アイコン 第3四半期の韓国のサムスン・LG・SKの決算状況


<サムスン電子、第3四半期連結決算>
サムスン電子が27日発表した2022年7~9月期の連結決算によると、売上高は前年同期比3.8%増の76兆7,817億ウォンで同期としては過去最多だった。ただ、本業の儲けを示す営業利益は▲31.4%減の10兆8,520億ウォン(約1兆1,200億円)と減少した。純利益は▲23.6%減の9兆3,892億ウォンだった。
営業利益は主力の半導体メモリーの市況悪化が影響した。
 半導体メモリーの単価不振に加え、世界がウィズコロナ策に転じ、パソコン・タブレット・サーバー等新コロナ特需が消え、完成品の需要萎縮が響いた。

注、10ウォン=1円換算でおおよその計算ができる。

 

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<部門別業績>
1、デバイスソリューション(DS、半導体)部門は、売上高が23兆200億ウォン、営業利益が5兆1200億ウォンだった。営業利益率は22.2%。(全体の売上高構成率は29.9%)
 昨年は米インテルから3年ぶりに半導体売上高の世界1位の座を奪い返したが、今年7~9月期はファウンドリー(半導体受託生産)世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)にその座を譲ることになった。

 サムスン電子の半導体メモリー事業は、サーバー用製品の供給先である企業の在庫調整の影響が予想以上に大きく、スマホやパソコン向け製品も需要が減退した。システムLSI(大規模集積回路)の業績も低調だった。一方、ファウンドリーは最高の業績を記録した。

2、ディスプレー(SDC)の売上高は、9兆3900億ウォン、営業利益は1兆9800億ウォンだった。スマホメーカーの新製品発売と為替を追い風に中小型製品が大幅に伸びた。(全体の売上高シェアは12.2%)

3、デバイスエクスペリエンス(DX、モバイル・家電)部門は、売上高が47兆2600億ウォン、営業利益が3兆5300億ウォンとなった。
 モバイルエクスペリエンス(MX、スマホ)は折り畳みスマホなどのフラッグシップ端末とウエアラブル端末の販売が好調だった。(全体の売上高構成率は61.5%)
DX部門は、MX、無線事業、VD(Visual Display)、生活家電、医療機器、ネットワークなどで構成。

映像ディスプレー(VD)・家電は、世界経済の減速によるテレビなどの需要伸び悩みとコスト上昇が響き、収益性が悪化した。
欧州では電力不足・電力価格の高騰を受け、TVの消費電力規制を導入する予定で、サムスンとLGが強みとするプレミアム市場の大画面の大消費電力型は規制の対象となる見込みで前途は暗い。
 進行するドル高は、DX事業にはマイナス要因となったものの、部品事業でのプラス影響の方が大きく、全体の営業利益を前期比で1兆ウォン程度押し上げた。

<第3四半期の設備投資>
7~9月期の設備投資額は12兆7000億ウォンだった。
うちDSに11兆5000億ウォンに投じ、1~9月累計の設備投資は約33兆ウォン(DSが29兆1000億ウォン、SDCが2兆1000億ウォンなど)となった。
今年の投資額は約54兆ウォン(DSが47兆7000億ウォン、SDCが3兆ウォンなど)と予想されている。
 10~12月期もIT需要の不振と半導体メモリー市場の弱含みは続くとみられ、苦戦が予想される。サムスン電子は半導体部門で収益性重視のDRAM事業を展開し、ファウンドリーの業績改善にも努める計画だ。
 同社は来年について「マクロ経済の不確実性は続くだろうが、一部の需要回復は可能と期待される」と述べた。

<サムスンSDI、第3四半期連結決算>
サムスンSDIの第3四半期の売上は前年同期比56.1%増の5兆3680億ウォン(約5368億円)、営業利益は51.5%増の5659億ウォン(約565億円)とともに過去最高で絶好調となった。
EV用バッテリー事業を本格化した後、初めて主な事業領域であるバッテリー部門の営業利益率が10%を達成。全体の営業利益率は10.5%だった。
安価な人件費と政府支援を背景に中国CATL(第3四半期の営業利益率9.5%)を上回る成果だった。サムスンSDIは、収益性優位の質的成長戦略が現実化したとしている。サムスンSDIはベンツやスランティスに車両用バッテリーを供給している。

