アイコン メモリ半導体価格は下落へ PC減、製造現場の混乱


台湾の半導体市場調査会社のトレンドフォースは10月のレポートで、汎用性のあるメモリ半導体のDRAM価格が、来年は今年に比べ▲15~20%下落すると予想している。
今年は年初から上昇してきたDRAM価格が10~12月に▲3~8%下落し、少なくとも来年上半期までは下落傾向が続くと分析している。

下落要因について、メーカーのDRAM生産量が急速に増える一方、DRAM需要のスマートフォン、タブレット、ノートパソコン、サーバーなどの市場が来年から鈍化し、マイナス成長する可能性が高いことを理由に挙げている。
これまでこうした需要は、新コロナ惨禍により在宅勤務、オンライン授業などにより好調だったが、ワクチンの接種が進み、来年のノートパソコン出荷台数は前年比▲7%減の2億2200万台と予想、スマートフォン用は来年も15%の増加が見込まれるものの、これまで毎年20%伸びてきたことに比べ増加率が鈍化すると見通している。

DRAM市場は大手3社のサムスン電子、SKハイニックス、米マイクロンのシェアが90%の寡占状態、この3社の工場での生産が来年17.8%増加する一方、需要は16.3%増にとどまると見通している。
サムスン電子は平沢P3ラインが増設されDRAM生産が19.6%増加、SKハイニックスも17.7%増、米マイクロンも16.3%生産量が増加すると予想している。

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総じて需要も増加するものの、供給量がそれを上回り単価は下落、メーカーは販売量が増加するため、売上高への影響はないと見ている。

ただ、目先では、メモリ半導体やシステム半導体を組み込みパッケージ化するマレーシアなどの工場が新コロナ感染急増でロックダウン、著しく生産量を減らし、自動車メーカーだけではなく、半導体を利用するあらゆる電子製品メーカーにも影響してきている。

10月1日にはロックダウンは解除されたが、パッケージ不足の回復にはかなりの時間を要する。

電子製品メーカーでは、半導体のパッケージも含め、全部品・全部材が揃わなければ製品化できないが、さらに10月に入り中国の電力不足も深刻化、サプライチェーン問題も急浮上してきている。
中国の電力不足は発電量の60%賄う石炭火力発電所の石炭不足によるもので、政府の豪州炭輸入禁止措置や環境政策による供給量の抑制策にも起因している。
中国は世界の工場、世界経済が新コロナ惨禍から急回復してきており、需要が急増する中、そうした産業団地に電力不足が直撃、あわてた政府が9月から増産を指示しているが、10月に入り最大の産炭地である山西省が豪雨に見舞われ、鉱山会社の多くが採炭を一時停止、河川、架橋の被害により物流網も混乱して、それは10月10日前後まで続いていた。
こうした影響が半導体メーカーにどう現れてくるかも考慮せざるを得ない状況に至っている。

すでにスマホの生産量にも影響が出ており、アップルは9月、今年末までの生産予定数量を1割減少させ9千万台に設定しなおしている。
1年サイクルとなっているスマホでもあり、来年第2四半期からは来年販売用の新スマホの生産に切り替わり、スマホ分野では販売機会の喪失=半導体需要の喪失だけで終わる可能性もある。

前回の半導体暴落の折には、サムスン電子はメモリ在庫急増により新規完成工場での生産を急遽、メモリからシステム半導体に切り替え、ファンドリー事業を拡大して工場稼動率の低下を食い止めていた。

台湾のTSMCなどファンドリー専業メーカーの受注価格は高止まりしているが、工場増設を重ねる韓国の半導体2社は、ファンドリー事業の拡大を視野に入れおり、受注価格を戦略的に動かすことから、今後、システム半導体のファンドリーの受注価格は下落する可能性も高い。韓国勢2社は工場を時々に応じて儲かる半導体に生産シフトしながら、両社の半導体の新工場建設計画はとどまるところを知らない。

半導体は、産業の米から、産業の命・生命線に変わって久しいが、常に需給バランスで価格は決定する。
最近は半導体や有機EL、リチウム充電池に使用される材料価格も急騰している。それもこれも中国の電力不足・石炭不足と世界経済の急回復によるもの。
こうしたメーカーにあっては販売数量より利益幅が懸念されている。


 

[ 2021年10月19日 ]

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