アイコン レアアース中国規制 自動車生産停止 各種モーター類、センサー


米中貿易戦争、米国との関税戦争に対抗するかたちで、中国がレアアース(希土類)などの重要鉱物の輸出を規制し始めたことで、世界の自動車メーカーが生産停止の危機に直面しているとロイター通信が3日報じた。
ニューヨーク・タイムズ紙も「米中の関税戦争が、より致命的な供給網の制御へと転じており、米中貿易戦争の新たな時代が始まった」と分析している。

中国政府は今年4月4日以降、レアアースを輸出する際に政府の許可を義務づけた。
申請には数百ページに及ぶ書類が求められ、許可が下りるかどうかも不透明なため、レアアースの輸出量は従来の半分程度に減少しているという。
ブルームバーグの報道では、4月以降、申請数に対して25%しか認可が出されていないという。申請書類の審査に時間がかかっているのか、申請書類に問題があるのかはっきりしないまま、認可が待ち状態が続いているという。

このため自動車や航空宇宙、半導体、兵器産業の世界の主要メーカーが深刻な供給網の危機に直面している。

 

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自動車にとって、
レアアースは、オートマチックトランスミッション、ABS(アンチロック・ブレーキ・システム)、発電機、ワイパーモーター等各種モーターやセンサー、シートベルト、スピーカー、照明などの重要・主要部品に不可欠となっている。
特にEVモーターに使用される「レアアース磁石」は、ネオジム磁石に添加して磁石保持力強化と耐熱性を持たせるためレアアースのテルビウムとジスプロシウムが不可欠となっている。

ロイター通信は、「このままでは数週以内に自動車工場が閉鎖されかねない」と指摘し、トヨタ、フォルクスワーゲン、現代自動車など主要メーカーが強い懸念を表明していると伝えた。

●ゼネラル・モーターズ(GM)も5月、トランプ政権に非公開の書簡を送り、困難な状況を訴えたという。

●自動車革新連合も声明で、「車両の主要部品にレアアースが必要であり、これらがなければ米国の自動車工場の稼働停止は時間の問題だ」と警告している。

中国によるレアアース規制は、重要鉱物分野における同国の支配力を強化する措置であり、トランプ大統領との貿易戦争における影響力行使を狙ったものだと分析されている。
中国に対して、米国だけでなく日本や欧州諸国も緊急会談を要請しているという。

米ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官は4日、「トランプ大統領と中国の習近平国家主席が今週中に電話会談を行う予定であり、レアアース輸出禁止措置が主要議題となるだろう」と話している。

●独メルセデス・ベンツグループと●BMWは、レアアースを含む自動車部品の不足を回避するため、サプライヤーとの協議を進めている。メルセデスは特定部品の備蓄についても議論しているという。
●米フォード、すでに一部一時生産停止
中国のレアアース輸出承認手続きの遅れにより、部品の輸送が滞るケースが発生しており、輸送コストも一部で上昇していると明らかにしている。
 フォードのシェリー・ハウス最高財務責任者(CFO)は4日、ニューヨークで開催されたUBS主催の自動車会議で「高度に組織化された供給体制にストレスがかかっている」と指摘。中国の輸出規制により、自動車メーカーは代替部品や新たな調達手段を模索せざるを得ないと述べている。
フォードは5月、レアアースの不足を受けて、シカゴ工場でスポーツタイプ多目的車(SUV)「エクスプローラー」の生産を1週間停止せざるを得なかったという。

(フォードは中国CATLのLFP電池の製造パテントを取得してLFP電池を米国で生産する計画を進めているが、トランプ政権は正式にはまだ認可していない。日本のTDKも米国でCATLパテントによりLFP電池を製造する計画を発表している。トランプ政権の認可待ちだが、すでにGMが購入を発表している。ただ、バイデン政権が末期の今年1月初め、中国軍への協力企業としてCATLをエンティティリストに掲載している問題がある)

●BMWの広報担当者は、同社の工場は通常通り稼働しているものの、供給網の一部で中国規制の影響が出ていると説明したが、それ以上の詳細には言及しなかった。

中国は4月4日、トランプ大統領の相互関税措置への報復として、一部のレアアース輸出に対する規制を導入した。 

関連記事:中国がレアアースで圧力-関税引き下げ巡る米との対立で優位に
EV・PHV・FCV・HVの新エネ車だけではなく内燃機関車も、センサー類や電子機器系統などに使われ、これらレアアースの精製加工で中国は市場を支配している。

・・・EV二次電池のリチウムにしてもオーストラリアもアメリカもリチウム含有鉱石(スポジュメン鉱石=リチア輝石)の95%以上を中国へ売却しており、中国は世界最大の石炭採掘による安価な石炭燃焼熱や石炭電力の1050度Cの電熱による「か焼工程」によりリチウムを抽出している。

・・・ほかのレアメタルも同じで、米国でリチウムもほかのレアメタルも産出されるものの、高価な電力と労働力により米国で生産しても、まったく競争力を持たず、含有鉱石を中国へ売却している。

