45社乱立の中国自動車業界 24年の内容 トヨタbZ3Xで挽回へ
中国では2019年まで多額のEV購入補助金が付き、新興EVメーカーは客と結託し架空販売を繰り広げ、販売して補助金を獲得して即解体、再度、高価なバッテリーを未販売のホディーに搭載して再度補助金狙い販売、そうした行為を繰り返していたことが2019年に発覚、不正の多くの新興自動車会社が破綻させられた経緯がある。それほど中国には自動車メーカーが多く存在する。
中国メーカーもEVの新時代到来で大量生産時代に突入、2019年2025年1~3月では中国民族系が販売の68%を占めている。
中国の自動車販売台数に占める中国民族系メーカーの販売シェアは
2020年38.0%、
21年45.3%、
22年50.7%、
23年56.2%、
24年65.1%。
<多すぎる新エネ車メーカー>
販売データだけでも45社、ブランドは70以上
中国自動車流通協会乗用車市場情報連席分会(乗連分会)によると、3月の新エネルギー車の販売台数は前年同月比39%増の98万8000台で、全乗用車に占める割合は51.1%だった。このところ50%前後で推移し、乗連分会の2025年の見通しの57%には届かず、想定を下回っている。
中国の企業情報サイト「天眼査」によると、中国には新エネルギー車関連企業が142万7千社あり、2024年は33万2千社、2025年は3月までに6万5千社が新規登録されている。
乗連分会は、中国の第1四半期(1~3月)における新エネルギー車の卸売販売台数を発表した。このデータには45社が記載されており、完成車メーカーが少なくとも45社存在することになる。関連企業数はもとより完成車メーカーも多すぎだろう。
ランキング上位は以下の通り。
スクロール→
2025年1~3月 中国、新エネ車販売台数ランキング |
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中国自動車流通協会版 |
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メーカー |
販売台数 |
1 |
BYD |
986,098 |
2 |
吉利汽車 |
339,200 |
3 |
テスラ中国 |
172,754 |
4 |
上汽通用五菱 |
168,974 |
5 |
長安汽車 |
159,902 |
6 |
奇瑞汽車 |
155,785 |
7 |
小鵬汽車 |
94,008 |
8 |
理想汽車 |
92,864 |
9 |
零跑汽車 |
87,552 |
10 |
小米汽車 |
75,625 |
7~10位は新エネルギー社製造のため新たに設立された「新勢力」が占めているが、生き残れるのだろうか。
<生き残りの条件は事業規模>
経済メディアの財経頭条は、資金量だけでは生き残れず、事業規模が生死を決すると論じている。
新エネルギー車事業は従来メーカーか新勢力を問わず、多額の研究開発投資、低価格競争、急速な業容拡大というビジネスモデルで、その結果、業界全体で損失を拡大させ続けている。
中国自動車流通協会によると、中国の2024の自動車業界の総収入は前年比4%増の10兆6500億元(約213兆円)だが、利益は同▲8%減の4623億元(約9兆2460億円)だった。
業界の利益率は4.3%にすぎず、工業企業の平均6%を大きく下回っている。
業界のコストは5%上昇し、70以上のブランド、330以上のモデルが価格競争に巻き込まれ、1台当たりの利益を著しく圧迫している。
中国では年間販売台数が
30万台を超えてようやく収益が生まれ、
50万台以上でコスト面で優位に立ち、
100万台超えて初めて持続可能な競争力が形成されるという。
<3つの「規模の効果」>
業界トップのBYDの2024年の売上高は前年比29%増の7771億200万元(約15兆5420億円)、純利益は同34%増の402億5千万元(約8050億円)だった。
過去3年間の1台当たりの利益は22年が17万4千元(約348万円)、2023年が15万9千元(約318万円)、2024年が14万5千元(約290万円)と低下したが、1台当たりのコストも2022年が14万4千元(約288万円)、2023年が12万3千元(約246万円)、2024年が11万2千元(約224万円)と同じように低下している。
BYDの2024年の総販売台数は前年比41.3%増の427万2100台、売上高は同27.7%増の6173億8200万元(約12兆7736億円)(EVバスなど商用車含む)だった。上述の売上高にはEV用などのバッテリー販売高が含まれているものと見られる。
2023~24年はBYDがテスラに仕掛けた年で、高級車から8万元台の低価格車のEVを販売するなどして急成長させ、瞬く間に中国市場で一番販売する自動車メーカーとなった。
中国市場は2020年まで民族系の販売シェアは40%前後だったが、21年以降、新エネ車の販売の急拡大に伴い、民族系の販売シェアも急拡大している。
2024年も景気刺激策で5年以上経過の車両の買換え補助金など購入補助制度により成長は続いており、中国経済が低迷する中、自動車業界だけが好調を維持している。
スクロール→
中国の自動車販売台数推移/万台 商用車含む |
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販売台数 |
前年比 |
うち新エネ車 |
前年比 |
シェア |
2020年 |
2,531.1 |
