「結婚式の非常識」江口満(書き散らし)
江口満さんのエッセイ『書き散らし』の1997年11月に書き散らした項の「結婚式の非常識」は、平成18年(2006)の長崎県のビッグニュースをドンピシャリと予言している。
1997年は平成9年であり、高田県政最後の年である。
平成9年は消費税が5%に上がった年であり、県内では壱岐「原の辻遺跡」が国遺跡に指定され、県営野球場(ビッグNスタジアム)完成した年である。
江口満(書き散らし)
「結婚式の非常識」
結婚式のシーズン。この秋は四組から案内状を頂いた。
親類、友人、同僚、知人のそれぞれ係わりが違うので、何かと比較文化論を楽しみたい。
しかし、薄給の身にはお祝い金が悩ましい。
十年前は一万円が相場だったのに、いつの間にか二倍から三倍に上がった。
そのアップ率や消費税の比ではないのに、誰も文句を言わない。
その分、新婚家庭の足しになるならまだしも、結局はブライダル産業が潤うだけというのが
悔しい。
料理は今の半分でいい。どうせ食べきれない。引き出物はいらない。
いつもタオルかシーツ、時には鍋を貰うが、使い道に困ってガレージセールに出すのが関の山。
気が済まないというなら、記念のテレホンカードで十分である。
誰も食べられないウエディングケーキは滑稽。
使い古しのプラスチックのケーキより、みんなが飲める樽酒の方が人間的である。
宴会が始まったら、二人は各テーブルを回るべし。
せっかくの余興も新婚不在ではおもしろくない。
それにしても、お色直しの時間はどうして長いのか。
演出しすぎのキャンドルサービスもいらない。
不思議なのは会場案内が例えば『谷川家金子家御披露宴会場』と、家単位になっていること。
戦前の家本位主義がここではまだ生きている。
さらにおかしいのは、結婚式を貫く男性中心主義。
仲人あいさつはもちろん、来賓、親族代表、新郎新婦あいさつに至るまで、新婦の友人代表を除けば、
スピーチはすべて男ばかり。
男女雇用機会均等法はどこにいったのか。
イギリスの諺に曰く。「結婚は悲しみを半分にし、喜びを倍にし、生活を四倍にしてくれる」。
結婚の時から無駄な金は使う必要はない。
おかしな習慣も直すべし。「結婚指輪は給料の三ヶ月分が常識です」というCMに頷いている若いあな
た、そんな常識はまず疑ってかかることです。
(1997年11月)
「不思議なのは会場案内が例えば『谷川家金子家御披露宴会場』と、家単位になっていること」。
ドンピシャっと予言している。
谷川弥一衆議員の長男・谷川喜一氏と、金子原二郎参議員(当時は長崎県知事)の長女・金子富貴さんが
結婚するのは、このエッセイ「結婚式の非常識」が書かれてから約10年後のことである。
江口満さんにはノストラダムスのような予知能力があるようだ。
ただ、結婚の予知能力はあっても、離婚の予知能力まではなかったようだ。
「長崎浪人・中山洋次」