アイコン 3万年前の琉球列島 どこから来た琉球人


石器時代

日本列島の人類史は、大陸から海を渡ってきた後期旧石器時代の人々によって、3万8000年前頃に幕を開けた。そうした中で、3万5000~3万年前には、琉球列島の全域に人が拡散していた。

しかし、ここで1つ難問がある。

当時の人々は、島に偶然漂着したのか、島を目指して航海したのか、どちら?

これには漂着の確率を算出する必要があり、人類学者はその方法について長い間悩んできた。今回、そのためには海洋学で海流の実態調査に使われている衛星追跡機能を備えた「漂流ブイ」を利用すればよいことに気づき、「人類学者×海洋学者」の日台共同研究チームを立ち上げた。
その途中経過は、2018年に国立科学博物館の動画で公開している。
今回、フィリピンからの漂流も含めて総合的な分析を終えた。その最終成果を論文として公表した。
新たな解析から次のことが判明した。

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<奄美大島以南の島々への漂着確率>
地形、過去の地殻変動記録、生物分布、復元された過去の海水温構造、海底堆積物、コンピューターシミュレーションなど様々なデータから、黒潮が台湾~与那国島間を通過して東シナ海へ入る流路は、過去10万年以上変わっていない。1989~2017年の29年間の様々な季節に、台湾とフィリピンの沿岸から流された138の漂流ブイの動きを解析した。
そのうち127が黒潮に乗って北へ運ばれたが、その大多数(95%)は黒潮を横断できず、横断した6つのうち沖縄の島から20km圏内に近づいたものは4つ(全体の3%)だった。

黒潮を横断した6つの漂流ブイの1つは、台風の影響を受けていた。残りの5つの動きを、スーパーコンピューターによる最新鋭の海流予測システム(海洋研究開発機構のJCOPE)で評価すると、北風や大洋上に発生する渦で黒潮が乱れたときに、横断が起こっていた。
台風や北風で海が荒れているときに舟を出す人はまずいないので、漂流舟が黒潮を横断する確率はさらに小さいと予想される。

東京大学の井原泰雄らが2020年7月に発表した関連論文によれば、新しい島で人口を維持するには、男女を含む少なくとも10人程度のグループが渡る必要がある。そのような条件を満たす漂流が起こる確率は、さらに小さくなる。
つまり、古代の舟が黒潮に流されても、沖縄の島に漂着することはほとんどない。
さらにその舟に10人以上の男女が乗っている確率(狩猟採集社会であれば2つ以上の家族が想定される)も小さいと考えられ、沖縄への漂流説は支持できない。

<さらなる発見>
台湾から流れた8つの漂流ブイ(7%)は、台湾沿岸から14~20日後にトカラ列島~九州方面に流されていた。
従って、これらの島に台湾から漂着することはあり得るが、命をつなぐには、男女の集団が14日以上の漂流に耐えなくてはならない。
一方で、台湾やフィリピンから流された漂流ブイの多くが、大陸側へ戻ることがわかった。
このことから、「黒潮に流された旧石器人の舟が生還し、それによって蓄積された黒潮についての知識に基づいて、現実的な作戦を練って与那国島を目指した」というシナリオができると予測する。

[ 2020年12月 4日 ]

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