サムスン電子、再び減益へ─半導体不振とウォン高直撃、韓国経済に広がる陰り
韓国の経済を牽引してきたサムスン電子が、再び厳しい局面に立たされている。証券業界の最新予測によれば、同社の2024年第2四半期(4~6月)の営業利益は平均6兆3293億ウォン(約6700億円)とされ、第1四半期から減少に転じる見込みだ。原因は主力である半導体事業の不振と、為替市場でのウォン高だ。
回復期待の第1四半期から一転、足を引っ張る半導体
本来、第2四半期はスマートフォンの新製品投入の谷間を、半導体部門が支える構図が期待される。しかし、今年はその構図が崩れた。AIブームの波に乗るはずだった高帯域幅メモリー(HBM)の成績が振るわず、ファウンドリ(半導体受託生産)事業も赤字が続く。
競合のSKハイニックスが、第1四半期に7兆4405億ウォンの営業利益を記録し、第2四半期には8兆ウォン台後半に伸ばす見通しなのに対し、サムスンの低迷ぶりは際立っている。市場関係者の間では、「技術競争力の鈍化が表面化した」との見方も出ている。
為替の逆風、グローバル企業としてのリスク顕在化
ウォン高も重くのしかかる。サムスン電子の収益はドル建ての輸出に大きく依存しており、為替がウォン高に振れるたびに収益を押し下げられる。製造業が為替に翻弄されるリスクを、改めて露呈した形だ。
成否を握るHBMとNVIDIA──“AIの主戦場”で出遅れ
サムスンは第5世代HBMの12層品をAMDには供給開始したが、最大の顧客となるべきNVIDIAとの契約には進展がない。このままではAI半導体市場での主導権をSKハイニックスに奪われかねない。
チョン・ヨンヒョン副会長は「下半期から市場をリードできる」と意気込むが、市場では懐疑的な見方が支配的だ。
巨額投資と戦略のねじれ──“攻め”から“守り”へ?
テキサス州や韓国内で建設中のファブ、そして来年から本格化する龍仁(ヨンイン)団地への38兆円規模の投資も、業績次第では軌道修正が必要になる。すでに一部プロジェクトでは竣工の遅れも報告されている。
13日には李在明(イ・ジェミョン)大統領とイ・ジェヨン会長が会談し、「国内投資は支障なく実行する」と強調したが、現場の不安は拭いきれない。
日本企業への示唆──“次は我々か”という危機感
サムスンの不振は、日本の半導体産業にとっても他人事ではない。TSMC熊本工場に代表される国内回帰の動きが進む中で、AI半導体の覇権争いに乗り遅れれば、同様の“失速”が起こりうる。技術開発力と需給のバランス、そして為替耐性。いずれも、今後の日本企業に突きつけられる課題である。
結語
サムスン電子の業績後退は、単なる一企業の失速ではなく、韓国の産業構造や通貨政策、さらにはグローバルな半導体覇権争いの縮図でもある。2024年下半期、同社がどのように反転攻勢に出るのか──その成否は、アジア全体の産業地図にも波紋を広げることになるだろう。