供し続けているという(今年4月現在)(米特別委員会が指摘)。
中国はケシやアヘン類(ケシの実から抽出したのがアヘン/アヘンを精製するとモルヒネ)をアフガン、ミャンマー、ベトナムの山岳地帯などで栽培されている。