ニッケルについては、最大の産地であるインドネシアでは、政府が昨年から中国を念頭にニッケル含有鉱石の輸出を禁止した。インドネシアは石炭の一大産地でもあり、現在は付加価値を付け輸出するとしてニッケル含有鉱石を粉砕し、国内炭を燃焼させたローターリーキルンで水分を完全に飛ばし、石炭電力の電炉で溶融し、ニッケル金属を抽出している。
コバルトも産地のコンゴ民主国のコバルト鉱山のほとんどの採掘権を中国企業が有し、採掘した含有鉱石を中国へ運び入れ、中国でコバルトを抽出している。
ニッケルやコバルトは韓国勢がEV用に製造している3元系のリチウムイオン二次電池の必須アイテム。
中国勢はEV用バッテリーで、3元系も製造しているが、高価なニッケルやコバルトを使用しない3元系より2~3割安価なリン産鉄リチウムイオン電池(LFP電池)を改造し続け、現在では3元系に匹敵するエネルギー効率を引き出しており、現在では中国EV搭載電池の主力となっている。
その技術は中国勢が保有しており、米国は中国勢の米国進出を規制、輸入も高関税率でシャットアウトしており、車両価格も下げられないどころか、現在ではトランプ関税で米生産車両でさえ輸入部品も多く、車両生産コストがトランプ就任前より大幅に上昇している。

米国自動車販売は、関税前の駆け込み生産や駆け込み輸入増で在庫を増やした分が、ほぼ5月までに販売され、今後はトランプ関税コストでの生産コスト増、輸入コスト増により、販売価格は大幅に上昇することになる。メーカーによって部品などの輸入量も異なり、競争から価格転嫁は限られ、利益率を落とす自動車メーカーが多発するものとみられる。


スクロール→

中国政府のレアアース輸出規制

2025年4月4日から輸出規制のレアアース

サマリウム、

ガドリニウム、

テルビウム、

ジスプロシウム、

ルテチウム、

スカンジウム、

イットリウム

すでに規制していたレアアースとレアメタル等

ガリウム、

ゲルマニウム、

黒鉛(グラファイト)、

アンチモン、

超硬質材料、

タングステン、

テルル、

ビスマス、

モリブデン、

インジウム

 生産量は製品で見るか、含有鉱石の生産量から逆算して生産量を表示するかで全く異なる。例えば、オーストラリアは、リチウムの含有鉱石を採掘してクラッシャーにかけ、粉砕した鉱石を中国企業へ売却、中国企業はオーストラリアから中国へ輸出して、中国で製品化している。リチウム金属(製品は炭酸リチウムおよび水酸化リチウム)はオーストラリアではほとんど生産されていない。

含有鉱石40トンから1トンのリチウム(2.5%)が生産される。

 米国へのレアアースの輸出再開は5月12日、145%の関税を30%に引き下げる交渉過程で、ベッセント財務長官が引き下げる条件にしていたもの。12日以降、財務長官は引き下げられたと思い込んでいたようだが、自動車業界の悲鳴にびっくり、まだ中国政府は米国への輸出規制をしたままとなっていた。そのため、ベッセント長官は中国に対して激怒、しかし、中国は知らんぷり。中国はトランプ×習の電話会談で決着させるようだ。

AI半導体の中国への輸出規制は、中国が総力で開発にあたり、中程度まで追いついている。中程度でもソフトを効率的に制作すれば、よほど高次元の活用でない限り、米最先端AI半導体に比し負けじ劣らずとなる。それほど、中国は叡智を凝縮させ開発にあたっている。

中国では政府が主導してAIや半導体の技術者育成を、2013年にはすでに学生・社会人向けに専門科学技術校を各地の主要都市に開校させ、人材発掘と育成を強化していた。(日本のような掛け声だけと助成金バラ撒きでチョンチョンでは決してない) 


スクロール→

レアアース生産と埋蔵

レアアースの生産

レアアースの埋蔵量

2023年/USGS

2023年/USGS

中国

67.8%

中国

48.9%

ミャンマー

11.4%

ブラジル

23.3%

米国

11.1%

インド

7.7%

オーストラリア

4.3%

オーストラリア

6.3%

ナイジェリア

1.9%

ロシア

4.2%

その他

3.5%

ベトナム

3.9%

2024年の生産量は約30万トン、

2018年のレアアースの埋蔵量は

1.2憶トン/USGS

米国

2.1%

グリーンランド

1.7%

その他

1.9%

 


スクロール→

★レアメタルとレアアースの違い

レアメタル(鉄や銅・アルミ・金・銀などのベースメタル以外をいう)

リチウム

ゲルマニウム

アンチモン

テルル

バナジウム

ニオブ

タンタル

タングステン

ガリウム

インジウム

ビスマス

 

ジルコニウム

ハフニウム

 

チタン

パラジウム

タリウム

(希土類)

ニッケル

バリウム

ホウ素

 

ストロンチウム

白金

マンガン

コバルト

 

ベリリウム

セレン

ルビジウム

セシウム

クロム

モリブデン

 

レニウム

 

 

 

 

希土類元素(レアアース)17種類

スカンジウム

プロメチウム

ホルミウム

ガドリニウム

ネオジム

ジスプロシウム

セリウム

ツリウム

テルビウム

ルテチウム

ユウロピウム

 

イッテルビウム

ランタン

エルビウム

 

イットリウム

サマリウム

プラセオジム

 

 

 

 

[ 2025年6月 6日 ]

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