<LG電子、第3四半期連結決算>
LG電子が28日発表した2022年7~9月期の連結決算は、売上高は前年同期比14.1%増の21兆1768億ウォンで、四半期として過去最高を記録した。本業のもうけを示す営業利益は25.1%増の7466億ウォン(約770億円)だった。
売上高は、同車載用電装部品事業の成長が追い風となった。
営業利益は、バッテリー部門のLGエネソルが前年同期に米ゼネラル・モーターズ(GM)の電気自動車(EV)リコール(無償回収・交換)費用として約4800億ウォンを損失計上していたことを踏まえると事実上減少した。
純利益は、▲34.8%減の3,365億ウォンだった。

LGエネルギーソリューション(蓄電池部門)は、第3四半期の売上高は、前年同期比89.9%増の7兆6482億ウォン(約7648億円)と過去最大となり、営業利益は5219億ウォン(約521億円)となり黒字に転じた。
(GMのバッテリーリコールでは総額13億ドルをLG側が負担することになっていた)
引当金や示談金など、一時的要因が反映された昨年第2四半期(7,243億ウォン)を除けば、過去最高の営業利益を上げた。
営業利益率も、2020年期の3.1%、2021年期の4.3%から、今年の第3四半期6.8%まで改善してきている。

<SKハイニックスの第3四半期決算>半導体
半導体大手のSKハイニックスが26日発表した7~9月期の連結決算(速報値)では、売上高は前年同期比▲7.0%減の10兆9829億ウォン、本業のもうけを示す営業利益は▲60.3%減の1兆6556億ウォン(約1720億円)。メモリ半導体の市況悪化が響いた。
純利益は▲66.7%減の1兆1027億ウォンだった。
売上高は過去最高を記録した今年4~6月期(13兆8110億ウォン)から▲20.5%減った。
営業利益も▲60.5%急減し、営業利益率(売上高に対する営業利益の割合)は15%にとどまった。
世界的なインフレの長期化や各国の利上げなどによりマクロ経済環境は厳しさを増している。半導体市場では、新コロナ特需もなくなり、パソコンやスマホ向けのDRAM、NAND型フラッシュメモリーの需要が振るわない。
 SKハイニックスは、半導体メモリーの販売量と価格がそろって低下し売上高が減少したと説明した。
営業利益については、最新プロセス技術の半導体メモリー製品が販売に占める割合が拡大し歩留まりも改善したものの、価格下落幅がコスト削減幅を上回ったとした。
<投資> 
同社は半導体の供給量が、需要量を上回る状態が当分続くとみて、来年の投資額を大幅に減らすことにした。
10兆ウォン台後半と予想される今年に比べ、来年は▲50%以上減少する。
また、相対的に収益性が低い製品を中心に生産量を減らす予定。
データセンターのサーバー向けメモリーに関しては、中長期的に需要が伸び続けると見込み、関連製品に力を入れる。

<韓国の9月のICT品の輸出額は▲2.2%減>
韓国科学技術情報通信部が発表した9月の情報通信技術(ICT)分野の輸出額は前年同期比▲2.2%減の208億6000万ドル(約3兆700億円)だったと発表した。昨年同期は新コロナの流行により電子機器への需要が高止まりしていたが、当期はそうした新コロナ特需が剥離した。
前年同月比でマイナスとなるのは3ヶ月連続。ただ、スマホの新製品発売効果などで輸出額は3ヶ月ぶりに200億ドル台を回復している。

輸出額の増減を品目別にみると、世界景気の減速で
半導体は前年同月比▲4.6%減、
ディスプレーは▲18.6%減、
コンピューター・周辺機器は▲20.2%減となった。
主要4品目のうち、携帯電話だけが21.2%増のプラスとなった。サムスン電子の折り畳み式スマホなどの新製品が8月末に世界で発売されたことが輸出を押し上げたとみられる。(ベトナムやインドでも生産しており、そうした海外自社工場向けへ半導体が輸出された結果の数値)

