アイコン 世界のインフレは今後どうなる


世界の資源・エネルギー、穀物等の上昇は、すでに世界経済に大混乱を招いている。これまでは思惑先行型で相場が形成されてきたが、今後は欧米日等の露制裁による実需で再度混乱することが予想される。

露制裁では欧州にエネルギー制裁をけしかけることはしても内実涼しい顔しているのは原油も天然ガスも世界一の生産量を誇る米国。

米国は世界のGDPの23.9%(2021年/IMF)の巨大国家、バイデン大統領による新コロナ経済対策の巨額政府投資によりあまりにも景気が良すぎて、世界のインフレを誘導している張本人でもある。抑制するために金利を上げ、各国からドル資金が引き上げられ、米国以外は為替安に陥り、新興国と同様に日本も大幅な為替安となっている。

 

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スクロール→

2022年3月のインフレ率

生産者物価指数

年率

総合

食料

米国

8.5%

8.8%

137.0

英国

7.0%

5.9%

123.7

ドイツ

7.3%

6.2%

141.0

フランス

4.5%

2.9%

129.0

中国

1.5%

-1.5%

113.0

韓国

4.1%

3.3%

116.0

日本

1.2%

3.4%

112.0

・生産者物価指数はインフレの先行指数

 


スクロール→

ロシア産の原油と天然ガス

世界比

生産量

輸出量

原油

12.1%

11.3%

天然ガス

16.6%

25.3%

 


 

インフレに至った原因は、
1、COVID19により大きく落ち込んだ経済であるが、その後、各国政府の規制緩和および景気刺激策により、持ち直し回復してきている。その回復が投機筋の先々の思惑によって資源・エネルギー・穀物の先物相場を押し上げ、そうした市場心理から、メーカーや商社が先手を打って買占め、需給バランスも崩れ、急騰しているもの。
(2020年10月、旭化成の半導体工場の全焼により、製造していた音響用の半導体(カーナビ用/ニッチ半導体・・世界シェア70%以上)に不足が生じ、メーカーや商社が自動車の安定生産を目指し、ほかの各種半導体も一斉に買占めたことに全般の半導体に不足が長期間続き、価格も高騰したものだった)

2、3月7日の米欧日等の露制裁、世界は原油の輸出で11%、天然ガスで25%、欧州に限れば4割をロシアに依存しており、今後、ほかの生産地からの購入に変更されることから原油・天然ガスの急騰となった。
ロシアは石炭などほかの鉱物資源やレアメタルも世界へ供給しており、鉱物相場が軒並み急騰した。また、ウクライナは小麦やひまわり(植物油)の一大産地、ロシアも小麦の産地で輸出も多く、穀物・飼料などの価格も急騰している。

3、米金利上昇、各国通貨の対ドル安により、急騰・高騰している商品をさらに為替安で高値買いするしかなくなっている。現実がドル本位制で動いている。
米国は原油も天然ガスも自前しており、価格高騰も国内で調整されるが、新興国では深刻なドル流出問題に発展し、エネルギー源を購入できない国も生じている。それ以前に新興国からドルが金利高で本国に引き上げられており、為替安に拍車をかけている。
以上の3点が大きな資源エネルギー穀物価格の上昇要因である。

一方、下落要因としては、
1、中国の新コロナによるロックダウン、同国最大の商業都市である上海で市民2500万人を対象に、3月末から短期間の予定が実施されたものの、感染者の増加が続き長期化、まだ規制中でもある。また、中国では不動産バブル崩壊による経済低迷により、エネルギー資源等爆買いの買い付けが停滞し、露制裁で一旦暴騰した商品先物価格も高値圏で調整局面にある。
中国向けの船舶は、上海港に荷揚げできず、港外どころか東シナ海一帯に荷揚げ待ち状態で待機し、その数は膨大となっている。
 ただ、ロックダウン効果が出てきており、ほかの都市も含め、新コロナが収束し、経済が回復した場合、先物相場に大きな影響を与えるものと見られる。
中国における新コロナ問題は一時的なものと見たほうが賢明だ。

2、金利高による経済低迷、
米国の3月のインフレ率は8.5%(食料インフレ率も8.8%)が生じており、新コロナからの経済回復により、一時15%に達した失業率も3.6%と新コロナ以前まで回復し、多くの中国からの輸入物価も高騰しているものの、消費が堅調過ぎ、インフレを引き起こしている。
米当局は昨秋より、金融引き締め時の資産購入先細り政策=テーパンリンクで調整、それでもインフレが加速、今度は金利で調整する段階に入っている。3月0.25%引き上げ0.5%に、さらに5月のFOMCでは0.5%の大幅引き上げも検討されるという。

景気が少しでも冷え込めば、物価は下がるが、今秋には米国の中間選挙、引き締め過ぎれば政権への批判となり、インフレが加速しても政権批判となる。
米国は自国の経済だけではなく、外国の為替にも考慮すべきだろうが、そんなことを気にするような国ではない。米景気が加速しているのはバイデン氏の巨額の政府投資にも起因している。

IMFは今年1月、2022年のGDPは前年比で4.4%の上昇としていたが、4月19日露制裁・中国経済を鑑み3.6%に引き下げたが、さらに低下しなければ物価上昇圧力は抑えられない。それには世界のGDPの1/4あまりと最大の米国の景気を冷え込ませるべきだろうが、現実、上記の政治的な環境から不可能となっている。
日本も日銀・財務省・経団連も円安は日本経済にとってためになると喜んでいる。米国経済が堅調で初めて輸出も増加する。しかし、現実は財界の製造業のほとんどはすでに海外に工場移転し、海外で稼いでいるのが実情だ。日本では不正ばかり。

