アイコン 塩野義製薬、鳥居薬品を"傘下"へ─揺れる製薬業界、再編の新たな一手とは


2025年6月19日、塩野義製薬(4507)は、鳥居薬品(4551)に対して行っていた公開買付け(TOB)の結果を公表した。買付期間は5月8日から6月18日までの30営業日。最終的に、下限の約3,342千株を大きく上回る約1,098万株の応募があり、買付価格6,350円で全株式を取得。これにより塩野義は、議決権比率39.04%を握る持分法適用関連会社化を実現した。

 

JTグループの戦略変更か?製薬子会社の資本構造に変化

鳥居薬品は、長年にわたり日本たばこ産業(JT)の傘下にある製薬企業であり、現在もJTが約55%の株式を保有する筆頭株主である。塩野義による今回のTOBは、親会社であるJTの了承を得た上での戦略的な資本移動と見るべきだ。

JTはたばこ事業の成長鈍化に対して、医薬品や食品など非たばこ分野への多角化を模索してきたが、医薬事業に対する投資の優先順位が相対的に下がっているとの指摘もある。今回のTOBは、鳥居薬品の持株を段階的に外部へ開放し、資本関係を緩やかに再編していく一環である可能性も否定できない。

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塩野義の“静かなる拡張”戦略──ポスト・コロナ後の次の布石

一方で塩野義製薬は、コロナ禍で開発した治療薬やワクチンによって国内外で名を上げ、収益構造を大きく改善させてきた。その中で同社が次に打った手が、他社の経営資源・販売網の獲得による成長路線の補強である。

鳥居薬品は泌尿器系や皮膚科領域に強みを持ち、安定した売上基盤と成長性を兼ね備えた中堅企業。直近の2024年12月期の売上は約604億円、当期純利益は約50億円と、堅実な収益を維持している。加えて、1株当たり配当金も近年は100円超を継続しており、株主還元にも積極的な企業だ。

塩野義は、こうした収益性とブランド価値を評価し、「フルオーナー」ではなく「重要なパートナー」としての位置づけから、持分法適用という手法を選んだとみられる。

 

将来的な完全子会社化と上場廃止の可能性も

今回の買付報告書の末尾では、「鳥居薬品の株主を公開買付関係者のみとするための一連の手続を予定している」との一文が添えられている。これはつまり、将来的に株式の非公開化──すなわち上場廃止を視野に入れているということだ。

現在の株主構成ではJTが依然として筆頭株主だが、今後、さらなる株式取得やJTによる株式譲渡があれば、塩野義による完全子会社化が一気に進む可能性がある。仮にそれが実行されれば、鳥居薬品の経営の独立性やブランド継承がどう担保されるのかは、重要な論点となるだろう。

 

製薬業界に広がる“静かな再編”の波

今回の件は、国内製薬業界における新たな再編の火種でもある。大手による中堅企業への出資、または統合・吸収の動きは、今後さらに活発化する可能性がある。研究開発費の高騰、薬価改定の影響、国際競争の激化という三重苦の中で、生き残るにはスケールメリットやリスク分散が不可欠だからだ。

国内市場が飽和する中、アライアンスを組む形での資本提携や持分法適用といった柔軟な“中間段階のM\&A”は、今後のトレンドとなるかもしれない。

 

総括──“選ばれる側”から“選ぶ側”へ

塩野義製薬は、かつては欧米大手と提携を結び製品導入で成長してきた。しかし今回のTOBによって、「自ら買収する側」へと明確に舵を切った格好だ。

コロナ後、製薬業界は次なる軸を探している。今回の買付けが、塩野義にとってどれほどのシナジーをもたらすかは、今後の協業の具体的中身による。だが一つ確かなのは、医薬品市場において“待ちの姿勢”だけでは生き残れない時代が来ているということだ。



 

 

[ 2025年6月20日 ]
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