韓国の中国輸出低迷原因究明 輸出商品の競争力弱化
韓国貿易協会の国際貿易通商研究院が18日発表した報告書「最近の中国向け貿易収支赤字の原因診断と評価」によると、今年の中国のIT需要回復(9.3%)はグローバルなIT需要回復(6.8%)より速いと予想した。
報告書によると、昨年の韓国の中国への輸出額は前年より▲310億ドル減少し、半導体、コンピューター、ディスプレイ、無線通信機器、家電の5大IT品目が輸出減少額全体の64%(198億ドル)を占めた。昨年の中国向け輸出は前年比▲19.9%減少している。
報告書では「今年は、昨年の対中国輸出の不振の主な原因であるグローバルIT需要が持ち返し、今年は中国向け輸出と貿易収支は改善されるとみられる」と見ている。
不振だったIT品目の中国向け輸出は回復傾向をみせるが、「電動化」品目の輸入増加と貿易収支悪化は拡大するとの分析が出ている。
電動化品目とは、完成電気自動車(EV)やEV用バッテリー、水酸化リチウムなどのバッテリーの重要素材をいう。
電動化品目の対中国貿易赤字は、2020年の40億ドルから2021年には78億ドル、昨年は164億ドルと毎年2倍ずつ急増している。
米国へ輸出する韓国製EVや中国から輸入したEV用バッテリー原材料を韓国で加工し、米国へ輸出して韓国系のバッテリー工場へ輸出しているもの。
2023年からIRA法に基づくEV購入補助金制度導入の米国にあり、EV大量生産に伴い、韓国系のバッテリー生産も急拡大しており、連れて中国からのレアメタル等原材料の輸入も急拡大しているもの。
注視すべきは中国製EVが韓国へ大量に輸出されており、大衆向けのEVでは、安価な中国製が韓国市場を席巻する可能性もある。
報告書によると、中国の輸入需要の鈍化とともに、韓国製品の競争力低下が中国向け輸出の足かせと指摘された。
中国の需要低迷は、中国経済の低迷によるもので、輸出・国内消費・不動産市場の低迷によるもの、回復には時間を要する。
中国の主な輸入国を対象に分析では、韓国の中国への輸出の減少要因は、
商品構成の弱化(37.9%)、
競争力の弱化(31.9%)、
中国の需要減少(30.1%)の順だった。
輸出減少の要因のうち、競争力の弱化が占める割合は、米国の55.0%に次いで大きかった。日本は21.7%、台湾は7.1%だった。
以上、
かつて日本がそうであったように、中国で生産できるものは日本で生産しても輸出市場で負けてしまう。それどころか国内市場も駆逐されてしまう。賃金が上昇した韓国もそうなってしまうだろう。
中国のIT需要の回復は、欧州経済の回復にかかっている。また、家電も電子製品も今年からAI搭載商品が台頭し、需要を満たすだろう。
ただ、消費者の景気が悪ければ、AI搭載品は付加価値製品となるため価格は高く、需要を満たすかどうかは消費者の懐具合しだいとなる。
新コロナ特需の反動減の一巡とAI搭載型により需要が回復する可能性はあるが・・・。
スマホもパソコン・タブレットも売れていない。EVも値下げしなければ売れなくなっている。
中国の内需回復は不動産規制の撤廃=三条紅線の撤廃が前提となる。
中国では不動産の各種規制の緩和はなされても、購入側の規制緩和が主で、不動産デベロッパーに対する本格的な規制緩和は行われず、恒大だけでも負債総額は48兆円もある。
恒大は、不動産は住宅用から商業用まで、EV開発にも当たり、国内外の債権者に影響を与えている。恒大だけの問題ではなく、ほとんどの民間デベロッパーと多くの地方政府系・第3セクターのデベロッパーが危機に瀕している。
不動産会社の社債は利回りがよく、多くを中国民が債権を所有しており、償還問題を抱え、こうした投資家は消費どころではなくなっている。
リーマンショック後の2010年には中国新幹線や高速道の整備の大公共投資により経済回復を成功させたが、当時の経済規模(=GDP)から2022年は3倍増となっており、海上交通網など大きな公共工事を行ったところで、経済に与えるインパクトは限りなく小さくなっている。