レアアース輸出規制で欧州企業操業停止、米国は中国に激怒
欧州自動車部品工業会(CLEPA)が明らかにしたところによると、中国がレアアース(希土類)の輸出を制限したこと受け、欧州の一部の自動車部品メーカーでレアアースが不足し、工場や生産ラインの操業が停止、今後、さらに混乱が広がる可能性があるという。
自動車部品メーカーは4月7日以降、数百件の輸出承認を要請したが、これまでのところ全体の25%しか輸出が認められていない。
CLEPAは「手続きは省によって異なっているようで、知的財産関連の重要情報が求められるケースもある」と指摘。
近く手続きが合理化されなければ、今後3~4週間でさらに多くの工場が在庫の枯渇に見舞われる可能性が高いと述べた。
中国は4月、レアアース磁石など一部の重要鉱物類の輸出停止を決定。世界各地の自動車や航空宇宙、半導体、防衛といった産業が構築しているサプライチェーン(供給網)の中枢を揺るがしている。
以上、ロイター参照
米中は145%関税問題で、米国は30%まで下げたが、その条件に、中国はレアアースの輸出規制を解除(少なくとも米国に対して解除)することを条件としていた。しかし、今に至るまで、規制は解除されておらず、交渉にあたったベッセント財務長官は驚き、中国政府に対して激怒、早期に輸出規制を解除するように申し入れた。
インドでもすでにレアアースが不足してEV生産が停滞している。
4月輸出規制のレアアース、磁石に用いる分は、自動車やドローンからロボット、ミサイルまでさまざまな製品の組み立てに必須の素材となっている。
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2025年4月、中国、レアアースの輸出規制品目 |
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品目 |
用途 |
サマリウム、 |
ネオジウム磁石に次ぐサマリウムコバルト磁石(ネオジウム磁石より耐熱性あり)、化学反応の触媒、試薬、がん治療剤や痛み緩和剤の材料 |
ガドリニウム、 |
磁石、光学ガラス、蛍光体(緑)、放射線遮蔽材(医療用、原子炉)など |
テルビウム、 |
テレビのブラウン管や水銀灯の蛍光体、光磁気ディスクの材料など |
ジスプロシウム、 |
ネオジム磁石の添加物、照明、レーザーなど |
ルテチウム、 |
化学反応触媒、放射線医薬品、レーザー、蛍光体など |
スカンジウム、 |
航空宇宙分野(高強度アルミニウム合金)、スポーツ用品など |
イットリウム |
ブラウン管用蛍光体、LED、二次電池の添加物など |
7種の中・重希土類レアアースの金属、合金、関連製品、酸化物とその混合物、化合物とその混合物を輸出規制に指定している。
米USGSによると、中国のレアアースシェアは67.8%、埋蔵量でも48.9%のシェアとされている。
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中国のこれまでに輸出規制のレアアース
中国が2025年4月以前にすでに輸出規制しているレアアース |
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輸出規制は2023年7月から2回にわたり実施していた。 |
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ガリウム、 |
レーザーダイオード、半導体材料、トランジスタ(TFT)、パワーデバイス、蛍光体や発光素子材料基板、燃料電池用 |
ゲルマニウム、 |
半導体材料、ダイオード、光ファイバー、赤外線検知素子、 赤外線用レンズ、半導体エピタキシャル材料(ターゲット材料)、太陽電池(人工衛星)、医療等などに使用 され、電子材料分野では赤外線フィルター |
黒鉛(グラファイト)、 |
リチウムイオン電池など二次電池の必須アイテム |
アンチモン、 |
鉛合金の電極、イリジウムとガリウムの合金が半導体潤滑剤、ケーブル被膜、陶器・ガラス、 |
超硬質材料、 |
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タングステン、 |
抵抗溶接電極、TIG電極棒、高温炉用耐熱構造部品、徹甲弾や砲弾の弾芯、放射線遮蔽材、カテーテル治療器具 |
テルル、 |
特殊鋼(鉄鋼の切削性向上)用添加剤、触媒、テルル化過度に有無が太陽電池用材 |
ビスマス、 |
ヒューズ、火災報知器、医薬品製造、触媒、原子炉冷却材 |
モリブデン、 |
合金鋼、ステンレス鋼、高張力鋼、合金工 具鋼、高速度鋼の製造に使用、航空機。自動車部品、建設用途 |
インジウム |
液晶透明電極、ボンディング材、化合物半導体、蛍光体、低融 点合金、電池材料など |
参考(規制外)、 |
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ネオジム |
ネオジウム磁石・・・電動車、FA・ロボット、電子・情報部品、省エネ家電など幅広い分野で必要/規制物質が添加されたネオジウム磁石の輸出は規制対象 |
中国は現在、輸出承認待ちの案件が山積、これまでに輸出認可申請数の25%がこれまでに輸出認可されたという。特に米国輸出案件の審査は厳しくなっている。
米バイデン・トランプ政権が、台湾・韓国の半導体メーカーに対して、半強制して米国に半導体工場をいっぱい作らせても製造用のレアアースが入手できなければ、半導体を製造することはできない。米国ではすでに半導体の巨大工場が次々に完成してきている。材料供給のサプライチェーンの工場も同時に工場進出している。
トランプがグリーランドを米国に売れと領有しているデンマークに恫喝を入たり、ウクライナに対して、これまでの兵器供給代の対価として同国内の鉱物資源開発権の提供を迫り、実現させているのはレアアース問題が潜んでいる。特にウクライナでは実際の兵器供給代金の倍額を算定してレアアースから原油などの採掘権まで広範な開発権を力で取り上げている。
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レアアース生産と埋蔵 |
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レアアースの生産 |
レアアースの埋蔵量 |
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2023年/USGS版 |
2023年/USGS版 |
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中国 |
67.8% |
中国 |
48.9% |
ミャンマー |
11.4% |
ブラジル |
23.3% |
米国 |
11.1% |
インド |
7.7% |
オーストラリア |
4.3% |
オーストラリア |
6.3% |
ナイジェリア |
1.9% |
ロシア |
4.2% |
その他 |
3.5% |
ベトナム |
3.9% |
現在、ミャンマーの生産はほとんど停止 |
米国 |
2.1% |
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グリーンランド |
1.7% |
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その他 |
1.9% |
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