アイコン 中国の電力不足 外資工場のサプライチェーン直撃 各産業への影響拡大


中国の電力危機による打撃がトヨタ自動車の現地生産からオーストラリアの牧羊、段ボール製造に至るまで世界中に広がりつつある。

世界最大の輸出国である中国の極端な電力不足は、自国経済の成長率を損ねるだけでなく、サプライチェーンへの影響波及によって新型コロナウイルス惨禍からの世界経済の回復を妨げる恐れもある。世界では、すでに燃料価格や資源価格・食料まで高騰している。
  
電力不足は、電力や電炉で生産するアルミ、建設資材のH型鋼、造船の厚板鋼板なども影響してくる。
石炭不足は、電力不足に陥らせ、粗鋼生産、セメント生産、レアメタル生産など多くの製品に影響を与える。

今回の電力不足は最悪のタイミングでもある。陸海の運輸業界の供給ラインは混み合い、10月末から始まる年末商戦向けの衣料や玩具の納入遅れを既に生じている。

国ではちょうど農産物の収穫期を迎えることから、燃料不足・電力不足で食料価格の急騰を懸念されている。

オックスフォード・エコノミクスのアジア担当シニアエコノミスト、ルイス・クイジス氏は「電力不足と減産が続けば、世界の供給サイド問題を引き起こす原因がまた一つ増えることになる。輸出品の生産に影響を及ぼし始めればなおさらだ」と話している。

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<成長率の鈍化>
エコノミストらは既に中国経済の成長鈍化に警鐘を鳴らしている。
シティグループの脆弱(ぜいじゃく)性指数は、製造業と商品の輸出業者が中国経済減速へのリスクに特にさらされていることを示唆している。
台湾や韓国など近隣諸国・地域の感応度は高く、豪州やチリなど金属輸出国も同様。ドイツなど主要貿易相手国もリスクに晒されてきている。
  
消費者にとっては、メーカーがコスト上昇分を吸収できるのか、あるいは価格に転嫁するのかが焦点。
パンセオン・マクロエコノミクスの中国担当チーフエコノミスト、クレイグ・ボサム氏は「中国だけでなく世界にとっても、これは製造業に対する新たなスタグフレーションショック(不景気の中での物価上昇/不景気スパイラルに陥る危険性)のように見受けられる」と指摘している。
「物価上昇が非常に幅広いものとなっている。中国が世界のサプライチェーンに深く関与している結果だ」と語っている。

中国政府は、電力供給の確保に向け、事態の収拾に乗り出している。こうした取り組みがどれだけ早期に実を結ぶかが、世界経済への影響を左右することになる。冬は各燃料の大量消費時期となる。

中国では国慶節(建国記念日)連休で多くの工場が生産を減らしていた。エコノミストは連休明けの再稼働によって電力不足が再び表面化するか注視している。
何故か、連休明けの株価は急騰している。

<食品業界>
今回のエネルギー危機で中国はより困難な収穫期を迎えようとしており、食品のサプライチェーンもリスクにさらされている。
世界の食料価格は既に上昇、10年ぶりの高水準にある。中国がトウモロコシから大豆、ピーナツから綿花に至るまで収穫に手間取れば、状況はさらに悪化するとの懸念が広がっている。

<ハイテク業界>
中国は「iPhone(アイフォーン)」やゲーム機など世界最大の生産拠点で、自動車や家電用半導体パッケージングの主要センターでもあることから、テクノロジー業界も大きな打撃を受ける恐れがある。
既に現地の規制を順守するため工場の稼働を中断せざるを得なくなった企業もある。米アップルの主要パートナー、和碩聯合科技(ペガトロン)は先月、省エネ対策を始めたと発表。半導体パッケージ世界最大手の日月光投資控股も数日間にわたり生産を停止した。
  
国慶節連休に伴う休業で、テクノロジーセクターへの全体的な影響は今のところ限定的。電力不足が深刻化すれば、極めて重要な年末商戦を控えた生産に打撃となる可能性がある。新型コロナウイルス感染拡大に伴って世界的な半導体不足に拍車が掛かっており、デル・テクノロジーズやソニーグループなど業界大手にとって新たな供給ショックを受け入れる余裕はほとんどない。
 クリーンルームが必須条件の半導体などの製造業は、稼動停止はできない。操業を停止してもクリーンルームの稼動は最低必要となる。

