アイコン 山路敬介氏寄稿 朝鮮半島出身労働者問題」、国際司法の場での日本側敗訴はないその2

 

 

昨日に続いて(農と島のありんくりん)の山路敬介氏の正鵠を射た寄稿 朝鮮半島出身労働者問題」、国際司法の場での日本側敗訴はないその2を紹介させて頂きます。

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農と島のありんくりん
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移り変わる自然、移り変わる世情の中で、真実らしきものを探求する

2018年12月19日 (水)

山路敬介氏寄稿 朝鮮半島出身労働者問題」、国際司法の場での日本側敗訴はないその2

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山路氏寄稿2回目です。韓国最高裁の「徴用工」判決文を読む労作に脱帽しました。

ひとつ興味深い動きが出ました。

「第二次大戦中に強制労働をさせられたと主張する韓国人らおよそ1,100人が、日本企業ではなく、韓国政府を相手取り、総額110億円の補償を求める訴訟を起こすことがわかった。

日本企業で強制労働させられたと主張する韓国人と遺族あわせておよそ1,100人は、1965年の日韓請求権協定で、3億ドルの無償資金援助を日本から受け取った韓国政府が補償するべきだと主張し、1人あたりおよそ1,000万円、総額110億円の支払いを韓国政府に求めるとしている。

韓国では、日本企業に賠償支払いを命じる判決が相次ぎ、日韓関係の悪化が深刻化しているが、韓国政府に補償を求める今回の訴訟は、日本政府の主張と合致する部分があり、裁判の行方が注目される」(FNN12月18日)
https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20181218-00408028-fnn-int

                                   ~~~~~~
承前

■大法院(最高裁)判決を読む 

以下、私的整理なので雑駁です。また、判決では「請求権協定の範囲外」である事を言うために同じことが重複したりして本当にくどくどしく理由を書いています。

けれどそこが焦点と思うので、読みづらいと思いますが、あえてまとめず要約しています。

とにかく、しつこく「植民地時代」の日本側の認識を問題にし、判決そのものが「暗黒の日帝36年」の妄想を論拠の基盤に置いているのですが、その趣旨には合っていると言えましょう。 

〈判決の要旨と要点〉

軍国主義のもとなされた日本の朝鮮半島支配はそもそも違法で無効あるところ、日本の「満州事変」以来、「日中戦争」、「太平洋戦争」と至る中で軍事物資生産の労働力が不足すると、国家総動員法を発布し「朝鮮人内地移入要綱」を定め、官斡旋などで朝鮮人労働者を募集した。 

やがて国民徴用令にまで至るが、(原告4名が募集によるとしても)韓半島と韓国民らが日本の不法で暴力的な支配を受けていた当時、日本政府と旧日本製鉄の「組織的欺罔」による動員であったと見るのが妥当である。

当時、旧日本製鉄は核心的な基幹軍需事業体の地位にあり鉄鋼統制会に主導的に参加するなどし、日本政府の韓半島に対する不法な植民支配および侵略戦争の遂行と直結した反人道的な不法行為を行ったと言わねばならず、原告らが受けたその精神的苦痛も経験則上明白である。

その継承会社である新日鉄住金がその責任を負う事もまた当然である。 

日韓請求権協定について

①この事件における原告らの損害賠償請求権は、「請求権協定」に含まれておらず「適用外」である。 

理由は「不法な侵略戦争目的」であった事にあり、かつ原告は未払い賃金や補償金を請求しているのではなく、過去二回行われた韓国政府による措置とは別個の「強制動員による慰謝料」であるからである。

②「請求権協定」の取り決めには日本の不法な植民地支配に対する賠償は含まれてはおらず、単に両国間の財政的・民事的債権・債務関係を政治的合意によって解決したにすぎないものである。

(韓国側が提示した八項目の中にも、日本植民支配の不法性を前提とした内容はない事からも明らか)

③「完全かつ最終的」という文言からは上記請求権も「請求権協定」の適用対象になりうる、と解釈される余地があるにはある。 

しかし、上記②のように明文化されたものはなく、2005年の民官共同委員会においても「請求権協定は日本の植民地支配の賠償を請求するためのものではない」としている。

(日本国政府は今日においてもなお、植民地支配の不法性を認めていない)

