理研 感染者激減は記憶免疫キラーT細胞がウイルスを殺したことによるものと
理化学研究所(理研)生命医科学研究センター免疫細胞治療研究チームの清水佳奈子上級研究員、藤井眞一郎チームリーダー(科技ハブ産連本部創薬・医療技術基盤プログラム副プログラムディレクター)らの共同研究グループは、ヒトの体内に存在する季節性コロナウイルスに対する「記憶免疫キラーT細胞」が認識する抗原部位を発見し、その部位が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のスパイクタンパク質(Sタンパク質)領域にも強く交差反応することを示した。
本研究成果は、SARS-CoV-2の重症度診断、ワクチン効果診断、治療薬の開発に貢献すると期待できる。
今回、共同研究グループは、日本人に多いヒト白血球型抗原(HLA)]タイプのHLA-A24:02に結合するSARS-CoV-2のSタンパク質中のエピトープ(=抗体が認識して結合する抗原の特定の構造単位)の同定に成功した。
季節性コロナウイルスに対する記憶免疫キラーT細胞は、このエピトープを交差認識し、SARS-CoV-2に対して抗ウイルス効果を示す。
HLA-A24:02を持つ健常人の多くがこの交差反応性キラーT細胞を持っているのに対し、造血器腫瘍患者では少ないことが分かった。
しかし、造血器腫瘍患者でも効率よくキラーT細胞を誘導できるエピトープ群が集中する「ホットスポット」があることを見つけ、世界で初めて同定した。
このホットスポットエピトープでSARS-CoV-2感染細胞を刺激すると、眠っていた季節性コロナウイルスに対する記憶免疫キラーT細胞が極めてよく反応する。
本研究は、科学雑誌『Communications Biology』オンライン版(12月2日)に掲載された。
以上、
これまで新コロナウイルスのワクチンについて、中和抗体だけが注目されてきた。しかし、ウイルスに対するヒトの防衛機能は、抗体とTキラー細胞の2つを機能させている。
日本は渡り鳥などから、大陸からもたらされる各種ウイルスを大昔から受容し続け、その対策が人体に施されてきたのかもしれない。東南アジアも含めアジア各国も同じだろう。
一方、欧米は、偏西風の関係で、中国奥地などユーラシア大陸内陸部にいるコロナウイルスに感染する機会が大昔から少なく、新コロナ感染症では感染者がアジアと比べ比較にならないくらい多くなっているのかもしれない。
記憶免疫キラーT細胞の存在はファクターXとしても取り上げられるのかもしれない。
国立遺伝学研究所は、APOBEC酵素が働き、新コロナウイルスが持つnsp14酵素の働きを阻害し、自滅させるという説を理研より先に発表している。
フィリピン、インドネシアの感染者の激減を示さなければ、一つの仮説に終わる可能性もある。