アイコン 中国経済を揺さぶる鉄鉱石価格の急騰


香港発のCNNの報道によると、当局は、鉄鉱石価格の急上昇は、鉄鋼需給問題に深刻な影響を与え、中国の経済回復に打撃を受けないか戦々恐々としているという。
27日の新華社通信によると、李克強首相は連日、「原材料の買い占めや売り惜しみと価格水増しを取り締まる」という警告メッセージを出している。

オーストラリアは中国を苦境に陥れている主要原材料である鉄鉱石の最大の生産国。中国は鉄鉱石輸入量の60%をオーストラリアに依存している。中国は世界最大の鉄鋼生産国であり、鉄鋼を作るためには当然原材料である鉄鉱石が必要となっている。

<1年ぶりに反転した状況>
世界最大の鉄鉱石生産国と世界最大の鉄鋼生産国。これまでオーストラリアと中国の貿易関係が密接になるほかなかった理由がここにある。

このように密接な貿易関係が政治的立場の違いで崩れ始めれば、どちらがより大きな損害を受けることになる。
鉄鉱石や石炭などオーストラリア産原材料と消費財の最大の輸入国である中国が関税を課し、オーストラリアはロブスターやワインなど主要輸出品目が大きな打撃を受けている。
オーストラリアが大きな経済的損失を甘受しながらも中国に新型コロナウイルス責任論を提起するなど米国に足並みをそろえ対中牽制の先鋒に立ったことに意外という反応が出てきたりもしている。ところが1年間で状況が変わっている。

新型コロナウイルスが世界を強打した昨年は鉄鉱石の生産が減り、今年は米国など主要国の経済が新コロナ事態から抜け出し鉄鋼需要も急増している。

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特にオーストラリアは他の追従を許さない独歩的な鉄鉱石生産国。オーストラリアに続き2番目に多くの鉄鉱石を生産したブラジルでは、2大産地の一つが、2015年に続き、2019年1月にも鉱山ダムのサマルコダム崩壊により生産量が急減している。ここに新コロナが南米全域を襲い鉄鉱石生産量はさらに減っている。

中国が鉄鉱石を3番目に多く輸入していたインドは、新コロナ事態で増産どころではない状態が続いている。
スカイニュースによると8月オーストラリアのピット資源相は「ブラジルなど競合国の鉄鉱石供給が厳しくなりオーストラリアが恩恵を得ている」と述べている。

<中国の焦り>
王毅外相が歴訪に出て、アフリカやミャンマー指導層と密着するのにもこうした背景がある。まずはアフリカのギニアでコンソーシアムを構成し鉱山開発にも乗り出しているが、当面はオーストラリア産に代わる水準の生産地は見つけられない状態。

<鉄鉱石価格高止まり、10年来の高値>
鉄鉱石価格は最近「言い値が買い値」と言われるほど高止まりを続けている。9月25日の報道によると中国・青島港輸入量基準(CFR)鉄鉱石現物価格は1トン当たり192.8ドルを記録。これは1年前の昨年5月26日の95.2ドルと比べ100%ほど上昇した価格。最高額を記録した9月12日には1トン当たり237.5ドルで前年比160%近い上昇幅を記録している。
この1週間に中国政府の価格防御で最高額より20%ほど下落したが、依然として10年来の歴史的高値。
オーストラリアのABC放送によると鉄鉱石価格が最も高かった時期である10年前の鉱山ブーム当時も最高額は1トン当たり190ドルほどだったという。


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世界の鉄鉱石産出量ランキング

世界の粗鋼生産量ランキング

 

2019年 万トン

 

2020年 万トン

1

オーストラリア

56,896

1

中国

105,299

2

ブラジル

25,800

2

インド

9,957

3

中国

21,900

3

日本

8,319

4

インド

14,800

4

ロシア

7,340

5

ロシア

6,428

5

米国

7,269

6

南アフリカ

4,120

6

韓国

6,712

7

ウクライナ

3,950

7

トルコ

3,576

8

カナダ

3,520

8

ドイツ

3,565

9

米国

2,980

9

ブラジル

3,097

10

スウェーデン

2,210

10

イラン

2,902

11

イラン

2,170

11

ウクライナ

2,062

12

ペールー

1,012

12

台湾

2,056

 

鉄鉱石輸出国

鉄鉱石輸入国

 

2018年/万トン

 

2018年/万トン

1

オーストラリア

82,166

1

中国

108,207

2

ブラジル

30,486

2

日本

12,385

3

南アフリカ

5,376

3

韓国

7,335

4

カナダ

3,325

4

ドイツ

4,112

5

インド

1,802

5

台湾

2,419

6

チリ

1,282

6

フランス

1,601

7

モーリタニア

1,044

7

イタリア

772

8

スウェーデン

743

8

英国

890

9

ベネズエラ

287

9

米国

381

 