国・地域別では、米国が3.6%増、日本への18.2%増加して3ヶ月ぶりにプラスに転じた。
一方、経済が低迷する中国へは▲4.7%減、ベトナムへは▲15.1%減、欧州連合(EU)へは▲0.9%減少した。
 9月のICT輸入額は、前年同月比13.7%増の129億3千万ドルだった。韓国通貨ウォンが対ドルで急落した影響で過去最大となった前月の輸入額に比べると5億9000万ドル少ない。
 輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は79億4000万ドルの黒字だった。
黒字額は前月を21億5000万ドル上回った一方、前年同月と比べると▲20億2000万ドル少ない。

中国も東南アジアも韓国も日本も米国の経済に左右される。中国や東南アジアから米国へ大量に輸出され、日本は直接と韓国や中国を通して間接的に、韓国は直接と中国やベトナムなど東南アジア経由で米国へ輸出している。
米国のインフレ退治は、現在中間選挙を前に次の金利をどうするか迷っているようにも見えるが、中間選挙前の11月2日には決定される。
米インフレを助長しているのは、米国ではGDPの70%を占める消費、消費者の購買力の強さにあり、労働人口の増加と賃金の上昇が起因している。
インフレ退治の金利高は、消費者は金利が高くとも借金してでも購入する国民的体質にあり、企業の業績を悪化させ、労働者人口を減らす=超低位の失業率を若干高め、賃金の上昇も自ずとストップさせ、少々減少されたら、インフレは沈静化する。
多くの場合、急激に金利を上昇させても、市場に反映されるにはタイムラグがあり、様子見が必要であるが、あまりにもインフレ率が高くなり、様子見ができる余裕はなく、これまで金利を立て続けに上昇させている。
ということで、11月も金利は上昇するもどれほどのインフレ率になるかは不明。インフレ率そのものも昨年10月からバイデンインフレが顕著になっており、その反動もあり、10月からのインフレ率は低下することになる。ただ、物価指数で見ればインフレ率の低下にかかわらず、高次元であり、消費者物価は高いままとなり、国民の政権への批判は増幅する。 

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<すべては米国しだい>
↓米国のインフレ対策が終了するまで、金利高が時間をかけ製造業や消費市場に浸透し続けることから、米景気は悪化し続けることになる。結果、耐久消費財の自動車も自動車ローン高で売れなくなり、住宅も長期住宅ローンの金利高で売れなくなり、こうした製造業の業績は悪化、企業は総じて金利高で利益が食われてしまい、景気は悪循環のスパイラルに陥る。インフレ退治は景気暴落と紙一重。
半導体需要も企業投資の減退から、新コロナ特需の反動から、すでに年間15億台で頭打ちのスマホ市場の需要も不況から買い替えが減少、不況から、総じて需要は低迷することになる。

インフレが米国を基点として世界が同時に動いたように、世界が同時にインフレ退治を執行し、高い価格の商品はどこの国でも売れなくするしかインフレ退治の方法はない。
それは景気を、企業の景気を悪化させるしか手立てはない。
対抗して地下資源という泡く銭で潤っているOPEC+は、高値で安定させるため、すでに供給量を減らしにかかっている。王様は決して天の神ではなく、天の神は罰の斧を王様たちに振り下ろすことになることだろう。

 


スクロール→

 米国の各種インフレ率

 

インフレ率

消費者

 

全体

食料

コア

家賃

サービス

エネルギ

CPI

21/9

5.4

4.6

4.0

3.16

3.20

24.83

 

21/10

6.2

5.3

4.6

3.48

3.65

29.97

276.58

21/11

6.8

6.1

4.9

3.84

3.77

33.29

277.94

21/12

7.0

6.3

5.5

4.13

4.01

29.30

278.80

22/1

7.5

7.0

6.0

4.36

4.58

26.98

281.14

22/2

7.9

7.9

6.4

4.74

4.80

25.55

283.71

22/3

8.5

8.8

6.5

4.98

5.12

32.05

287.50

22/4

8.3

9.4

6.2

5.14

5.37

30.27

289.10

22/5

8.6

10.1

6.0

5.45

5.74

34.06

292.29

22/6

9.1

10.4

5.9

5.61

6.22

41.62

296.31

22/7

8.5

10.9

5.9

5.70

6.25

32.93

296.27

22/8

8.3

11.4

6.3

6.24

6.81

23.81

296.17

22/9

8.2

11.2

6.6

6.59

7.37

19.80

296.80

 

[ 2022年10月29日 ]

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