④請求権協定締結当時、日本政府自身も「経済協力の性格」としており、第一条(八億ドル記載の経済協力を明示)と、第二条(「請求権問題の完全かつ最終的な解決」記載)の権利関係の法的な対価関係があるとは見られない。

合意議事録で言及された8項目も同様で、当時の日本政府の立場も「一条と二条の間に法律的な相互関係が存在しない」という立場であった。 

⑤韓国政府がおこなった1975年の請求権保障法などによる保障は「道義的次元」から見るとき不十分であり、その後に制定された2007年の犠牲者支援法および2010年の犠牲者支援法の両方が「人道的次元」と明示した。 

(この意味がちょっと不明ですが、「日本が支払った金員、あるいは韓国政府が行った措置では不十分であった」とでも言いたいのでしょう) 

⑥請求権協定の交渉過程で、日本政府は植民地支配の不法性と強制動員被害の法的賠償を徹底的に否認し、それゆえ韓日両国は日帝の韓半島支配の性格に関して合意することが出来なかった。

このような状況で「強制動員慰謝料請求権」が請求権協定の適用対象に含まれていた、と見るのは難しい。

⑦請求権協定の一方の当事者である日本政府が不法行為の存在を否認する状況で、被害者側である大韓民国政府が「強制動員慰謝料請求権」までも含む請求権協定を締結したとは考えられない。 

⑧被告(新日鉄側)の主張により、第五次韓日会談で大韓民国側が「他国民を強制的に動員する事によって負わせた被徴用者の精神的、肉体的な苦痛に対する補償」に言及している事実や、第六次で「強制動員被害者」に対する補償額を細かく算定をしていた事実を知る事も出来る。

しかし、上記の主張内容は大韓民国側の公式見解ではなく、具体的な交渉過程で担当者が話した事に過ぎない。

「被徴用者の精神的、肉体的苦痛」に言及したのは、交渉で有利な地位を占めようという目的から始まったものと考えられ、実際に5次会談は妥結される事もなかった。

また、仮に韓国側が「被徴用者の精神的、肉体的苦痛」を請求に見込んだとしても、その算定請求額は12億2000万ドルであり、妥結したのは3億ドルのみである。

このような状況で強制動員慰謝料請求権も請求権協定の適用対象に含まれていたものとは、到底言えない。

⑨1965年に韓日間に国交が正常化したが、請求権協定関連文書が非公開(韓国では2005年に公開された)の状況にあって、それまで両国民に対する個人請求権までも包括的に解決されたものと受け入れられて来た。

そうした障害事由から、これまで原告らの権利が行使できなかった客観的事情があるのであり、消滅時効の完成をもって被告(新日鉄住金側)が主張するのであれば、著しく不当となるばかりでなく、信義誠実の原則に反する権利の濫用として許容できない。 

⑩サンフランシスコ条約と請求権協定は、「賠償請求権」の観点からみると別個のものである。

請求権協定は「財産上の債権・債務関係」に言及しているだけであり、国家間の条約によって国民個人個人の権利を消滅させる場合、これを認めるには条約文で明文的に示すことが必要。

※続いて出た三菱訴訟の判決は、この新日鉄判決を踏襲している内容なので省きます。(特に付け加えられた点は、時効の起算日を示したのみのようです)

いかがでしょうか。 私は素人ながら色々な判例を読む事が趣味なのですが、このような馬鹿げた判例は戦前・戦後を通しても日本国内ではついぞお目にかかる事は出来ません。

韓国内に従来からある併合時代の認識の相違や歴史観といった差異、反日イデオロギーそのものなど別にしても、そこから生じた無理やりな解釈がこれほど常識とズレまくった例は稀有です。

都合の良い部分は採用し、都合の悪い事は無理やりこじつけて否定し去る。 >このような有様は、もはや「「日本人差別」が根底になっているから」としか言いようがありません。 