合計

138,102

 

合計

138,102

・主要輸出国と主要輸入国だけで構成。


李克強首相が連日投機勢力に向け警告を出している。
中国では「中国の富がオーストラリアに移転している」という懸念の声が出ている。それでも鉄鉱石にだけは手出しできない。昨年から石炭輸入禁止、ワインや農産物に対しての高関税率適用などオーストラリアを脅しながらも一度も鉄鉱石には手をつけていない。

<中国が仕掛けた貿易戦争、オーストラリアの優位は当分続く見通し>
経済大国である米中で原材料の争奪戦も激しくなっている。
バイデン米大統領は2兆ドル規模のインフラ投資計画を明らかにし、一方、中国も成長率を上げるため5000億ドル規模のインフラ投資計画を立てている。

世界的にも新コロナ後の景気回復にともなう需要が急増し鉄鉱石などの原材料はすでに「スーパーサイクル」に入ったとしている(JPモルガン、ゴールドマンサックス)。

中国では2060年までに炭素排出減少目標を達成するため鉄鋼生産にブレーキをかける状態。
香港紙サウス・チャイナ・モーニング・ポストによると、昨年中国はオーストラリアの鉄鉱石会社に「わざと供給を抑えているのではないか」と抗議もしたという。
9月5日には中国政府が「オーストラリアとの戦略的対話を無期限中断する」と宣言したが、中国の経済報復カードは使い果たしたためと見られている。

<当分オーストラリアの優位続く>
結局、中国がオーストラリアに最も大きな打撃を与えることができるカードは「鉄鉱石輸入禁止措置」だけだが、これは使うことのできないカード。使ったとしてもブラジルからの輸入は限られ、価格がさらに高騰することにもなる。
中国が輸入を中断すればオーストラリアが短期的に打撃を受けるだろうが、世界最大の粗鋼・鉄鋼生産国であり国内需要も旺盛、その需要さえまかなうことができなくなる。

中国は鉄鉱石の輸入先を多角化するため努力し、インドからの輸入を拡大させてきていたが、インドは新コロナで減産し増産体制にはない。アフリカの国で鉄鉱石の埋蔵量のある国へも手を打っているが、採れたとしても見合うだけの大量生産ともなると時間がかかる。

<オーストラリアとの関係悪化の根も深い>
オーストラリアが労働党政権時代に親中政策を採り、中国はスパイを送り込み、豪州の国会議員らを買収し、さらに親中政策を取らせていた。しかし、2013年6月から自由党時代に入り、そうした問題が露見、中国から資金の提供を受けていた国会議員が辞職する騒ぎとなっていた。中国の不動産買占めも法を制定して規制している。北西の港湾都市ダーウィン市には米海兵隊が駐留する基地があるが、労働党政権時代に中国は港湾開発等インフラ投資と引き換えにダーウィン市から港湾の一部を99年間借り受けている。そうした労働党時代の地方都市の契約を、国で見直す動きも現在の自由党政権が行っている。

そうした中で、豪首相が新コロナ中国起源説を唱え続けることから、習近平国家主席も怒り狂い、豪からの石炭輸入を禁止した。
しかし、そのとたん、昨年末には石炭不足が生じ、一部の省で大規模停電や電力使用の抑制策がとられていた。
しかし、今回は、豪州石炭の輸入禁止による問題だけではなく、政府の環境政策もあり、また石炭価格の高騰に電力会社が経営不振で、さらに逆ザヤ発電となり、また購入資金の問題もあり購入を控えていることにも起因している。
すでに電力料金の見直しを認めた省もあるが、国内の発電の7割を占める火力発電、石油やLNGの発電が少ない省は石炭火力発電に依存しており、そうした省の工業団地等が影響を受けている。
粗鋼生産も良質の石炭からコークスを製造し、コークスにより溶鉱炉で鉄鉱石を溶かし粗鋼を生産している。また、H型鋼や厚板などを生産する電炉にしても、石炭火力に依存している企業も多い。
以上、

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スクロール→

世界と中国の粗鋼生産量推移

百万トン/日本鉄鋼連盟版

 

中国

シェア

世界

2007

489,712

36.3%

1,348,108

2008

512,339

38.1%

1,343,429

2009

577,070

46.6%

1,238,755

2010

638,743

44.6%

1,433,433

2011

701,968

45.6%

1,538,003

2012

731,040

46.9%

1,560,131

2013

815,410

49.4%

1,650,354

2014

822,306

48.7%

1,689,450

2015

803,825

49.6%

1,620,001

2016

807,809

49.6%

1,629,096

2017

870,855

50.2%

1,734,921

2018

928,260

50.8%

1,825,565

2019

1,001,306

53.3%

1,880,137

2020

1,052,999

56.5%

1,863,980

 

[ 2021年9月30日 ]

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