中国 電力不足長引く 最大産炭地・山西省が豪雨被害 物流網寸断 世界へ影響も
中国は2つの事象で電力不足に陥っている。
1つ目は、政府の新エネ政策により石炭供給量が減っていたこと。
カーボンニュートラル2060を表明した中国政府、これまでも自動車や電力において新エネ政策を推進してきたものの、経済成長にいまだ石炭火力発電所への電力依存度は60%とされる。発電所のLNGなどへの切り替えを推進するためか石炭そのものの供給を減らしたこと。
2つ目は、中央政府が豪州からの石炭輸入を禁止しているところに、世界経済が新コロナから急回復し石炭需要が急増、連れて価格も急上昇、中国の石炭火力発電所は逆ザヤになることから石炭在庫を減らしていたこと(現在、地方政府が電気料金の2割値上げを認めているところも出てきている)に起因している。
こうしたところに、主要産炭地の山西省、陜西省が豪雨被害の影響を受け、石炭物流網が大混乱に陥っている(10/1~7日黄河支流域などの河川氾濫を伴う豪雨被害)。
中国の石炭先物は13日、再び最高値を更新した。 鄭州商品取引所の石炭先物価格は一時8.8%高の1トン=1640元(約2万8640円)と、一時最高値を記録している。
こうした影響が続けば、各地の発電所の石炭不足は長期化するばかりか、最大の需要期である冬季には深刻な電力不足・暖房熱源不足に陥る危険性を秘めている。
石炭の輸出国・輸出量(15億トン前後)は限られ、価格も中国が豪州炭を購入禁止し、ほかの輸出国へ買い付け入り価格を高騰させところに、世界経済の急回復、石炭輸入増からさらに石炭価格が高騰しているも。
中国の石炭埋蔵量は、1980年代の資料で1.5兆トンとされ、地区別には華北地区が最も多く、全国総埋蔵量の49.2%を占める。その次に、西北地区30.4%、西南地区8.6%、華東地区5.7%、中南地区3.06%、東北地区2.97%となっている。
省、市、自治区単位では、山西省、内蒙古自治区、陜西省、新疆ウイグル自治区、貴州省と旧寧夏省の6つの省区が最も多く、埋蔵総量の約81.6%を占めている。
石炭生産も山西省が一番多く、陜西省、黒竜江省、山東省など中国北部が多くを占めている。
昨年は長江(揚子江)上・中流域が豪雨被害に見舞われたが、今年は6月から黄河流域に豪雨被害が続出している。
さらに今年は長江上流域にある発電所の発電量が水不足から落ちており、中国全体の電力不足に拍車をかける一因にもなっている。
石炭価格の高騰は、中国経済を脅かす懸念材料、すでにほかの火力発電量を増やすため原油・LNGを大量買付けに走り、石炭どころか、こうした燃料価格も急上昇させている。
コントロールに失敗すれば、中国経済はすでに不動産不安・金融不安・電力不足に陥る中、エネルギー・資源価格の高騰から全体が不安定な状況に陥る危険性もある。
そうした事態に陥れば世界経済にも深刻な影響が出る。
スクロール→
世界の石炭生産量ランキング |
世界の石炭消費国ランキング |
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|
2020年 百万トン |
|
2020年 百万トン |
||
1 |
中国 |
3,743 |
1 |
中国 |
3,830 |
2 |
インド |
779 |
2 |
インド |
976 |
3 |
インドネシア |
551 |
3 |
米国 |
419 |
4 |
米国 |
488 |
4 |
ロシア |
205 |
5 |
オーストラリア |
473 |
5 |
日本 |
171 |
6 |
ロシア |
386 |
6 |
南アフリカ |
169 |
7 |
南アフリカ |
247 |
7 |
インドネシア |
139 |
8 |
ドイツ |
105 |
8 |
ドイツ |
138 |
9 |
カザフスタン |
104 |
9 |
韓国 |
115 |
10 |
ポーランド |
101 |
10 |
トルコ |
109 |
11 |
トルコ |
70 |
11 |
ポーランド |
100 |
12 |
コロンビア |
65 |
12 |
オーストラリア |
99 |
|
|||||
石炭輸出国 |
輸入国 |
||||
|
2019年/万トン |
|
2019年/万トン |
||
1 |
インドネシア |
45,000 |
1 |
中国 |
29,850 |
2 |
オーストラリア |
39,000 |
2 |
インド |
24,690 |
3 |
ロシア |
22,000 |
3 |
日本 |
18,500 |
4 |
米国 |
8,000 |
4 |
韓国 |
13,010 |
5 |
南アフリカ |
7,500 |
5 |
台湾 |
6,750 |
|
合計 |
142,000 |
|
合計 |
142,360 |
・石炭は品質により、コークス用から発電用まで価格差が大きく、豪州炭は高品位とされる。 |
中国は大気汚染問題から、石炭火力発電からLNGに切り替え、再生エネルギー発電を増加させてきたが、元々世界最大の石炭産出国、電力を石炭火力に依存してきた経緯があり、経済規模が大きくなると共に、全体の電力需要が増加し続け、なかなか石炭火力発電の率を下げられない現実に直面している。
スクロール→
中国の電力構成 近年版 |
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発電 |
構成 |
テラW |
石炭火力 |
60.8% |
4,631 |
石油火力 |
2.1% |
160 |
LNG火力 |
3.3% |
253 |
水力 |
17.8% |
1,355 |
太陽光 |
1.8% |
|
風力 |
4.8% |
|
バスオマス |
1.2% |
|
原子力 |
3.9% |
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中国の産炭地と石炭埋蔵量 |
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1980年代の古い資料 |
埋蔵量 |
|
|
|
億トン |
華北 |
山西省 |
10,662 |
河北省 |
||
河南省 |
||
内蒙古 |
||
西北 |
陜西省 |
1,352 |
甘粛省 |
||
華東 |
山東省 |
1,296 |
|
安微省 |
|
西南 |
雲南省など |
790 |
東北 |
黒竜江省 |
550 |
吉林賞 |
||
遼寧省 |
||
中南 |
江西省など |
350 |
小計 |
15,000 |