アイコン ルノーサムスン 労組無期限全面スト突入へ 労組に対するロックアウトに対抗


韓国では昨年唯一賃上げ交渉が妥結に至らなかったルノーサムスンで、労使対立が激化している。
同社のドミニク・シニョーラ社長(2017年10月CEO就任)が4日、社員に送ったメッセージで「昔は『もう一回』のチャンスがあったかもしれないが、今は全世界が(新コロナ及びEV・自動運転化により)困難な時期」だとして「ルノーサムスンだけ2回のチャンスが訪れると考えてはならない」とし、「2度目のチャンスはない」とする警告メッセージを送った。
さらに「今の時期を逃せば、我々の車を見せるチャンスを逃すことになり、未来がさらに不透明になるだろう」とし、「短期的な利益より、目の前に押し寄せた現実の問題を直視してほしい」とも記した。

ルノーサムスンの労組は4日、2020年の賃上げ交渉での隔たりが大きいとして8時間のストを予告していた。
これに対し会社側は同日から、釜山工場と全国サービスセンターの争議参加者らを対象にロックアウトの断行を決定した。
これを受け、組合は5日、態度を硬化させ、無期限・全面ストに突入することを決定した。
ルノーサムスンの民主労総の組合員比率は全従業員の25%程度だとされている。

ルノーサムスンの労組は、20年の賃上げ交渉で基本金7万1687ウォン(約7000円)の引き上げと激励金700万ウォン(約68万円)の支給などを要求しているが、会社側は経営状況の悪化を理由に、基本給の凍結と激励金500万ウォン(約48万6500円)の支給を提示し、両者の主張は昨年から平行線をたどったままになっている。

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ただ、2019年の争議時にルノー側は撤退もありうるとしたため、労組員のスト破りが多発し、労組離れの労働者らにより操業は続けられた。今回も多くの労働者たちによって4日も操業しており、会社側はストに突入するとした労組員だけをターゲットにロックアウトしている。

ルノーサムスンは2018年・19年の賃上げ交渉の際にも組合によるストと会社側による組合員に対するロックアウトをおこなっている。
当時、ストによる売上損失額は推定6000億ウォン(約580億円)といわれた(2019年し操業を継続したことから損害額は少ないと見られる)。特に今年はルノーサムスンが経営難に苦しんでいるため、労使対立に対する懸念の声がいっそう高まっている(ルノーサムスンどころかルノー本体が経営不振に陥っている)。

ルノーサムスンは昨年、新コロナ感染拡大の余波で▲790億ウォン(約77億円)の営業損失を計上し、8年ぶりに赤字に転落した。今年に入っても、世界的な車載用半導体の不足で生産への影響を不安視する声が高い。

会社側は、ストによって生産に支障が出た場合、ルノー本体が韓国の工場の生産割当量を縮小する恐れがある点を最も懸念している。

ルノーサムスンは、釜山工場で生産している人気小型SUV(スポーツタイプ多目的車)XM3(欧州名:ニュー・アルカナ)を昨年末から欧州に輸出している。
シニョーラ社長は「ニュー・アルカナ(XM3)成功のために、初回の生産分の納期とボリュームの維持が最も重要だ」として「我々が欧州の顧客から最終的に選ばれるために、必ず初回の物量をディーラーにスケジュール通りに引き渡さねばならない」と説明した。
ルノーサムスンは、釜山工場で生産している人気小型SUV(スポーツタイプ多目的車)XM3(欧州名:ニュー・アルカナ)を昨年末から欧州に輸出している。
以上、朝鮮日報、中央日報、聨合ニュースなど参照

2020年のルノーサムスンの韓国市場での販売台数はSUVの「QM6」と小型SUVの「XM3」がけん引し、前年比10.5%増だった。一方、海外輸出は新コロナの影響もありEVの「トゥイージー」(1453台)が前年比103.2%増加したものの、SUV「QM6」と受託生産していた日産の北米向けSUV「ローグ」が減少し、2019年に比べ▲77.7%と激減していた。

文政権と組んず解れず状態の過激な民主労総、韓国の労組は産業別労組で自動車メーカーは金属労組に入る。
また、穏健な韓国労総は過激性がないゆえに20代・30代に受け入れられず、文政権になり組合員数の増加は見られない。

自動車労組の見本は現代自動車労組にあり、ストを繰り返し、賃上げと多くの各種条件闘争を行い、今では貴族労組と呼ばれるほど高賃金と好条件を勝ち取っている。それでいて生産性は低い。
そのため、どこの自動車労組も現代自動車労組と同じ手法をとっている。

ルノーサムスンは、2018年までに日産がゴーン采配で5年間米国輸出用のローグ(エクストレル)の受託生産が切れた(切れた後も生産は続いた)。それにより代賛生産車問題を抱えた。ルノー本体はXM3をルノーサムスンに生産させることで生産車問題に決着、昨年4月からXM3を韓国市場に投入、しかし、新コロナの影響から欧州市場への投入が遅れ、昨年期は赤字を露呈した。欧州の車両販売は回復途上にあるものの、今年に入っても車載用半導体問題を抱えたが基本的には軌道に乗せている。そうした中での組合のストに至っている。ルノーはXM3をスペイン工場でも生産している。

日産は、ゴーン問題発覚前、米国ではローグの販売が好調だったが、その間、ルノーサムスンのストにより販売に一時支障を来たしていた。

ルノーグループのモゾス副会長(製造・供給担当)は今年2月、ルノーサムスン工場を訪れ、「私たちは経験したことのない厳しい時期を体験している。競争力を高めるという約束を守らなければ代案を探す」と明らかにした。モゾス副会長は「生産性を向上するという約束を信じて最高経営陣を説得し、ニュー・アルカナ(XM3)の欧州向けを釜山工場で生産することに決めたが、2020年末基準でその約束は履行されていない」と叱責した。副会長の「代案」とは別工場での生産=「撤退」を意味すると解せられている。

品質(Q)、費用(C)、時間(T)、生産性(P)に基づいたルノーグループの独自評価によると、釜山工場(=ルノーサムスン工場)は世界19ヶ所のルノー生産基地で10位。工場製造原価順位だけ見れば釜山工場は17位にとどまり、生産性の低さが際立っている。
しかし、ルノーは撤退せず、韓国にとどまり続けており、本体の業績がこれ以上悪化しない限り、今後も撤退しない確率が高い。
すでにアメリカ勢は世界の生産網・販売網の大規模見直しを終えている。

同じような問題は韓国GMも抱えており、外資にとっては民主労総の過激な闘争に手を焼き、そのたびに撤退をちらつかせるものの、すでにそうした手の内は労組に見透かされている。

韓国の自動車業界では、ストは毎年恒例であり、ストを人質にした組合側の賃上げ要求もこれまでにエスカレートさせてきた。会社側も利益が出ているときにはある程度要求を飲むが、業績悪化でもお構いなしに労組は要求を提示してくることから対立が生じる。ただ、政治は組合が支援する左翼政権であり、組合有利、企業不利な環境下にある。

韓国で文政権のような左翼政権が続けば、現在でも民主労総の組合員数は拡大し続けており、いろいろな企業に民主労総の組合が入り込み、生産体系・サプライチェーンに何れ支障を来たすことになる。

サムスン電子は組合を徹底して作らせないことで有名な会社、それでも文政権になり、政権がバックアップして組合が結成されている。しかし、元々好待遇のサムスン電子であり組合員数は極僅かとなっている。

↓<XM3=ニュー・アルカナ>
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[ 2021年5月 6日 ]

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