-1.9 |
136.7 |
10.9 |
5.4 |
2021年 |
2,627.5 |
3.8 |
352.1 |
157.5 |
13.4 |
2022年 |
2,686.4 |
2.1 |
688.7 |
93.4 |
25.6 |
2023年 |
3,009.4 |
12.0 |
949.5 |
37.9 |
31.6 |
2024年 |
3,143.6 |
4.5 |
1,286.6 |
35.5 |
40.9 |
25/1~3 |
747.0 |
11.2 |
307.5 |
47.1 |
41.2 |
これらは以下の「3つの規模効果」によるものだと指摘されている。
1.調達規模の効果
中国の調査会社・高工産業研究院によると、自動車メーカーが年間30万台販売すると、電池材料の調達コストは▲18~22%低下する。
2.生産規模の効果
●テスラの上海ギガファクトリーは稼働率が95%に達しており、1台当たりの製造コストは同社の米国工場より▲30%低い。
3.研究開発規模の効果
●BYDは2024年に研究開発費542億元(約1兆840億円)を投じた。これを販売台数427万台で割ると、1台当たり1万2700元(約25万4千円)となる。2023年の研究開発費は396億元(約7920億円)で、1台当たり1万3100元(約26万2千円)だった。
●吉利汽車の2024年の研究開発費は1台当たり前年比▲18%減の1万2700元(約25万4千円)だった。
中国自動車工業協会によると、新エネルギー車メーカー大手26社の研究開発費は36.8%増加、一方、利益は9.7%しか増加していない。
<新勢力の戦略の動向>
●新勢力トップの理想汽車の2024年の売上高は1445億元(約2.9兆円)だったが、純利益は前年の118億元(約2360億円)から80億元(約1600億円)へと▲31.9%減少している。1台当たりの利益率も21.5%から19.8%に低下。その原因は製品ミックスや価格戦略によりコスト削減効果が相殺されたためだという。
●零跑汽車の2024年の売上高は321億6400万元(約6432億円)で、前年比92%増と急進した。利益率は前年の0.5%から8.4%へと急上昇した。しかし、2024年通年では▲28億2000万元(約564億円)の赤字となった。
●小鵬汽車は「MONA M03」と「P7+」の2車種がヒット、2024年の売上高は前年比33.2%増の408億7千万元(約8174億円)で、利益率も1.5%から14.3%へ大幅に上昇している。
●スマホから家電、EVに進出したシャオミ子会社の小米汽車は2024年3月に初のEV「SU7」を発売し、新エネルギー車業界に参入した。同社の2024年の販売台数は約136,800台(1台当たり単価24万元)、売上高は328億元(約6560億円)で、純利益は▲62億元(約1240億円)の赤字となり、利益率は▲18.5%、1台当たり4万5300元(約90万6000円)の損失を出している。
新勢力の中で黒字を確保したのは理想汽車だけ、大規模な利益には程遠い。そのため、新勢力は自動運転や高速充電などニッチな分野での競争力を磨き、生き残りを目指している。
○小鵬汽車は2024年に研究開発費の50%超に当たる50億元(約1000億円)を自動運転システムに投じた。
○理想汽車は独自の自動運転技術、
○蔚来汽車は自社開発チップや電池交換技術に注力している。
各メーカーは独自の技術力で淘汰や再編の波を乗り切ろうとしている。
日系合弁企業に変化
新エネ車出遅れ代表国の日本勢は、中国の第1四半期における新エネルギー車の卸売データの下位(全45社)に並んでいる。
31位 広汽トヨタ、4,943台
33位 東風ホンダ、4,265台
34位 広汽ホンダ、4,134台
36位 一汽トヨタ、3,094台
40位 長安マツダ、2,500台
しかし、今年は大きく変貌が予想されている。
広汽トヨタのEV「bZ3X」が3月6日に発売され、1時間で1万台を受注。日系企業の突破口となりそうだ。
ただし、生き残りの条件は中国各社と変わらず、大規模な利益と突き抜けた技術を両立しなければならない。
新エネ車関連企業142万7千社の中から有用な提携先を発掘し、淘汰と再編を主導。直近では各社の合弁相手、第一汽車、東風汽車、長安汽車の3社が国主導で戦略的再編を実施すると伝えられている。背景が大きく変わり、時間が切迫してきている。
以上、レコードチャイナなど参照
スクロール→
中国 2025年3月までの自動車販売台数状況 |
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中国自動車工業会版(工場出荷台数) |
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3月 |
1~3月 |
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台数/万台 |
前年比 |
台数/万台 |
前年比 |
乗用車 |
246.8 |
10.4 |
641.9 |
12.9 |
商用車 |
44.7 |
-2.4 |
105.1 |
1.8 |
合 計 |
291.5 |
8.2 |
747.0 |
11.2 |
うち新エネ車 |
123.7 |
40.1 |
307.5 |
47.1 |
うちうちEV |
83.8 |
53.3 |
202.3 |
53.6 |
トヨタ「bZ3X」=「铂智3X」