3、為替
すでに新興国では為替安・資源エネルギー高で外貨不足に陥り、IMFに救済を求めている国もある。
全世界の生産者物価指数は急騰しており、これが消費に転嫁できなければ、需給バランスは崩れ、おのずと価格は下がる。
結果、世界が不景気になれば、資源エネルギー価格は下がる。
ただ、欧米等金持ちの国は新コロナ経済対策に強力な政府投資を講じており、消費ニーズも高まることから、貧富は国レベル・個人レベルで拡大する。
世界の金余り現象の資金はグリーン投資(工場投資)に回らず、投機に走っており、金融と実体経済がバラバラに動き、その反動から今後パニックに陥る可能性も否定できない。

4、露制裁
ウクライナとロシアが停戦となれば、露制裁が少しは緩和される思惑が働くと見られる。
しかし、ロシアに恐怖する欧州各国はロシアとの交易を今後全面停止する動きとなっており、その影響は資源エネルギー高が長期にわたり続く可能性が高い。

5、米国のシェールオイルの生産量は、新コロナ以前からまだ15~20%少なく、生産量を増やせば、価格はある程度下がると見られる。ただ、化石燃料を忌み嫌うバイデン大統領は米石油団体(共和党支持)と大統領就任1日目から犬猿の仲になっており、生産業界は新たに投資して生産を増加させてもバイデン政権では投資リスクが伴い利益のためにもならないと知らぬふりをしている。それでも価格の高止まりから徐々に生産量は増加しており、これが改善されたら米国からの輸出が増加し価格は下がる(原油掘削リグ稼動数:2019年12月末677本、22年1月1日480本、4月22日549本/ベーカーヒューズ社版)。

レアメタル資源は極端なEVへの移行政策により、需給バランスが崩れており、EVバッテリー用・モーター、半導体、電子部品用途で、一部買占めもあり、品不足が続き高騰している。先進国はカーボンニュートラルを叫んでいるが、一方で、紫外線防御のオゾン層を破壊するフロンガス生産は1985年のウィーン条約により先進国で規制されているが、中国は当時の先進国をまとめた量より多くフロンガスを今日生産している。
カーボンニュートラルも大事だが、何か政治的に世界が動いているようでならない。世界の天然ガス発電所の多くが天然ガスが高騰して採算が合わず、石炭燃焼に切り替えている現実もある。


スクロール→

4/24日、新コロナ+露制裁による狂乱相場推移

2022

金利は基準金利/対ドルはドル高

4/24

 

21/4/15

22/1/1

4/24

今年高値

年初比

米国金利

0.25%

0.25%

0.50%

 

 

韓国金利

0.50%

1.00%

1.50%

 

 

日本金利

-0.10%

-0.10%

-0.10%

-0.10%

 

対ドルウォン

1,119.0

1,199.0

1,244.8

1,244.8

3.8%

対ドル円

108.9

115.3

128.54

128.9

11.5%

エネルギー関連

年初比 

原油WTI

61.94

75.85

101.65

124.66

34.0%

天然ガス

2.621

3.81

6.454

7.329

69.4%

石炭

94.3

195

326

408

67.2%

資源・工業品

 

1,776.3

1,800.9

1,931.0

2,052.4

7.2%

ナフサ

559.9

728.33

909.38

1,121.72

24.9%

鉄鉱石

172.5

116

145.5

159

25.4%

スチール

5,343

4,579

5,052

5,116

10.3%

自動車・電子関連等資源

 

4.2305

4.4215

4.58

4.8975

3.6%

亜鉛

2,868

3,604

4,435

4,483

23.0%

マンガン

30.25

33.5

33.5

34.48

0.0%

アルミ

2,337

2,839

3,246

3,849

14.3%

ニッケル

16,319

20,881

33,069

48,234

58.4%

リチウム

90,000

277,500

480,500

500,239

73.2%

コバルト

49,750

70,500

82,000

82,000

16.3%

パラジウム

2,811.70

1,825.30

2,374.80

3,180.30

30.1%

マグネシウム

16,450

50,000

38,750

53500

-22.5%

ネオジウム

740,000

1,110,000

1,095,000

1,510,000

-1.4%

穀物・食料関連

 

木材

1,295.50

1,112.00

1,002.60

1,464.40

-9.8%

小麦

644.4

758

1,075.25

1,192.60

41.9%

トウモロコシ

583.66

589.25

791.75

791

34.4%

大豆

1,403.00

1,355.50

1,716.00

1,718.80

26.6%

コーヒー

182.8

223

226

258.4

1.2%

ヤシ油

3,716.00

4,857.00

6,355.00

7,074.00

30.8%

牛肉

20.49

21.86

21.48

22.19

-1.7%

家禽

6.27

6.54

7.98

8.2

22.0%

13.05

14.69

16.205

16.495

10.3%

 

上記の単位


スクロール→

2022

単位

原油WTI

USD/Bbl

天然ガス

USD/MMBtu

石炭

USD/T

 

 

USD/t.oz

ナフサ

USD/T

鉄鉱石

CNY/T

スチール

CNY/T

 

 

USD/Lbs

亜鉛

USD/T

マンガン

CNY/T

アルミ

USD/T

ニッケル

USD/T

リチウム

CNY/T

コバルト

USD/T

パラジウム

USD/t.oz

マグネシウム

CNY/T

ネオジウム

CNY/T

 

 

木材

USD/board feet

小麦

US/Bu

トウモロコシ

CBOT

大豆

CBOT

コーヒー

USD/Lbs

ヤシ油

MYR/T

牛肉

BRL/Kg

家禽

BRL/Kgs

USD/cwt

 

[ 2022年4月25日 ]

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