ユーロ圏 0金利策から2.0%上昇 インフレ率9.0% 財政規律放棄の日本
10月27日、ユーロ紙幣を使用しているユーロ圏は、高いインフレ率に、経済よりインフレ退治が大事だとして0.75%という高い金利を上昇させ2.0%まで引き上げた。
欧州はエネルギーでロシアに翻弄されているが、電力やガソリン価格だけではなく、食料も高いインフレ率を示している。
こうしたインフレに対する国民の不満は、イタリアのようにユーロ圏の政策より自国優先主義の政党が政権を握る可能性が高くなる危険性を帯びている。
(食料インフレの高騰は、石炭から回収する尿素、世界は露制裁でロシアからの尿素が入らなくなり、肥料価格が高騰、作付面積すら減らし、生鮮野菜などの高騰を招いている。また肥料の高騰は畜産物の飼料価格にも大きな影響を与えており、食品価格の高騰のスパイラルに陥っている)
11月2日には米国でもインフレ退治に基準金利(現行3.25%)がさらに引き上げられるが、イエレン財務長官(元FRB長官)は10月27日、GDPが第3四半期2.6%を受け、インフレ退治と経済成長は両立すると述べ、更なる金利上昇を牽制したが、11月8日の中間選挙を控え、FOMCの金利政策の決定会合が開催される。
結果、金利上昇予想は0.75%引き上げだが、0.5%上昇にとどまらせる可能性もある。しかし、3大経済圏(米国+欧州+中国)の米国が、選挙対策に経済を優先させた場合、その反動によりインフレ率がさらに高まる危険性もあり、また欧州に合わせてインフレ退治に動かなければ、その効果も薄れることから、難しい選択を迫られる。
(中国はロックダウンと不動産バブルを崩壊させたことから、直近は低いインフレ率の2.8%)
イエレン氏はFEB長官時代から金利政策において、雇用第一主義でも知られ、眼下、雇用増・賃金増は購買力と直結し、インフレ退治の最大の敵となっている。両立できるものではない。
財政規律が崩壊している日本は第2次補正予算で29.1兆円を支出する。
英国では9月就任したトラス首相が、その政策で大型減税と光熱費補助を打ち出したものの、財源問題から2ヶ月もせずして辞任に追い込まれた。
それほど財政規律には厳しい。
日本のインフレ率が低いのは、税収増で実質賃金が何十年も上がらない購買力の弱さに加え、政府がエネルギー価格への補助、食管制度で小麦等穀物価格の払い下げ価格を調整していることにある(すべて紙切れの国債発行で原資がまかなわれている)。
ただ、10月は、月初からの食料価格の大量値上げもあり、10月のインフレ率の先行指数である東京都の消費者物価指数は3.4%とバブル時代以来33年ぶりの高騰となった。なかでも「生鮮食品を除く食料」は前年同月比より5.9%上昇している。低所得層は生活必需品しか購入しないことから、食料でも必需品価格はさらに高騰している。
米国では民主党と共和党が拮抗しており、大型予算は両院とも制してなければ通らない。予算不足で政府機関の給与さえ支払われないこともある(最近でもオバマ時代とトランプ時代に生じた)。
現在は両院とも民主党が握っており、昨年は1.9兆ドルの超大型の新コロナ経済対策を行い、世界中でバイデンインフレを引き起こしてしまった。
中間選挙では共和党が勝利すると見られている。
トランプもバイデンも世界経済への影響を一切考えない米国№1主義を貫いており、一方的かつ急激、愚か過ぎる政治家たちでもある。来年から執行されるインフレ抑制法もその顕著たるものではないだろうか。
スクロール→
欧州のインフレ率 |
||||||
2022年 |
インフレ率 |
コアインフレ |
食料インフレ |
|||
|
9月 |
8月 |
9月 |
8月 |
9月 |
8月 |
ユーロ圏 |
9.9 |
9.1 |
4.8 |
4.3 |
13.8 |
12.4 |
ドイツ |
10.0 |
7.9 |
4.6 |
3.5 |
17.7 |
15.7 |
フランス |
5.6 |
5.9 |
4.5 |
4.7 |
9.9 |
7.7 |
イタリー |
8.9 |
8.4 |
5.0 |
4.4 |
11.7 |
10.5 |
スペイン |
8.9 |
10.5 |
6.2 |
6.4 |
14.4 |
13.7 |
アイルランド |
8.2 |
8.7 |
5.8 |
5.8 |
9.9 |
8.8 |
オランダ |
14.5 |
12.0 |
5.7 |
5.0 |
12.7 |
13.0 |
リトアニア |
24.1 |
22.4 |
11.9 |
10.9 |
31.0 |
30.6 |
ギリシャ |
12.0 |
11.4 |
4.8 |
4.2 |
13.4 |
13.2 |
デンマーク |
10.0 |
8.9 |
5.9 |
5.9 |
15.3 |
15.9 |
ユーロ圏外 |
||||||
ポーランド |
17.2 |
16.1 |
10.7 |
9.9 |
19.3 |
17.5 |
ルーマニア |
15.9 |
15.3 |
6.5 |
6.2 |
19.1 |
18.2 |
スウェーデン |
10.8 |
9.8 |
9.7 |
9.0 |
16.0 |
14.0 |
イギリス |
10.1 |
9.9 |
6.5 |
6.3 |
14.5 |
13.1 |
参考 |
||||||
米国 |
8.2 |
8.3 |
6.6 |
6.3 |
11.2 |
11.4 |
日本 |
3.0 |
3.0 |
3.0 |
2.8 |
4.2 |
4.7 |
※コアインフレ率はエネルギーと食料を除いたもの。 |