<自動車産業>
半導体市場がさらに悪化すれば、部品不足で生産に支障を来している自動車メーカーにとっても頭痛の種が増えることになる。自動車産業は現在のような局面で保護セクターリストの上位に入るため、これまでのところ電力危機による影響をおおむね免れている。
だが、中国で年間100万台超を生産するトヨタは、業務の一部で電力不足による影響を受けていると明らかにしている。
パッケージメーカーでは、自動車用を生産するマレーシアの大手企業も新コロナ感染拡大、ロックダウンから生産縮小、日本メーカーも含め自動車メーカーに多大なる影響を及ぼしている。台湾の自動車用半導体の増産で半導体不足は解消へ向かっていたが、そのシステム半導体を組み込むパッケージメーカーの問題から、自動車メーカーの影響はさらに深刻になっている。

<段ボール業界>
段ボール箱や包装材はコロナ禍の需要急増で既に生産が追い付いていなかった。ラボバンクによると、中国の一時的な操業停止で生産への打撃はより大きくなり、9月と10月向けの供給は10~15%減少する可能性があるという。
以上、ブルームバーグ等参照

中国は豪州制裁により陸揚げ待ちだった豪州炭も荷揚げ禁止にしていたが、ここにきて長期間湾外にいた豪州炭船積みの5隻の石炭計39万トンの陸揚げを認可した。

中国政府は、石炭輸入を豪州から切り替えできず、国内の需給バラスを損なわせている。インドネシア、ロシア、カザフスタンなどからの代賛輸入を計画していたようだが、インドネシアでは感染拡大、雨季という時期に重なり、生産量増えず、カザフスタンやロシアからは鉄道便を利用する算段だったようだが、ほとんど機能せず、これらの国からの輸入はほとんど増加していない。

ダボハゼのOPECやロシアは、増産体制に入らず、中国が石炭に代わる燃料として石油やLNGを大量調達すると見て市場価格を意図して押し上げさせている。

しっかりものの中国は、豪州からの鉄鉱石の輸入に関しては輸入禁止にしていない。
鉄鉱石は大量生産する産地が限られ、ブラジルには大量採掘場が2ヶ所あるが、1ヶ所が採掘場と関係する鉱山ダムが決壊し、修復されるまで生産されておらず、豪州からの輸入を禁止すれば、そのニーズ11億トン以上の粗鋼生産に即影響することになる。
そうしたことを背景に、欧米の経済回復も加わり鉄鉱石価格が高騰、中国政府が価格上昇に豪州の輸入先を叱り飛ばしたとされるが、買い手数多で、中国は高値買いを余儀なくされている。

鉄鉱石の高騰は、鉄鋼製品に影響してくる。
しかも、輸入禁止の豪州炭は鉄鉱石の溶融炉の必需品・コークスを製造する高品質の石炭、輸入停止措置でそうした石炭価格の上昇により、製造コストも上昇し、鉄鋼製品の価格上昇は避けられない状況となっている。

中国内では、外資が大量に進出している工場地帯は主にLNGや石油火力発電所により電力が供給され、生産に大きな支障にはなっていないが、中国各地にあるサプライチェーンの工場団地では電力不足に陥り、3操業4休などにより対応して生産量が大幅減少、外資工場へは部品部材が届かず、結果進出企業の操業にも影響している。

全国170ヶ所あまりの石炭火力発電所、何れも石炭不足に直面し、電力不足は全国へ広がっている。
中国は国連制裁下の北朝鮮から石炭を大量購入しない限り、国内の石炭の需給バランスは崩れたまま、暖房にも利用する需要期の冬を迎える可能性も大きくなってきている。
大量購入できたとしても、中国に荷揚げされ、全国各地の発電所に供給されるまでには相当の時間を要する。

どこの国も権力が集中し過ぎると提灯持ち・カバン持ちばかりが増加し、ろくなことはない証だろうか。
権力集中=独裁でもある。同じことは民主主義であるはずの先進国でも何度でも繰り返されている。そのために任期制というものがあるがどっかの国のようにない国もある。
驕れる者は久しからず。


 

[ 2021年10月 9日 ]

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