■条約の読み方 

条約法に関するウィーン条約第31条(解釈の一般規定) ~請求権協定21条で「両締約国及びその間の請求権に関する問題が~完全かつ最終的に確認する」となっているのだから、そのように素直に受け取っている多くの日本人が今回の判決に憤慨するのはしごく当然です。 ※編者注 欄外に当該のウィーン条約31条を載せておきました。

条文に限らず、法的な文書は時代をこえて誰にでも理解可能なものでなくてはなりませんし、普通の読み方をして、なるべく余計な解釈を加える必要のない文言で構成されている必要があります。

(その点、我が国の憲法のように、解釈を重ねなければ当然に所持しているハズの自衛権すら導き出せないような条文は最悪です) 

その必要性は、一般的には権力者が恣意的解釈をして意味を曲げる事を防ぐ目的から来ていると思われますが、国家間の条約の場合には、一方の国家体制の変質などを要因として多様な解釈が生起し介在する事による紛争を未然にふせぐ目的が主たるものです。

そうした意味から、条約法に関するウィーン条約31条では「条約は、文脈によりかつその趣旨及び目的に照らして与えられる用語の通常の意味に従い、誠実に解釈するものとする」としています。 

続く32条では、それでも文言的に意味が不明分の場合の規定が設けられていますが、上記請求権協定21条の意味はきわめて明瞭であり、「完全かつ最終的に解決した」以外に読める余地はありません。 

韓国大法院の判決では「併合時代自体が不法であったから」とか、「単に財政的・民事的債権・債務関係を政治的合意によって解決したにすぎない」、「被害者側である韓国政府が強制動員慰謝料請求権までも含む請求権協定を締結したとは考えられない」、またその「金員が不足」であった旨も指摘し、あげく当時の朝鮮人を「他国民」と規定するなど、強く「請求権協定には今回の請求権が含まれていない」旨主張し、まるで無頼漢のような言い分を展開します。

ですが、そのような言い分の正否は別としても、法的にはそれをもってすらも「完全かつ最終的に解決した」正味を覆す事にはなりません。

おかしいのは、このような激越な内容と論理を前提に主張する先は、ふつうは「憲法や国際法に違反している。したがって請求権協定は無効である」との判決が導き出されるはずと思うのです。

しかしそうでない以上、その良否を問わず文言と内容に従って解釈し協定を遵守しなければならないことにしかなりません。

                                                                            (続く)

                                     ~~~~

■編者による当該ウィーン条約抜粋
http://www.houko.com/00/05/S56/016.HTM

■条約法に関するウィーン条約
昭和56・7・20・条約 16号  
発効昭和56・8・1・外務省告示282号

第三部 条約の遵守、適用及び解釈

第一節 条約の遵守

第26条(「合意は守られなければならない」) 効力を有するすべての条約は、当事国を拘束し、当事国は、これらの条約を誠実に履行しなければならない。

第27条(国内法と条約の遵守) 当事国は、条約の不履行を正当化する根拠として自国の国内法を援用することができない。この規則は、第四十六条の規定の適用を妨げるものではない。

(解釈に関する一般的な規則)
第31条 
1 条約は、文脈によりかつその趣旨及び目的に照らして与えられる用語の通常の意味に従い、誠実に解釈するものとする。
2 条約の解釈上、文脈というときは、条約文(前文及び附属書を含む。)のほかに、次のものを含める。
(a) 条約の締結に関連してすべての当事国の間でされた条約の関係合意
(b) 条約の締結に関連して当事国の一又は二以上が作成した文書であつてこれらの当事国以外の当事国が条約の関係文書として認めたもの
3 文脈とともに、次のものを考慮する。
(a) 条約の解釈又は適用につき当事国の間で後にされた合意
(b) 条約の適用につき後に生じた慣行であつて、条約の解釈についての当事国の合意を確立するもの
(c) 当事国の間の関係において適用される国際法の関連規則
4 用語は、当事国がこれに特別の意味を与えることを意図していたと認められる場合には、当該特別の意味を有する。
 

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[ 2018年12月19日 ]

 

 

 

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